最終決戦 始まる
「たった今、及川が松下を殺した!一〇分もあればそっちに着くぞ!準備はいいか?」
「大丈夫よ!スタンバイOK!いつでもいけるわ。」
及川が松下と戦っている最中に綾は迅速にゴール地点へ向かい身を隠した。順調だ。今のところ作戦通りだ。そして、あと一〇分もすれば、このゲームを終わらせることができる。
・・・直貴は唾を飲み込んだ。まもなくだ・・・。長かった、やっと終わらせることができる。
「あと三分程度で奴が来るぞ!」
直貴は集中してパソコンのディスプレイを睨んだまま言った。携帯を握る腕にも力が入る。
「奴があたしの半径五〇メートル以内に入ったら一〇メートルごとにカウントしていって!勝負はあたしと奴の距離一〇メートル地点よ。」
綾の声からも真剣さが伝わってくる。当たり前だ。綾は今から、人を、殺すんだから。または、殺されるんだから。
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永い・・・三分がこんなに永いと思ったことはない。全身からゆっくりと汗が滴り落ちる。及川は全身を雑誌で固め、フルフェイスヘルメットを被っている。狙うは一箇所、ヘルメットの目の部分、プラスチックでできた部分のみ。そのためには奴を正面から狙わなければならない。綾は一〇メートル地点からなら確実に打ち抜けると言った。しかし、どうしようもない不安は直貴の中から拭われることはなかった。ゲームが始まって以来、まだ一度も自分のやったことが思い通りに進んだことがない。それが原因でマイナス思考に陥っているだけだろうか?
不安の原因がわからないまま、その時は来た。
「来たぞ、奴だ現在お前と及川の距離は直線距離で五〇メートル。及川はあたりを警戒しながらまっすぐにゴール地点へ向かっている。
・・・・・四〇、
・・・・・三〇、
・・・・・二〇メートルだ!」
携帯の向こうからは綾の押し殺した呼吸音がうっすらと聞こえるだけ。返事はなかった。
そしてついに一〇メートル地点に達した時、携帯に向かって叫ぼうとした瞬間の出来事、突然目の前のパソコンのディスプレイがブラックアウトした。
ん?どうしたんだ?そう思ったのもつかの間、携帯の向こうが騒がしい。向こうでも何か起きたみたいだ。
「おい!どうした?何があったんだ!」
俺は携帯に向かって叫んだ。そして、携帯からの返事は・・・
「ド※※※!!―――ぁ―――プツッ!!!・・・ ツーーーーーーーーー・・・・」