20.パーティー!
村の外に出る……
異世界語を話せるようになったからもう人に対しては怖くはない。
だけど、怖いのは道中の魔物だ。
フェダウンみたいな奴には出会いたくない。
他にもあんなヤバイ奴が何匹もいたらと考えると身の毛もよだつ。
「そういえば、フェダウンって群れを作って行動するんですよ。あんなにでかいから囲まれると危ないんです」
あんなヤバイ奴が群れを作るとか意味不明だわちくしょうめ!
この絶望感を元の世界で例えるとライオンみたいに猛獣が群れを作ってる感じ。
「……アルイさんはフェダウンに詳しいね。もしかしてあの時以外でも戦った事あるの?」
フェダウンを説明するアルイさんにちょっとした疑問を投げかける。
「うん。何度かありますよ」
質問に答えた後アルイさんは不機嫌そうな顔をする。
な、何か失礼な事言ったかな?
「その、アルイ『さん』って言うのやめません?」
「え?」
「『さん』って言い合うのやめません? 私もりょうって呼びますから」
呼び捨て。ただ「さん」が無くなっただけでぐっと距離は近くに感じる。
確かに「さん」があるとちょっと距離感を感じるけど……
今まで「さん」付けて呼んでたから、ちょっと照れが……
「ちょっと……なんと言うか違和感が……ね?」
言い訳をする。そして同意を求める。
ダメだ!顔に明らかに「呼んで」って出ている!
「んー、じゃあ、パーティーを組みましょう!」
え?今はパーティーを組んでない判定なの?というかパーティーを組むって何?
「パーティーを組むと、強い信頼関係を築けるって聞きました。パーティーを組む前は息が合わなかったのに、パーティーを組んだら阿吽の呼吸を作れるようになれるんだとか」
なんだそりゃ。おまじない的な?
「私も山に狩りに行く時にパーティーを組んだ事があったんですが……君1人で大丈夫だーって言われちゃって……」
あぁ、うん。想像つくわ。仲間を置いて行く様を。
「それで、パーティーを組むには条件があります。」
「1つは、対等な立場である事。『さん』とか、『様』みたいな格差はダメ」
ピンポイント……!
「アルイさ……」
やばい目付きが変わった!
「アルイ……こ、これでい、いいの?」
今顔が赤くなってる。絶対顔が赤くなってる。
うあぁ、恥ずかしい……
「うん! りょう、これでいいのです!」
アルイさ……アルイは全然照れてない。俺はめちゃくちゃ照れてるのに。
「次に2つ目、手を繋いで円を作り、『パーティー』と言います」
「今2人だけど、どうやって円を?」
「うーん、両手で繋げば大丈夫じゃないですか?」
手を繋ぐだけでも緊張するのに、両手繋がないといけない。しかも両手繋いだら正面に向き合っちゃうじゃんか!
アルイが俺の手を取る。
うおお、女子の手!
柔らかい!うわぁぁ、心臓がうるさくなってきた!
「せーの」
アルイが息を吸う。
高鳴る気持ちを抑え、タイミングを合わせて合言葉を言う。
「パーティー!」
「パーティー!」
うおお、おおおおお?
すっげえ!目がクリアになった!
今まで見えなかった部分がはっきりと見えて目の視力が上がった感じがする。
「わぁ、なんだか、頭がスーッと冴えてる感じがします」
アルイも何かしら変化があったようだ。
「俺も、視界が今までよりもはっきりとしているよ」
「これがパーティーの効果なんですね。他の人と能力が同じくらいとか、差がありすぎると効果がないって言われてましたが、ここまでなんて」
前のパーティーでは、効果が無かったって事か?それじゃあ俺と相性が良かったって事?
何か嬉しいな。
「パーティーを解散したい時はどうするの?」
「あ、はい、パーティーを解散する時は何も必要ありません」
「一定の距離を離れると勝手にパーティーは解けます」
「じゃあ、できるだけ離れないようにしないといけないんだな」
「そうですね。あまり1人で行動しないようにしましょう」
距離を離れない限りこの効果が残り続ける……
なるほど、だから信頼関係が結びやすくなるのか。
ある程度行動して分かった事は俺は身体能力が上がったという事だ。
耳も良くなっていたり、走る速さが上がっていたり、力が強くなっていたり。
アルイは思考能力が上がったらしい。今まで戦闘は力任せだったらしいけど、これからは弱点とか考えながら戦うようにしようって言ってた。
アルイに思考能力が付いたら俺要らないんじゃ……
「アルイ、城ってどのくらい遠いの?」
「………………1日くらい?」
「もしかして、よく調べもしないで行ったの?」
「…………………………」
……1日以内に着いたらいいなぁ




