三〇〇〇万稼ぐ方法を思いつくのは今日が初めてだ。いや、今日が最後だ。
このゲーム、つまりこう言うことだ。俺達負債者四〇人は金が無い。しかし四〇人中二三人は三〇〇〇万円を手に入れた。一七人は銃を手に入れた。今から二日間同じ場所に監禁されるわけだ。二日後に借金を返済できた者だけが開放されると言うことは、銃を持っている者はこの二日以内に何とかして金を手にしなければならない。
わかるだろ?近くに三〇〇〇万持って丸腰の他人がいるんだ。二日以内に借金を返済するだけの金を手に入れる方法は一つ。銃で殺す、あるいは脅してもいい。とにかく奪えと言うことだ。
「俺達に・・・殺人をしろって言うのか?」
負債者の一人がスーツの男に向けて言った。
「いえいえ、そんなことは申しておりません。あなたにお渡しした銃を使って二日以内に金を稼ぐ方法がそんなにたくさんあるとは思えませんが、殺人を強要など致しません。どんな方法でも構いません。二日後に金を持ってきた方が勝者でございます。」
「もし、もしあの選択肢で全員が金を選択していたらどうだったんだ?全員開放だったのか?」
負債者の一人がまた質問をした。
「わかりませんよ。このゲームは何度となく行われてきましたが、一度もそのようなことは起きておりません。あなた達のような方の中には必ず一人、二人はひねくれた考えの持ち主がおりますからね。なぜか銃を選ぶ方が出てくるのです。それに、銃が無くても金の奪い合いは生じるかもしれないでしょう?負債額が三〇〇〇万を超える方も何人かおられますしね。二日間経ってみたら、金を盗まれたり、奪われたりして失っている人はいるかもしれません。三〇〇〇万じゃ足りない。もっと欲の深い人間はいることでしょう。」
「いったいなんでこんなゲームをやるんだ?負債者が死ぬかもしれないんだぞ。そしたら誰から金を取るつもりなんだ!」
「このゲームのフィールド上にはたくさんのカメラが設置されておりまして、衛生からも撮影がされております。そして、あなた達一人一人にはそれぞれ倍率が設定されております。と言えばご理解いただけますかな。」
・・・ギャンブルのネタされたって事か。
「冗談じゃない!てめぇらの遊びに命かけられるか!だいたい話が違う。俺は負けたやつは強制労働で、勝ったやつは開放と言うから来たんだ!こんなゲームやったら負けたやつは死んでるじゃねーか!」
「うるさいですねぇ!さっきから!ぐちぐちぐちぐちと!」
今まで敬語と笑顔を絶やさなかったスーツの男がはじめて顔を歪ませた。
「・・・失礼しました。あなた達クズの言うことにいちいち腹を立ててしまうとは恥ずかしい。話が違うとおっしゃられましたか?それはこちらの台詞でございましょう。貴方達は金を返すというから貸したのでございます。それをいつまで経っても返さない。話の違うことを先にしたのはあなたの方です。貸した金を期日までにしっかりとご返済なされていたらこんなところにはいなかったはずです。それを自分の都合の悪い時ばかり口々にがなりたてる。約束を守ってほしいのならまず、自分が守ってからになさってください。それに、あなた達は金が無いのでしょう?なら、何を賭けるのですか?金も無い、技術も無い、努力もしないとなったらもう、命を賭けるしか無いでしょう。他にあなた達に賭けられるものがあるのですか?何も持たず、何もできず、それでいて命も惜しいのですか?そんな人間がどうやって金を稼ぐと言うのです?わがままが過ぎる。今からあなた達は命を賭けて三〇〇〇万を取りに行く。その金額を安いと思ったら大間違いだ!むしろ高い、高いくらいだ。貴様らのようなクズには出すぎた金だ。断言しよう。貴様らのようなクズがこの先、外でどれだけ働こうと、絶対に三〇〇〇万という金を得ることは無い。貴様らに三〇〇〇万が見えるのは人生でここが最初で最後。貴様らはまじめに勉強したり、一生懸命働いたことが無いから知らないのだろう。朝から晩まで上司にこき使われ、それに対して文句の一つも言わずにただ黙々と働く。仕事が終わったら酒もギャンブルも女遊びも我慢して家に帰り資格取得やスキルアップのために勉強をし、また翌日の仕事のために速く眠る。そんな人生を何年も何十年もひたすら繰り返した先に三〇〇〇万という金は存在する。それを貴様らはたったの二日で得ようと言うのだ。命の一つ二つ張るのは当たり前というもの!・・・・失礼しました。つい熱くなってしまい、無礼な言葉使いをお許しください。」
スーツの男の言葉に対して、もはや反論できる者はいなかった。