ちょっとだけオチのある短編集(ここを押したら短編集一覧に飛びます)
良心的な悪魔
マサオ氏は睡眠不足に悩まされていた。
布団に入っても覚醒したままで、いつまで経っても眠れないのだ。それが二ヶ月もの間、毎日続いていた。
そしてついに、あまりにも眠れず狂ってしまいそうになったマサオ氏は、禁断の手を使うことにした。
「我の名のもとに姿を表せ! 睡魔よ!」
マサオ氏は高らかに叫んだ。
すると、目の前に睡魔という全身紫色の悪魔が召喚された。
「キキキ……。オレは睡魔。眠りを司る悪魔だ。オマエ、何を求めてオレを召喚した」
「それはもちろん睡眠に関することだ」
「キキキ……。まあそうだろうな。それで、誰を眠らせたいのだ?」
「眠らせたいのは私だ」
「ほう……。他人ではなくオマエか。オマエ面白いな。普通は他人を眠らせて、眠った奴を陥れたりするものなんだが」
「俺は普通じゃないんだ。ここ二ヶ月もまともに眠れていない。睡眠不足で狂って死にそうなんだ。だからそうなる前に俺をぐっすりと眠らせてくれ」
「キキキ……。わかった。オマエは気に入ったから、特別に普通以上の眠りを与えてやろう……」
睡魔はそう言うと、煙を残して消えた。
そしてマサオ氏は眠りについた。
それからマサオ氏が眠って丸五日。
独り暮らしのマサオ氏は、そろそろ永遠の眠りにつくかもしれない。