21.森での見えない戦闘
うーん、まだ森を出ないのか?
ちょっと森広くないか?もしかして初日の崖の上から見た景色くらい広い?
だんだん暗くなってきて周りも見えにくくなってきた。
アルイとのパーティー効果でまだ見えるけど、もうどこかで野宿した方が良さそうだ。
突然悪感が走る。ぞわぞわと背中に不快感が走っていく。
前を歩くアルイもそれを感じたのか辺りを警戒している。
「まずいですね……これはおそらくカロフです」
カロフ?初めて聞く単語なのに分かるのはあの夢の影響か。
「この背中がぞわっとした感覚って、そのカロフって奴が何かしたってことか?」
アルイは少し驚いた表情で話を続ける。
「その感覚を感じる人って狩人の才能がある人だけですよ……?」
「それはともかく、カロフは集団で追い込むように狩りをするんです」
え?あ、パーティー効果か。勘が鋭くなるなんて、そこまで効果が強いなんて思わなかったな。
「つまり、私たちはその狩りの標的にされたんです」
「……対処法は?」
「ミシューを食べ、体の臭いを消す事。もしくは木の上などカロフが近づけない場所に行く」
今ミシューは持ってないぞ。昨日食べたので持っていた分は無くなってしまった。
「……ォォォォオオオン」
遠くから遠吠えが聞こえる。俺の直感はまだ大丈夫だと言っている。
「今のはカロフ同士の会話みたいなものです。狩りの対象にプレッシャーを与え、連携を取るための手段です」
「あの声がすぐそこまで聞こえてきたらやばい?」
「その前にバクっといかれますけど」
「じゃあ今なんで会話してるの?」
ちょっと質問攻めになってしまっているが仕方ない。今必要な情報を教えてもらわないと逆に足を引っ張る。
元々でも足を引っ張ってるけど。
「正確な場所確認と確実に仕留めるためでしょうね。今のうちに何か行動を起こさないとこのまま食べられます」
どうする?何ができる?ミシューを探すか?木を登るか?
「アルイ、木は登らないのか?」
「登れますけど、その間にカロフが来る可能性が高いです。木の下で待ち伏せされたらいくらミシューを食べてもどうしようもありません」
なるほど。このまま歩いていればカロフは位置確認や包囲するのに手間がかかるわけか。
「りょう、ミシューの木探せますか?」
「どうだろう……何か特徴ない?」
「私もあまり詳しくないんです。匂いもしませんし、見た目は普通の木なんです」
これかなりピンチじゃないか?頼りのアルイもミシューを探すのは苦労するみたいだ。
「ゥォォォォォオオオオン」
やばい。少し近づいてきたぞ。まだ大丈夫かもしれないが焦りがでる。早く見つけないと……!
あ!ミシューには少し分かりづらいかもしれないが特徴がある!
どこだ、どこだ!頼むぜ、時間がないんだ!
「あった!」
ミシューを見つけて走る!
時間がないからこのままタックルで木を揺らす!
ガサガサと音を鳴らすミシューの木。
葉っぱが散って落ちていく。その中でミシューが落ちているか探す。
よし!2つあった!
「はい、アルイ!」
アルイにミシューを軽く投げて渡す。アルイはそれを上手く受け取れたようだ。
俺はミシューを口の中に入れる。
うん!味が無い!
アルイもミシューを口に入れる。
あの誰かに見られているような不快感は消え去った。カロフが見失ったのだろう。
「な、なんでミシューの木が分かったんですか?」
カロフについて詳しく教えてもらったし、これはお返しだと思って理由を話す。
「この木は真ん中辺りがツルツルになっているだろ?」
「そ、それだけ?」
「あぁ、これはトロベーカが突進した跡なんだ。理由は分からないけど、トロベーカはミシューの木が分かる」
「きっとカロフに襲われるのは1度や2度じゃないから、跡ができたんだよ。」
ミシューの跡とそれができた考察を混ぜて説明する。アルイも納得した様子だ。
「トロベーカが人を襲う理由はミシューを持っているからだったのですね。カロフに襲われていたのなら必死だったのも分かります」
言われて気が付いた。
そうか、山から帰る時にいたトロベーカはカロフに狙われていたからミシューを持ってる俺に突進をしてきた。
なるほど。辻褄が合う。
「いつもより頭が冴えるから新たな発見がありました。パーティーの効果は絶大ですね」
「それを言うなら俺もだよ。この暗闇の中でもミシューの木を探せたのは視力が良くなったからだ」
パーティーの効果を報告し合う。
でも、このパーティー効果は相手の力が分けられる訳だから、なんだかお互いを褒めているみたいだな。
これもまた、信頼関係を築ける要素の1つという事か?
なんか、パーティーって人と人を仲良くさせるためにできたのかな?
ん?そもそもパーティーってどうやってできたんだ?もしかして、魔法?
うーん、考えても分かんないな!国に行けたら調べてみよう。
アルイがカロフの情報を、俺がミシューの情報を知っていた事で回避できた。
今回はそれでいいんじゃないかな?
あー、でもまだまだ国に着かなそうだ。
「大丈夫でしたか? カロフに狙われていたみたいですが……」
誰だ?異世界語……この世界の住人か?
「大丈夫ですよりょう。むしろありがたい事です。今日はベッドで眠れそうです」
「彼らはサフェダウンと言います」




