まずは、時間を忘れてガッツリ実験。
手紙を読み終わり、周りを見渡した。
今いる場所は、小学校のグランドくらいある草原で、それを囲うように木々が生えていた。
つまり、どこを向いても同じ景色なのである。
(とりあえず、スキルを使ってみるか……)
「金属バット!!」
グリップを握った状態で出てくるように想像したが、なにも起こらなかった。
(何が悪かったのかわからないな…結構難しいかもな…)
一樹は、悩んでいても変わらないので、素直にステータスを開き、アイテムBOXから金属バットを選択し、取り出した。
ファサッ……
草の上に、バットか現れた。
(ステータス経由だと、目の前の地面20㌢上にでてくるのか。食べ物なんかだと少し危険だな。バットは思ったよりも短かかったり、色が違うな。中学の部活で買ったやつだから20年近く前か。記憶も朧気になるな。こんなところも失敗理由かもな。)
とりあえず、グリップを掴み、片手でブンブン振り回してみた。そして、鑑定の実験に入った。
まずは、握ったまま
「鑑定!」
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『金属バット』(棍棒)
:異世界から召喚された金属製の棍棒。
金属が変化、名もなき金属となった。
鉄以上ダマスカス鋼以下の強度がある。魔法耐性は意外と高い。
:装備ボーナス[棒術レベル3]
:[合成]アイテムが足りません
:[分解]✕
:[加工]アイテムが足りません
:[錬金術]✕
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(よし!成功だ!)
一樹はガッツポーズをした。鑑定は今後、命に関わるので、すぐできたことに安堵した。
(触れている状態ならば簡単に出来た。問題は、遠くから見ているだけで鑑定できるかどうかと、生き物!特に人間相手に使えるかどうかだ。どうせ、[盗賊]や[山賊]なんかがいるだろうから、鑑定し先手をとりたいな。)
気を取り直し、実験と検証をすることにした。
本来ならば、明るい内に住処や、食料の確保に行ったほうがいいのだが、『引き換え券』のスキルでどうにでもなるだろうと、思ったのである。
数時間後、実験、検証により、さまざまなことがわかった。
①、目視でも『鑑定』は可能。
発動条件は距離ではなく[鑑定したいものの全体像がはっきり見えること]であった。
小さなアリンコなら指に乗せて目の前、約30㌢辺り、大きな木ならば約5㍍ほど離れている状態で『鑑定』することができた。
②、『鑑定』の場合は、声に出す必要があるが、『鑑定EX』の場合、思考するだけで発動するのである。
これは予想だが、これは地味なバクなのではないだろうか。
『鑑定EX』は持っているが『鑑定』は持っていない。
水神様が確認しろと書かれていたので勘違いしてしまった。
おそらく、このような小さなバクは、他にもあるのだろう。見つけ出したい。
③、人間で試していないので確信は持てないが、アリンコを鑑定出来たので生き物も鑑定できるのだと思う。
④、『鑑定EX』はスキルであるがMPを消費するみたいだ。俺はMPは魔法のみ消費すると思っていたので危なかった。
実験、検証中に、いきなり気分が悪くなったので、ステータスを確認したら、残りMPが10になっていた。MPが0になったときの検証もしたいが怖くて止めた。
⑤、『鑑定』『鑑定EX』は、共にMPを2消費する。
⑥、『種火』
:指先から小さな火がでる。ライターの火からガスバーナーまで。
:火力の調節可能。3秒でMP1消費。
『飲み水』
:指先から水がでる。1滴から約1㍑まで調節可能。
:1度でMP3消費。
『掘る』
:穴を掘れる。
:約1㌢四方から約1㍍四方までと直径約1㌢から約1㍍までの円、円柱形に掘ることができる。
:1度でMP3消費。掘ったものは、アイテムBOXに入る。 空きがないと掘れない。
『そよ風』
:手の平から風を送る。
:団扇で扇いだような風から扇風機を(強)で使った時まで調節可能。
:3秒てMP1消費
『灯り』
:手の平から光る球体が出現する。球体は、出現した空間に固定。
:球体の大きさは、直径約1㌢から直径約30㌢まで調節可能。
:明るさは(弱)(中)(強)の切り替え可能。
:色は(白)(オレンジ)(赤)がある。
:20秒でMP1消費。
『暗闇』
:思考した場所に真っ暗な空間を作り出す。
:触れることは出来ない。
:約1㌢四方の空間から約1㍍四方までを真っ暗な空間にできる。
:20秒でMP1消費。
『清浄』
:人、物を指定し綺麗する。除菌もあるかもしれない。
:1回5MP消費。
『電気ショック』
:人差し指と親指の間に電気が走る。効果不明。
:1回5MP消費
⑦、MPは、約1分で1回復。
⑧、バットをアイテムBOXから思考で取り出すことに成功。
⑨、アイテムBOX【②】には銀貨が3枚入っていた。
(とりあえず、こんなものかな。メモ帳と筆記用具が欲しいな。
自身を知り、敵が現れても知ることができる。武器もある。魔法もある。
これでかなり生存率があがったな。)
----のちにステータス画面から詳しく調べられることが判明し、一樹は凹んだ。
実験、検証を終えて辺りを見回した。辺りは暗くなってきていた。
そして、気づいた。今日1日モンスターと遭遇していないことに。
(神様と精霊様が、転移場所になにか施してくれたのかな?)
「よし!ここが安全だと信じて、夕飯にして寝ちまうかな!!」
そういって、引き換え券を取り出し、唱えた。
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〈アイテムBOX一覧〉
:神様からの手紙(枠外)
:金属バット(1)
:引き換え券(1)
:宅配ピザ(照り焼きチキン)(1)
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(よし!夕飯ゲット!食べ物が見つからなければ当分1日1食だからな。カロリー高めで箸やスプーンがいらないってなるとやっぱピザだな!あぁ…『引き換え券』がなければバッタ食ったかもな…)
『清潔』を使い、ピザを1切れだけ残して食べた、その1切れは明日の朝用にアイテムBOXに収納した。
決意してすぐではあったが、1日1食はやっぱり辛そうだと、少し弱気になった。
(神様から頂いたスキルによって、安心安全に異世界ライフが送れそうです。ありがとうございます。)
一樹は神様に感謝し、『掘る』を使って周りを穴で囲い、穴の内側に掘った土を重ねて壁にした。ここがセーフティゾーンだと思うが、万全には万全を尽くすのである。
(よし!)
安心した一樹は、草原で大の字で寝た。
『知らぬが仏見ぬが秘事』
いろいろな道の秘伝などというものも、実体を見てしまえば案外つまらないもので、がっかりすることが多い。