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お決まりの崩壊

 全員の特性を調べ終わると、改めて食事をしようと王様から言われた。兵士に案内された僕たちはそのまま長机の置いてある広間へと通され席についた。


「では異世界の勇者様方よ、この度は我々の身勝手で呼び出してしまい申し訳ない。しかし、魔王は手段を選んで挑める相手では無いのだ。貴殿らの望みは出来る限り叶える、どうか力を貸して頂きたい。これは謝罪と感謝の宴である…まずはしっかりと食べ休んで欲しい」


 王様がそう告げると豪華な料理が運ばれて来る。変な食べ物が運ばれてきたらどうしようかと思ったが、どうやら食べ物に大きな違いは無さそうであった。呆然としていた僕だけれど、美味しそうな料理の誘惑に負けてしまいしっかりと食べてしまった。


 食事が終わると、桜庭先生が王様に僕らだけで話し合う時間が欲しいと伝えていた。そして今、広間には僕たち2年A組の人間しかいなくなっている。


「おいお前ら、ぶっちゃけ俺には何が起きたかまだイマイチ理解が追いついてねぇ。でもどうやらこっちに危害を加えるつもりは無さそうだ。最初はコスプレだと思ったがどうにもここは本当に別の世界らしい。悪ふざけにしては手が込みすぎているしな……俺は担任としてお前らを危険な目に合わせるわけにはいかねぇ。まぁどうしようもねぇ奴らではあるが親御さんから預かっている大切なお客だからな。だが、魔王って奴を倒さないと俺達は元の場所に戻る事は出来ないらしい。しかもその為には恐らく俺たちの力が必要なんだろう。特に勇者なんて面倒なもんを引いちまった御剣はな。俺たちはそれのサポートって話だったな。とにかく、無茶だけはするんじゃねぇぞ。それから毒島、お前さっきのありゃあなんだ?どういうつもりだ?」


「なんだよ?文句あんのかよ?」


「いや…文句はねぇ、でもお前と黒田は仲良かったろ?喧嘩でもしたのか?」


「……」


「先生、あれは!」


「黒田は黙っていろ!毒島、お前に聞いているんだ」


 押し黙ってしまったままの毒島君に助け舟を出そうとした僕は桜庭先生に凄まれて黙ってしまった。先生のこういう所は素直に尊敬出来るけど今は困る。だって毒島君は多分……


「……だよ。」


「なんだ?普段みたいに馬鹿みてぇな大声で喋ってみろ!!」


「うるせぇな!やってみたかったんだよ!異世界テンプレ!!」


「は?」


 そう、何を隠そう毒島君は僕の友達である。バリバリのヤンキーっぽい見た目とは裏腹に彼はアニメオタクだ。アニメとの出会いはゲームセンターだったそうだ。


 生粋の悪だった彼はいつものようにゲームセンターで仲間と群れていた。ある日、新しい筐体が運び込まれているのを見かけて興味本位で遊んでみたそうだ。それは美少女アニメのキャラクターが対戦をする格闘ゲームだったそうだが、それを見た彼に電流が走ったという。


 可愛らしい声と姿、そして濃密なストーリー。そこから彼はズルズルとアニメの沼へと沈んでいったそうだ。しかし学校や周りのヤンキーにバレるのはプライドが許さなかった。


 僕と彼が出会ったのはアニメのイベントだった。物販コーナーで買い物をしていると怪しい変装をした毒島君が警備員に引っ張られていた。変装をしている上に挙動不審であり、警備が厳重になっていたイベント会場に入る事が出来なくなった。


 トボトボと帰ろうとしている毒島君に声をかけ、代わりにグッズを買ってきて上げてから彼は僕にだけアニメ好きをカミングアウト……というよりもはや言い逃れが出来ないので暴露したのであった。


 それからは単純、学校で唯一話が出来る僕と彼は仲良くなったという訳だ。僕が毒島君との出会いを思い出していると、桜庭先生がため息を尽きながら葉巻のような物に火をつけている。


 その手にはライターやマッチは握られていなかった。先生が普通に魔法を使っている……あれも特性なんだろうか。葉巻なんて初めてみたけれど、何だか映画やドラマの悪役みたいだ。


「異世界テンプレってのが何かはしらねぇが、あんないじめのような態度は良くないだろ」


「異世界テンプレはまぁ趣味なんだけどな、一個気になる事があったから俺はあんな事したんだよ」


「ん?何なんだ?その気になる事ってのは」


「センセーよう、俺の特性に鑑定ってあったの覚えてるか?実はな、俺はこっちの世界に飛ばされてきた時からお前らの特性が全部見えてたんだよ。勿論、あっちの世界のやつらの物も含めてな」


「それで?」


 毒島君の話を聞いてどうやら真面目な理由があった事に気がついた桜庭先生はタバコの火を消して話を聞く。


「あのおっさんは威圧と送還?って書いてあった。そんであのプリティーな美少女は魅了と召喚があったんだよ。あいつら、特性が二つは初めてみたとか抜かしてたけど兵士も含めてあの場の全員が二つ特性を持ってやがったんだ。つまり嘘を付いてたって訳だ。それに加えてセイちゃんの特性はパシリ……あいつらは気がついてねぇみたいだけどこれはとんでもねぇ特性だぜ?そこで俺は作戦をたてた。異世界クラス召喚のテッパン、ヤンキーキャラが主人公のスキルに難癖をつけてイジメると見せかけてセイちゃんを守ろう作戦を決行した訳だ。」


「まぁなんだ。喧嘩でもいじめでもねぇってんなら構わないけどな……次からは先生に一言教えてくれ」


「あぁ、分かったよ。それでセイちゃん、どうだったよ!バッチリだったろ!あそこで御剣と聖良あたりが怒ってくれれば完璧だったんだけどなぁ~!」


 そう言った毒島君がちらちらと御剣君と聖良さんを見る。二人は呆れたような表情でこちらを見ていた。


「いやーまさか僕がなるとは思わなかったけど…本当に居るんだね、意味の分からない能力持った人って!というか異世界召喚が本当にあることに僕は興奮を隠せないよ!」


「だよなぁ!そうだ、それよりもセイちゃんにはもう一個伝えなきゃいけない事がある。

ちょっと耳貸せよ」


 毒島君に言われるがままに耳を近づけると、彼の口から信じられない言葉が伝えられた。


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