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ー綾ー  作者: 城塚崇はだいぶいい
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本気で信じてたわけじゃない。信じたかったから無理矢理信じたんだ。助かるって。

 奴等はゲームが始まって暫くしてこの作戦を実行した。奴等の読みではこんな短時間に三〇人も集まるとは思わなかったのだろう。こんな、嘘に騙されてのこのこやってくるのはせいぜい二〇人程度と踏んでいた。しかし、このゲームの参加者はクズどもの集まり、うまい話を眼前にちらつかせりゃ公園の鳩の様に群がってきやがる。短期間でも定員オーバーの三〇人が集まっちまったことが、奴等にとっての誤算。ここで、ようやくこの作戦に穴が開いた。もし、この嘘に騙されてここへやってきたのが二〇人だったら、俺達は今ごろあの部屋の中でのん気にゲームの終了を待っていたことだろう。三〇人、おかげで嘘が露呈。

 俺達は、トイレの窓から脱走。そのまま全力疾走で逃げ出した。

 もう、誰とも会いたくない。誰の話も聞きたくない。誰とも会わなければ、誰の話を聞くこともない。誰の話も聞かなければ、誰にも騙されることはない。もう、迷わねぇ、誰にも見つからない場所で静かに隠れて二日後を迎えてやる。時間まで、もう誰も信じねぇ。


・・・・・


 ゲーム開始から十二時間経過、時間は深夜二時をまわったところだった。

 水田正夫は腕時計でそれを確認すると、静かに立ち上がり、銃を構えた。

 パン!!!!バンッ!!!!バンッ!!!パンッッ!!!!!ッ!!

 目の前で眠っている人間へ躊躇わず発砲。

 ヴァンッ!!バンッ!!・・・・・・

 両隣の部屋からも同じような銃声が聞こえてくる。水田正夫は死体から金を拾い上げると迅速に部屋を出た。

 ククククククク・・・。うまくいったみたいだな。

 水田正夫は銃を受け取ってこのゲームをスタートした負債者の一人だった。ゲームが始まってすぐ、松下満という男に話し掛けられた。その男は、簡単に金を手に入れるいい方法を思い付いたのだが、それを行うには仲間が必要だと言ってきた。水田正夫はこの男の作戦にのることにした。

 彼は大声で『全員助かる』と嘘をついた。するとゲームの参加者が次々と彼の嘘に騙されてこの建物に入ってくるじゃないか。こいつらは皆本当は助かりたいだけ、ただ助かりたいだけなんだ。ゲームに対して真剣じゃない、勝とうとか凌ごうとかそう言った考えははなから無い。これはそんな馬鹿の心に付け入る巧妙な嘘だ。皆、信じたいのだ『助かる』と信じたいだけなのだ。その言葉の真偽などどうでもいい。誰かに『助かる』と言って欲しいだけなのだ。その愚かな考え、我々は付け入る。遠慮なく付け入らせてもらう。俺達が言った言葉は全てが嘘、六人死んだかどうかも知らないし、殺人鬼なんて最初からいない。もしかしたらまだ一人も死んでないかもしれない。

 水田正夫の役目は入り口から二番目の部屋で寝ている馬鹿な人間を一掃し金を回収し逃走する事。一~四番目の部屋には金を持った奴等が通され、五番目以降の部屋には銃を持った奴等が通されている。銃を持った奴等の部屋には、外から鍵を閉めて火を放った。銃声を聞いて目が覚めただろうがもう遅い。金は回収できた、後は火の手がまわる前に脱出できれば任務完了だ。一番目の部屋、三番目、四番目の部屋からも俺と同じように仲間が出てくる。

 思ったより火の手は早いようだ。俺達は全力で走って出口へ向かった。

 出口から出た瞬間の出来事だった。先頭を走っていた男、一番目の部屋を担当していた仲間の頭が吹き飛んだ。

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