ただ待っていたわけではない。全ては計画準備されていた。
綾は、隠していた金を持って戻ってくると俺の目の前であっさりと破り捨てた。これで準備は万端、あとは及川が動き出すのを交代で見張る。
・・・ゲーム終了一五分前
「動き出したぜ!ついに」
見張りをしていた直貴は言った。
そろそろいいだろう。一五分あれば全てを終えられる。
及川はパソコンの部屋を出ると速やかに一階まで降り、適当な部屋の窓から出る。そして、松下の立て篭もる建物の脇に辿り着く。
クククククククク・・・・。覚えている、覚えているぞ。お前は真っ直ぐにあのビルの入り口を見張っている。どの位置からどういう姿勢で見張っているか?それどころか貴様のいる建物の内装も、貴様の持っている弾薬の数も全て覚えているぞ。
及川はただ何もせずに部屋で待っていたわけではなかった。パソコンの中にある情報のほぼ全てを暗記していたのだ。
まずはこの位置から狙撃
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
及川は速やかに作戦を開始、
すると、建物の中から銃声が返ってくる。松下の反撃だろう。
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
何発もの銃声と共に弾丸が飛び出してくる。
しかし、及川は既にそこにはいない。建物の逆側に回っていた。
一発目は外したか。俺の銃の腕では外す可能性も十分にある。問題ない、建物の構造は全て記憶している。奴は不意の狙撃を受けた場合、部屋の奥へ身を隠すだろう。外からは絶対見られない場所へ、しかし、それはお見通し、この建物はそれほど大きくない。奴が身を隠す場所はここしかない。及川はカーテンの閉まった窓のすぐそばに来ていた。カーテンのおかげで外からは絶対に見られない。だがそれは、中からも外が見えないと言うことだ。お前の動きはお見通し、しかし、お前はカーテンのせいで俺の動きが見えない。そう、このカーテンはお前を隠しているのではなく、俺を隠しているのだ。次はさっきよりだいぶ近い距離から狙撃できる。及川はカーテンに向ってもう一発
パァ※※※-ガシャンガシャ!―――※※※ン!!!!!
銃声と共にガラスの飛び散る音が響き渡る。
その数秒後、また内側から銃声が!
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
パ※※※※――――――――※※※※ン!!!!!
ククククククク・・・また外したか、運のいい奴だ。しかし・・・恐ろしいだろう。姿の見えぬ狙撃者に襲われること、そして自分の位置がなぜかばれていること。困惑していることだろう?見えない標的に向かって銃を乱発してしまうのも仕方ない。しかし、貴様が今何発銃を撃ったか覚えているか?俺は覚えている。貴様の残弾はあと一発、もうおいそれと発砲できない。
そして、俺はもう建物の中にいる。外に向けて何発打ち込もうとあたりはしない。
及川は銃声の音にまぎれさせドアの音を消し、速やかに建物の中へ入っていた。
覚えている、覚えているぞこの建物。貴様が隠れられる場所はもう一つしかない。キッチンの奥にあるカウンターの裏。貴様はそこにいる。そこで貴様は考えていることだろう?なぜ居場所がわかるのだ?とね。簡単だよ。部屋の構造さえ知っていれば誰でも推測できる。この角度から打てばここへ逃げる。そして次にここから打てば最後にはそこへ逃げるしかなくなる。単純な内装だったこの建物を恨むんだな。
終わりだ。 及川はカウンターの裏へ回って引き金を引こうとした。
・・・馬鹿な?いない!そんなはずは!奴が隠れられる場所など他には無いはず!
及川は振り返って建物内を見渡した。いない!どこにもいない!
パ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ン!!!!!!!
及川の背後からまた一発の銃声、弾丸は及川の背中に真っ直ぐめり込んだ。
馬鹿な?カウンターの裏には誰もいなかったはず・・・振り返るとそこには・・・。