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31.果たせぬ義務感

またアルイ視点です。

痛い……

痛い……

ヒリヒリする。

つるで叩かれた所が。

壁にぶつかって全身を強く打った。

体が重い。


でも、りょうが……!


りょうが、つるに捕まった。

私がしっかり躱せていれば、崩れる地面から離れていれば。

この空間は壁も天井も遠く広い空間。

その中に、あのつるが縦横無尽に動き回っている。


「アルイ! アルイー!」


りょうが……呼んでる。

助けなきゃ……

守らなきゃ……!


動け体!

走れ私!


つるが私を狙って地面を叩く。

それを躱してつるに乗り、りょうに近付く。

また新しいつるが何本も飛んでくる。

その内の1本が私の体に巻き付こうとする。


こんなつる!

力を込めて引きちぎる。

意外と固い。


1本でこの耐久力、何本も巻かれたら逃げるのも不可能だ。

崩れた地面以外から光がほとんどないこの中で目を凝らす。

幸いりょうには1本しか巻き付いていない。

りょうは後ろから巻き付かれたようで、引きちぎるのも難しそう。

根元からちぎるのは流石に厳しい。

やっぱり巻き付いている辺りからちぎるのがいいか。


つるが何本も向かってくる。

右に避け、左に躱し、時々後ろに戻ってまた進む。

中々近付けない。


「アルイ!」


りょうが呼んでいる。

早く行かなくちゃ……

行かなきゃ……


「ぅあっ」


またつるに叩きつけられる。

痛い……

でも、りょうが呼んでいる……


「アルイ! 返事をしてくれ! アルイー!」


りょう……


「りょう……!」


「くそっ! 離せよこのつる! 待てよ! どこに連れて……」


声が遠くなる!

離れていく!

どこかに連れていかれているんだ!


「ま、待って……! 待ってよ!」

「あぐっ」


痛い……

だんだん反応できなくなってきている。

集中力が切れてきた。

このまま地面を見続けるなんて……

私が許さない!


「りょう!」

「りょう!」


りょうの声が聞こえない。

途方もない疲労が突然襲う。

考えもままならない。


りょう……!


「りょぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!」






アルイは力一杯叫んだ。

城の中に居た諒はその声を聞き、生きている事を知り、一安心した。

それでも、今は無事かとすぐに不安になる。

アルイは一回しか叫ばなかった。

だが、アルイの叫びは諒以外にも聞いていた。

城全体に響き、城の外まで届き、城の近くまで来た冒険者を驚かせ、近くの村まで轟かせ、森全体にその叫びは響き渡った。





嫌だ……痛い。

痛い、嫌だ……

つるは……もう近くにはいない。

逃げられた。


体が動かない。痛い。

立とうとしても足が地面を滑るだけで、上手く立てない。

肘が痛い。

足が痛い。

体が痛い。


りょうを……

りょうを助けなきゃ……!


1度助けられたんだから、その恩を、返さなくちゃ……!

あれ、おかしいな。

りょうと会ったのは山が初めてだったのに。

見晴らしの良い崖の上で、初めて会ったのに。

助けられたっけ?

なにで助けられたの?

恩って、いつの恩?


ダメだ。考えがまとまらない。

思考が回らない。

でも、私の中の気持ちはどんどん強くなっていく。


りょうを助けられないなんて嫌だ!

もう私の体はまともに動かない。


だから……




誰か……りょうを助けて……!

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