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友だちはお月様

作者: 猿取いばら

 森の中の動物たちは、いじわる狼のいたずらにとても困っていました。

 豚の家族が大切に育てていた畑を荒らし、牛のおばさんの洗濯物を踏みつけ、ねずみの兄弟のおうちを壊してしまいます。

 狼は動物たちに謝ろうとせずに、好き放題生活していました。

 次第に、狼の周りには誰もいなくなってしまいました。


「別にいいさ。一人のほうが好きなのさ」


 それでも狼は反省なんてしません。

 一人気ままに、夜の森を歩いていました。


「誰だ? 俺のあとをつけるのは」


 誰かに見られている気がして、その方向を見ると、夜空に金色で真ん丸のお月様が浮かんでいました。


「なんだよ。お前、ついてくるな」


 お月様に向かって吠えますが、お月様には聞こえません。

 気味悪がって走りますが、お月様から逃げることはできません。

 狼は観念して、お月様に話しかけることにしました。


「いたずらばっかりする俺を怒りに来たのか? 」


 お月様は何も答えません。

 ただ、優しい光で狼を照らします。

 狼はその優しい光に心が洗われるような気持ちになりました。


「お前、とっても綺麗だな。お前のこと気に入ったよ。友達になってやってもいいぞ」


 狼に初めて友達ができました。

 それから、狼は夜になると、お月様のよく見える丘で一人、お月様とお喋りしました。


「今日は鹿のご飯を盗み食いしてやったのさ。すごいだろ?鹿の悔しそうな顔は面白かったぞ」


 にしし。と笑う狼をお月様は照らします。

 どんな悪いことをしたという自慢話をしても、お月様は怒ることも悲しむこともありません。ただ、狼を優しい光で照らすだけです。

 自分のことを叱らないお月様に気をよくした狼は、次の日も次の日もお月様に面白おかしく自分のしたいたずらを話しました。

 ある時です。

 狼は徐々にお月様が細くなっていることに気づきました。


「ありゃ。お前、随分と痩せたな。ちゃんとご飯食べているのか? 今度俺がお前の分のご飯も盗んできてやろうか? 」


 次の日も、お月様は細くなってしまいました。


「どうしたんだよ。お前、このままだと消えてなくなっちゃうぞ」


 お月様は何も答えません。出会ったときよりも弱くなった光で狼のことを照らします。


「もしかして、俺がいたずらばかりしてるから、怒ってどこかに行こうとしているのか?  待ってくれよ」


 次の夜、お月様はどこにもいませんでした。

 一晩中狼はお月様のことを探しましたが、どこにも見当たりません。色んな動物にお月様のことを聞いて周りましたが、いつもいたずらばかりの狼に答えてくれる動物はいませんでした。


「俺が、いたずらばかりしてるから、あいつはどこかに行ってしまったんだ」


 狼の眼からぽろぽろ涙が零れました。

 夜が明けると、狼は豚の家族の畑を治すのを手伝いました、牛のおばさんの洗濯物を干すのを手伝いました、ねずみの兄弟の新しいおうちを一緒に探しました、鹿にご飯をわけました。そして、皆に言いました。


「ごめんなさい」


 動物たちは皆で顔を見合わせて、狼の変わりように驚きます。

 その夜、動物たちは、いつも狼がお月様とお喋りしていた丘へ狼を連れて行きました。


「もう、あいつはいないんだ。あそこへ行ってもしょうがないよ」



 狼は嫌がりますが、皆は「いいから。いいから」とぐんぐん引っ張ります。

 丘の上についた時、動物たちは一斉に夜空を指さしました。

 そこには、とてもほっそりとはしていますが確かにお月様がいたのです。


「ああ、俺が皆に謝ったからまた出てきてくれたんだね」


 狼は泣いて喜ぶと今まで悪いことをしたと改めて皆に謝りました。

 狼は昼間は動物たちと仲良く遊び、夜になるとお月様とお喋りをして毎日楽しく暮らしました。




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