金を持っている奴が強いのではない。強い者の元へ金が集まるのだ。
「五十嵐様、C地区で小規模な火災が発生致しました。このまま放っておきますと大規模な物になりかねません。いかが致しますか?」
「放っておきなさい。観戦中のお客様のほとんどがこのゲームに大金を賭けていらっしゃる。余計なことをしてクレームをつけられては困ります」
五十嵐勇樹は言った。
このゲームを観戦しにくる客とは、大金を払ってでも人間の殺し合いを観たいというイカれた富豪達だ。彼等は酒を呑み、旨い料理を食べながら、二日間ゆっくりと殺戮を観戦し、自分の賭けた負債者を応援する。
悪趣味だ。五十嵐勇樹はこの富豪達が大嫌いだった。こういうくだらんギャンブルに大金をほいほいと賭けてくる奴はだいたい大会社の御曹司やら大地主の跡取り息子だの生まれつきの富豪が多い。全く苦労という物を知らずしていきなり金を持っている連中だ。金をどぶに捨てるかの様なギャンブルを平気で行う。頭が悪いくせに態度は人一倍でかい。金のおかげでふんぞり返っていられると言うのに、金の価値を全くわかっていない。貴様等のような馬鹿が大金を手にしていいはずが無い。
貴様等の親父がいくらキレ者でいくら稼いだか知らんが、貴様等の財産もこの私がそっくりさらってやる。そう思いながら五十嵐は仕事につく。
「はい、ここで現在の中途結果報告をさせていただきます」
五十嵐は笑顔でお客様に言った。部下達が現在のゲームの状況を読み上げ始めた。
「現在の優勝候補は五億七〇〇〇万を一人で所持し、現在までで推定三一人を殺害した松下満という男です。続いて二位は六〇〇〇万を所持し、現在までで二人を殺害した及川潤という男。一位と二位には大きな差があるように見えますが、銃弾一発でいくらでも順位は変わります。勝負の行方はまだまだわかりません。現在の生存者数は七名、そして、スタート時に金を受け取った参加者の中で現在まだ生存が確認されているのは遠藤隆志、堀川大輔という男二名のみとなりました」
部下が話し終えると五十嵐は続けた。
「それでは今回のゲーム最初の見所となりました松下満が起こした火災現場での映像をもう一度放送させていただきます」
現場のカメラが火災によって壊れるまでに撮影された、何人もの人間が燃え、爛れ、焦げていく映像が再び放送された。彼等はその映像を食い入るように見つめていた。
全く、悪趣味だ。