できることなら、自分以外のすべての参加者を殺しておくことが望ましい。
松下満は目の前を走っていた三人に向かって三発の弾丸を発射した。一発目は先頭を走る男の後頭部へ、二発目はその後ろを走る水田正夫の背中に、三発目はその後ろを走る男の首に、三発の弾丸はそれぞれ一発ずつ彼等に命中し、三人は進行方向に向かって飛び散った。
クックック・・・油断はいけないよ。まだまだゲームの真っ最中だ。この建物から脱出したら勝ち、では無い。まだ制限時間は半分以上残っているのだから。
作戦は巧くいった。君達はもう用済みだ。死んでもらうのが望ましい。このまま四人で行動したらいつ寝首をかかれるかわかったもんじゃない。それに、四人で分けると一人あたり一億五〇〇〇万円しか取り分が無い。一人じめすれば六億円だ。君達は私の作戦に従ってよく頑張ってくれた。しかし、私のことを信じすぎた。君達も私から見れば、この建物の中で燃えている馬鹿どもと大差ない。見ず知らずの人間の口車に簡単に乗るからこんなことになるんだ。
しかし、相手が馬鹿どもばかりだとこうもゲームが簡単に運ぶ物だとは知らなかった。
松下がニヤニヤと笑っていると足元から声が聞こえた。
「うぅぅぅぅぅぅ、ぐっ・・・・」
「ん?何だ、水田君じゃないか。まだ生きていたんだね」
「て、てめぇ・・・なんで・・・」
「『なんで』と言う質問はおかしい。君が油断したからに決まってるじゃないか。君は良く働いてくれた。お礼と言っては何だがすぐ楽にしてやるよ」
松下は倒れている水田の顔面を思い切り蹴り飛ばした。鼻がつぶれ、前歯がへし折れ、頭蓋骨が、頚椎がひしゃける。骨の音、血の音、肉の音が入り混じった無気味な音が靴を伝わって松下の全身に響き渡った。
「すまないね。弾薬は今後も使うことが多いと思うので無駄にできんのだよ」
松下は死体から金と銃を回収すると、念のため全員の頭を踏み潰し、速やかにこの場所から立ち去った。