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主人公になる時間

気が付くと白い場所に来ていた。病院のようだが、それより白一色で、味気が無い。

見渡しても白以外に色が無いのだ。

「あー、成る程ね」

溜め息がでる。察した。

つまり僕は死んだのだ。

寝ている間に容態が急変。最期の夢に運良く良いものが来たが、死んだから悪夢に変わったと…。そういうことだろう。


まぁ、良いか。

現実で苦しみながら死ぬよりは最後には悪夢になったが、走り回って死んだのだ。

苦しみながらよりはマシに死ねた。あぁあ!次の人生があったら、その時はもっと自由な、楽しい人生がいいな!!

神様なんて檻に入った時点で怨みの対象でしか無かったが、今は別だ。

「少し出遅れてる間に随分荒んだね。」

後ろから声がした。

「嘘だ。死んでくれ!!」

祈る訳無い。最期の最期に最悪な悪夢見せて殺しやがって。許すわけがない。幸い体は動く。最期に肘鉄砲くらいは喰らわせてやろう。

「おっと、良い肘鉄砲。しかし、日本一のヒーローには効かないな。」

肘鉄砲が止められた。やったことは無かったが、中々良い肘鉄砲だと思ったのに…。

「お前が神か、宜しい。戦争だ。」

目の前の神は整った顔に和服で身を包んでいた。背中に日本一の旗を背負い、額のハチマキには見慣れた桃のマーク。間違い無い。コイツ、舐めてる。

「いつから死神は桃太郎のコスプレするようになったんだ?」

「ハハハ、死神のコスプレか。しかし、惜しい。一応本物だよ。僕は君の中の桃太郎。君のイメージ通りだろ?」

「…………。」

自称桃太郎はニヤニヤしながら僕を見る。腹が立つが、しかし、やつの言うことは本当だ。

似すぎていた。

僕が初めて見た桃太郎の絵本にいた桃太郎そのものだった。

「全く、折角健康な体で夢のような現象世界に来たってのに、わざわざ又死にかけるだなんてバカな真似をしたね。乙木紡君?」

「何故名前を?それに、現実だって?」

「だから言ったろ?僕は君のイメージ。日本最古のヒーローにして君のヒーローたる桃太郎だって。そしてここは夢じゃない。さっきまで君の居た世界は、君の居た世界と違う世界。異世界だよ。」

「は?」

「異世界だよ。」

「………は?」

「君は運良く違う世界に来られたんだよ。なのにさっき子ども庇ったからもう死にそう。」

「は?は?はぁぁぁ!?」

「もー。だから言ったんだよ。折角の命が今まさに死にかけてるよ?」

「ァァァァァァァァァ!!マジかよ!!何で?え!!」

異世界転移は小説で見たことがある。知らない世界に飛ばされるヤツだ。僕が異世界?やった。て、ダメだ。今死にかけてる?うそ?勿体無い。

「もっと謳歌しとけばぁ!!クソがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「謳歌も何も、未だ始まってないじゃないか。勝手に自分を殺すなよ。」

ヤレヤレといった顔で桃太郎は僕を見る。

「え?」

「君は未だ死んでない。何故なら僕が居るから。未だ君は謳歌出来る。何故なら僕が君に力を貸すから。さぁ、人生を楽しんで。君の物語の開始だ!!」

「何言って?」

「読者無き本は死ぬのさ。君が僕を生かした。次は僕が読者に成って君を生かす。そういう訳で僕はここに居るのさ!さぁ、君の紡ぐ物語を僕に見せて!」

目の前の桃太郎は訳の解らない事を言って僕に手を触れた。僕から光が溢れて目の前が真っ白になった。


「君はこの世界で何がしたい?」

そう問われる。









やりたいこと。決まっている。

「僕のやりたいことは……自分の手足で歩いて、目で見て、耳で聴いて、食べ、味わって、物語の主人公みたく皆を助けて、感謝されて、そうやって。劇的に人生を送ることだ!」


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