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ー綾ー  作者: 城塚崇はだいぶいい
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ギャンブルで絶対勝てる方法、そんな物は無い。だが、絶対負けない方法ならある。

 堀川大輔、彼は金を受け取ってこのゲームをスタートした。彼はゲーム開始から現在までずっとスタート地点のすぐ脇に生えていた大きな木の上にいた。

 大丈夫、ずっとここにいれば大丈夫だ。どこか安全な場所を探しに行くとかそんなことはしない。どこに何があるのかは知らないが、ここが一番安全なんだ。

 堀川は自分に言い聞かせた。 ギャンブルに必勝法なんて無い。しかし、絶対負けない方法ならあるんだ。それは、そもそもギャンブルをやらないこと。ギャンブルさえしなければ勝つことも無いが負けることは決してない。

 安全な場所を探しに行くとか、誰かの考えた作戦に乗るとか、そんな事をするのは全てリスクが伴う。そう言ったギャンブル性の高い行為はそもそもしなければいい。スタート地点からすぐそこの木の上、一見隠れ場所としてはやや頼りない気もするが、ここは意外に盲点だったのか、皆安全な場所や獲物を探しにあちこちへ散っていったきり、誰もここへ戻ってくることは無かった。

 誰がいくら儲かったとか、何人死んだとかそんなことはどうでもいい。俺がここを無事に脱出することは決まっているんだ。

 偶然だが,俺は最初の選択で金を手にした。これは本当に偶然だったが最高の選択だ。勝負はここで決まったような物。俺は隠れているだけで負けないと言う最高の選択肢を得ることができたのだから。

 だいたいギャンブルってもんはちょっとしたスリルを味わう程度の遊びであって、そこに命やら人生を賭けちまうなんてそんなのは酔狂な話。やりたい奴らだけで勝手にやってくれ。俺はのらない。このまま隠れていればいいんだ。

 開始からおよそ一日、堀川は一睡もしないまま樹にへばりついて一晩を明かした。

 流石に・・・疲れた。不安定な樹の上に眠らず食わずでまる一日いたのだ。当たり前と言えば当たり前のこと、頭がぼぅっとしてきた。うつらうつらと睡眠の波に押されていく。

 おそらくほんの数秒のことだったろう。眠ってしまったのだ。手足から力を抜いてしまった。

 はっ!!!!

 目を開けたときには既に両腕が樹から完全に離れ、背中から傾いて地面へ向かってだんだんとスピードを上げていた。

 慌てて枝を握り締めて体勢を整える。木の枝が大きく揺れる。心臓の音が全身から聞こえる。

 バキバキッッ!!!

 堀川の握った枝は体重に耐え切れず音を立てて折れ始めた。

 ・・・ぐっうっぁぁぁぁ!

 ガン!!!

 ぐはっっっ!!!

 背中から地面にたたきつけられた。激しい衝撃を受け全身の血液が波打ち、一瞬呼吸が止まる。

 ・・・暫く動けなかった。左肩から激痛が走る。肩甲骨が折れてしまったのかもしれない。

 く、くそ、早く隠れないと・・・。しかし、この痛みじゃもう樹には登れそうに無い。ちきしょう。しかし、土の上に落ちた割には固い感触を受けた気がする。それに落ちた時の音

「ガン!!!」

 小さくだが金属の音がした気がする。堀川は起き上がると少しだけ地面を掘ってみた。

 ガツン

 ん?なんだ?ほんの少し掘ったところで何かに突き当たった。岩?いや、もっと人工的な金属音を感じた。

 気になってもう少しだけ掘ってみると・・・。

 こ、これは・・・まさか・・・

 堀川は掘り起こした部分を全て元通りに埋めると全力で逃げ出した。疲れも眠気も痛みすらももはや感じない。全力で走り出した。とにかくここから離れなければ・・・。

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