6.アルイさんの住む村
この世界に来てから苦労しかしてない気がするんだが、気のせいか?
絶対30分は過ぎてる。少女にどのくらい時間が過ぎたのか聞いたら、
「2メルクくらい……かな?」
と返された。あと8メルクですか、そうですか。
はぁ……
少女は相変わらず俺の少し先を歩いているが、先程と比べると会話は増えた。
「えーと、あの……」
こちらをチラチラと見ながら何かを言いたそうにしている。
「名前……なんですか?」
あぁ、そう言えば名前を言ってなかったな。
自分も少女の名前をまだ知らない事に今更気付いた。
「俺は、河津諒。前世は高校生でした。君は?」
自分の名前と前世を言い次は少女の番だと促す。
「私は……前世の名前を覚えていないのですが、村長に名付けられて今の名前はアルイ・キュイアーと言います。前世は……すみません。高校生だったのかも分かりません」
謝らなくてもいいと一言伝えてから改めて目の前の少女に言う。
「よろしく。アルイさん」
「よろしくお願いします。えっと、りょうさん」
不覚にもドキッとさせられた。学校生活で名前を呼ばれる時は大抵苗字だったがために、下の名前で呼ばれ慣れてなくて照れてしまった。
幸いアルイさんは先を歩いているため、こちらの顔を見られなくて良かった。
それからしばらく歩いていると、アルイさんが村が見えてきたと俺に伝える。
木々の間から家が見えはじめる。木が多すぎて近くに来るまで全く気づかなかった。
村の住人だろうか、女の人が家から出てきてアルイさんを迎える。
その人の話す声を聞くとそれは日本語ではない、英語でもない、全く別の言語だということが分かった。天使の翻訳機能はなかった。アルイさんがたまたま日本語を話せただけだった。
女の人の話し声の中でも所々に「アルイ」という単語が聞こえる。
「〜〜〜~~~~~~~~アルイ~~~~?」
女の人は心配そうにアルイさんに話しかけている。アルイさんが首を振りながら異世界語で返事をした。
続けて俺に手を向けて、女の人に顔を向けながら話している。
話が終わると女の人は俺に礼をする。
つられて俺も礼をする。
「~~~~~~~~~~~~~~~?」
すみません。何言っているか分からないです。
困っているとアルイさんが翻訳してくれた。
「行くところがないなら家に来ますか?と言っています」
それを聞いて頷くと女の人に伝わったようで、そのまま家に戻っていった。
それにしても優しそうな人だ。お礼に明日は何か働かないといけないな。
少し待っていたら家から人が出てくる。村にある多くの家から。
もしかして全員こっちに向かってきてる?
「アルイ~~~~~~~~~~~~~!!」
「~~~~! ~~~~~~!?」
「~~~~~~~~アルイ~~~?」
待って待って!そんな一斉に言っても分かんないから!何言ってるかも分からないけど!!
助けてアルイさん!
突然数十人の村人に囲まれる。
アルイさんに助けを求めようとしたがいつの間にか最初に女の人が出てきた家に立っていた。
アルイさんは俺が見ているのに気付くと引きつった顔で笑って手を振った。