ルールは単純なほど深い。
「待ってくれ!撃たないでくれ!頼む!俺の話を聞いてくれ!お願いだ!!!」
男は両手を上げて半泣きで叫んできた。直貴にとってそれは意外なことだった。
「あ、あんた、借金はいくらだ?一〇〇〇か?二〇〇〇か?だったらやる。だから撃たないで俺の話を聞いてくれ。」
男は依然半泣きで叫んだ。
「金をやるだと?」
直貴は銃を向けたまま不信そうに言った。
「そ、そうだ。やる。俺の借金は一〇〇〇なんだ。だからそれだけあればいい。残りはあんたに全部やる。だ、だから、撃たないでくれ・・・。」
なんだと?こんな簡単に金が入っていいのか?だが、よく考えたらそうだ。俺は一人必ず殺さなければならないと思っていた。しかし、ここに三〇〇〇万あって二人の借金が二〇〇〇万。なら別に殺すことはない。二人とも生きる目もある。いや、殺して三〇〇〇万奪うべきだろうか?考えた結果直貴は言った。
「わかった。撃たねぇから、金を置いて消えな。」
このゲームの俺にとっての肝心要である金を得ることがこんなに簡単にできるとは、後は時間まで隠れているだけ。案外簡単にこのゲーム、凌げる。
「ま、待ってくれ。金は必ず渡す。だからその前に俺の話を聞いてくれ。」
男は勝手にしゃべりだした。
「金はやる。しかし、このまま時間まで逃げ切るのは大変だろ?俺もあんたも、寝込みを襲われたり、不意を突かれたりするかもしれない。眠らなければそれはそれで疲れがとれず隙ができてしまうだろ?そこで、あんたを信用して頼みがある。手を組まないか?そうすれば眠っている間も見張りができる。不意を突かれる可能性も低くなる。どうだ?」
こいつの言うことも一理ある。しかし、
「お前を信用しろって言うのか?冗談じゃねぇ。そんなに甘くねぇよ。撃たねぇって言ってるうちに消えな。」
直貴は銃を構えなおして突きつけた。
「待て、待て待て、撃つな。か、金はある場所に隠してある。もし俺を殺したらどこにあるかわからなくなる。そしたら、あんたは危険を冒して別の獲物を探しに行かなきゃならない。お互い損じゃないか。俺を撃たないでくれれば今から一〇〇〇あんたにやる。そんで、その後タイムリミットまで俺と行動してくれれば、もう一〇〇〇あんたにやるよ。俺は丸腰だ。なんとしても銃を持った仲間がほしい。もちろん、俺が不信な行動をしたらその時は躊躇無く撃ってくれて構わない。どうだ?」
・・・条件は、悪くないだろ。仮にこの男を助けきれば二〇〇〇万。借金を返してもあと一〇〇〇万残る。
「お前は、何故俺を信じる?金を貰ったら即殺すかもしれないだろ?」
直貴は尋ねた。男は答えた。
「俺の話を聞いてくれただろ。それで十分信用できる。普通なら目が合った時点で俺は死んでるよ。あんたは信用できる。」
直貴は銃を下ろした。