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ー綾ー  作者: 城塚崇はだいぶいい
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金も無い、銃も無い、時間も無い、体力も無い、名案も・・・無い

 俺は撃たれた左足の傷口を触ってみた。大丈夫、浅い。やはり、素人の弾が早々狙い通りの場所にあたる訳無いんだ。遠藤の銃は今は新たな敵の方へ向いている。目の前には銃が二丁、しかし、どちらも俺に向かってはいない。今だ。

 次の瞬間直貴はドアに向かって全力で走り出した。

 痛みも恐怖もひとまず忘れて、走ることに専念、持てる全力を振り絞って全力疾走。

 遠藤の銃が一瞬こっちを向いた。しかし、廊下の奴がその隙を見逃さない!遠藤の体にもう一発の銃弾が飛び込んだ。

 その後も後ろから何発かの銃声、どちらかの絶叫、何かの崩れるような音、いろいろな音が飛んできたが、俺は足を止めない。無我夢中、逃げ切る逃げ切る逃げ切る・・・。


・・・・・・・


 どこをどう走ったかわからない。気付いた時はビルの何階か上の階の廊下にいた。全身の力を使い果たして床に突っ伏したのだ。つ、疲れた・・・出血も止めなければならない。こんな廊下にいつまでも突っ伏していたらまた誰かに襲われるかもしれない。しかし、動けなかった。体力、精神、共に使い果たした・・・。


 暫らくして・・・。気分も落ち着いてきた。直貴は起き上がると廊下の壁際に置いてあったソファに座ると、うなだれた。

 ここに来て、ようやく現状が呑み込めた。

 なんとかこうして、生き延びることはできたみたいだ。しかし、銃を失った。金は・・・もしかしたら遠藤がやられていれば、まだあの引出しの中にあるかもしれない。取りに行く?一瞬考えただけで全身に震えが走った。冷静になってさっきまでのことを思い出したら、恐怖がこみ上げてきたのだ。

 銃口を向けらる。その映像が脳によぎる。発射された銃弾は俺に飛び込んできた。全身に迸る痛み・・・。

 震えが止まらなくなっていた。痛みが全身によみがえってきた。思い出すだけで体が動かなくなる。

 あそこに戻ったら、また撃たれる・・・。頭の中が銃口を向けられた時の映像でいっぱいになってくる。

 だめだ、あそこに金を取りに行くなんてまっぴらだ。

 ・・・・・・・。

 ・・・・・・・。

 ・・・・・・・。

 直貴は震えていた。 制限時間だけが刻々と流れていた。

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