人を信用しないってのはそういうことだ。
「遠藤、俺は今誰とも会いたくないし、話したくも無い。だからどっかへ行ってくれ!」
直貴達は逃げ出してから、適当なビルの適当な階の適当な一室へ逃げ込んでいた。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。ここまで来て何言い出すんだ。きっと生き残ってるのは頭のキレる悪そうな奴ばっかりだ。こんなところに丸腰で放り出されたら即餌食になっちまう」
遠藤は焦ってそう返した。
「ちげーよ。俺はこうも考えている。お前も実は馬鹿のふりをした頭のキレる奴で、俺のことをいつも狙っている。俺が油断したら最後、銃を奪われて殺される」
「そ、そんなこと言うなよ。俺はお前を信じたからここにいるんだ。お前を信じたから一〇〇〇渡したんだ。そうだろ?あいつ等のせいでせっかく生まれた俺達の信頼関係が壊れちまった。だが、それは一時の感情の迷いのせいだ。そうだろ?」
「違う!お前は俺を信じたから一〇〇〇万を差し出したんじゃない。死にたくないから差し出しただけ。実際に残りの二〇〇〇万はどこかに隠したままじゃないか!俺に奪われることを恐れているから隠しているんだろ?俺を信じてるって言うなら、今すぐその金ここに持ってきてみろよ!信じるってのはそういうことだろ!」
直貴はいらだたしげに言った。
「違う!そうじゃない。金を隠してるのは・・・。」
「うるせぇ!今は誰の話も聞きたくねぇって言ってんだろっ!とっとと出ていきやがれ!」
直貴は遠藤の言い訳が終わるのを待たずに大声で言った。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
友達と喧嘩した時のような気まずい沈黙の後、遠藤は言った。
「じゃぁ、俺を殺せよ!確かに俺を今殺しちまったら俺が隠した二〇〇〇はもう絶対誰にも見つからないだろう。だけどこのまま俺を逃がしたら次に会った時はお前の命を脅かす存在になるかもしれない。お前の情報を外の誰かに漏らすかもしれない。そうだろ?俺をここで逃がすのは得策じゃない。信用しないなら殺すべきだ。」
遠藤の顔は真剣だった。
「川畑、信用しないってことはそういうことだ。」