自分のことが大嫌いになった。
「俺は、お前に命を助けてもらったと思っている。初めて会った時、銃を降ろしてくれたことはもちろん。あいつ等に騙されそうになった時も。お前がいなければ俺はもう既に死んでいただろう。このまま外に放り出されて何処かの誰かにいたぶられて殺されるより、今お前に殺された方がましだ」
遠藤は真剣だった。直貴の方を真っ直ぐに見つめ静かにしゃべった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
直貴は何も言えなかった。当然、遠藤を殺すことも、銃を構えることすらもできなかった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
再び長い沈黙が訪れた。そして、沈黙を破ったのはまた遠藤だった。
「わかった。俺は隣の部屋にいる。気が変わったら声をかけてくれ。または殺しに来てくれても構わない」
遠藤はドアを静かに開けると辺りを警戒しながら外へ出て静かにドアを閉めた。数秒後に隣の部屋のドアの音が静かに聞こえた。
嫌な気分だ。本当に嫌な気分。俺は今すごく嫌な奴なんだろうか?そんなこと無いだろ?ついさっき会ったばかりの他人を信用する奴の方がただのお人好しだ。俺のやっていることの方がむしろ普通、当たり前のことだ。
自分のやっていることを肯定しようと何度も何度も頭の中で繰り返す。しかし、一向に気分は良くならない。
疲れた・・・もう疲れた。身体、精神ともにどうしようもなく疲れた。直貴は部屋の隅で小さくうずくまるとため息をついた・・・。
ぱ※※※※※※※※※※※※※※※※ん!!!!!!!
とてつもなく大きな破裂音が建物の中をこだました。
直貴ははっとして目を覚ました。
寝ちまってたのか!?こんな無防備な状態で!?
幸い命は無事だったみたいだ。金と銃は無事か?
金はこの建物に入る際ある部屋へこっそり隠しておいた。これは遠藤すらも信用できなくなったためだった。
銃は?ポケットの中にしまってあったはず・・・・無い!!!
なぜ?眠っちまう前には確かにあったはず。つまり俺が寝ている間に誰かに取られた?それもおかしい、そいつは何故俺をその場で殺さなかったんだ?
ぱ※※※※※※※※※※※※※※※※ん!!!!!!!
再び銃声がビルの中を駆け巡る。
な、なんだ?ひょっとして・・・近くで誰かが殺りあってるのか?
遠藤は?まさか今撃ち合いしてるのは遠藤?俺の銃で?わからない?何が起きてるんだ?
俺、どうする?