いいかげんにしてくれよ!!!そんなに俺は騙しやすそうに見えるのか?
焦点の定まらない目で空中を見つめたまま・・・直貴はまだそこに座っていた。たぶんそんなに時間は経っていないと思う。
直貴は自分が逃げてきた廊下にふと目を落とす。点々と血痕が続いている。明らかに自分の血、そしてそれは自分が逃げた方向を正確に敵に知らせている。
ま、まずい・・・何をボーっとしていたんだ俺は・・・とにかくここから移動しなければ・・・。
直貴が移動を開始してほんの少しのこと、後頭部に冷たく固い感触を突きつけられた。
銃口・・・?まさか、もう追いつかれたのか!
「動かないで!」
しかし、後ろから聞こえた声は以外にも・・・お、女?
振り向こうとした瞬間、首筋に強烈な一撃、直貴は気を失った。
・・・・・
ピシッ! ピシッ!!!
「早く起きなさい!!!」
両頬をはたかれて目が覚めた。
そこは、さっきまでいたビルと同じ建物の中、何処かの一室、両手両足は椅子に縛られていた。そして、目の前には、やはり、女。長い髪、ストレートヘアーに隠れて表情はよく読み取れないが、少々つり上がり気味でえらく眼力を感じる目が印象的だ。
「やっと起きたわね。時間が無いわ、今からあたしが言うことをちゃんと聞いて」
女は苛立たしげに話し掛けてきた。
「あなたには今からあたしの指示に従って行動してもらう。あなたに断る権利は無い」
・・・なんだよ。またかよ。全くやれやれだ。俺の顔はそんなに騙せそうに見えるのか?そんなに安全そうに見えるのか?殺せよ!敵を見たら躊躇無く殺す。それがサバイバルゲームの鉄則じゃないのか?何で皆、よってたかって人を利用しようとするんだ。うんざりだ、もう人なんて見るのも嫌だ。顔、スタイルといい美人といってもいい感じの女だ。しかし、今の俺には金に群がる醜い亡者にしか見えない。こいつもクズヤロウに決まってる。
「ふざけんな・・・」
直貴は女の目を睨み付けていった。
「もううんざりなんだよそう言うの。人を騙して楽に儲けようって連中のそういったやり方がよぉ!金が欲しいなら自分で取りに行け!!!せめて自分で行けよ!!!なんでもかんでも他人にやらせようとするな!!!もし俺の縄を解いたら、お前をぶち殺して銃も金も奪う」
直貴はがなりたてた。
しかし、女はにやっと笑うと銃の柄で思いっきり直貴の頬を殴った。奥歯に口の内側の肉が思いっきり食い込んで破ける。口いっぱいに鉄の味が広がる。
「ふざけてんのはどっちだよ!!!状況見て物を言え!このタコがぁ!!!銃も金も持ってねぇうえに傷だらけ!お前は今このゲーム中で最もザコなんだよ!」
女はドスの利いた声で言い返してきた。
女の豹変した声にも驚いたが、直貴にはもっと驚いたことがあった。
「な、なぜ?俺の情報をそこまで知っている?」
直貴の驚いた表情を見て、女は今度は口元に笑みを浮かべた。
「ついでに言っておくと、あなたと遠藤隆志の隠した金、あたしがいただいておいたわ。」
な、なんだと?直貴は目を見開いて硬直した、もはや驚きの表情を隠すことはできなかった。
「少しはあたしの話を聞く気になったかしら?川畑直貴」