第6章『呪う者、呪われる者』第1話~魔獣ルゼルキウス①~
お待たせしました。
ヴィーチェ&リンネ対魔獣化した魔族ですが…まだ1度も呼ばれてませんがルゼルキウスという名前の高位魔族です!
地を駆けるリンネ、空を舞うヴィーチェは魔獣が無作為に放つ『衝撃波』を避けつつ時に交互に、時に同時に攻撃を繰り出していた…
「チッ…チョコマカト!」
(《剣聖》だけでなく《魔女》もやはり《獣魔化》に変じた魔族と戦いなれている!)
「えぇい!承知の上とはいえ、ここまで無効化されてしまうとはのう!厄介極まりないわい!
【魔力よ・燃ゆる礫と成りて・我が敵を打ち砕け】!」
(クフフ♪コレをただの『火散弾』と思うなかれ…《付与:魔術昇華》!
【『理』よ・更なる魔力を喰らいて・灼熱纏う紅き魔炎・音速の一矢となりて・幾十幾百を超え・幾千の流星とならん】!)
「……初級魔術ダト?フザケテイルノカ?」
(無策で通じないとわかっている初級魔術を使うとも思えないが…警戒はすべき、待て…何だ、あの無数の魔法陣は!
十、二十…まだ増えるだと!?)
ヴィーチェの『無言詠唱』に応えて魔獣を包囲するように上空のあちこちに数えきれない程の魔法陣が高速展開、その圧倒的火力は誰の目にも明らかとなる
「一発や十発では焼け石に水じゃろうが、百を超え千に至る流星の火矢をどこまで耐えきれるか見せてもらおうか!!
《墜火流星弾》!!!」
カッ!
魔法陣が一斉に発光し、次の瞬間には
ドドドドドドドドドッ!!!!!
一斉に紅蓮の矢が魔獣目掛けて放たれ着弾と同時にそれぞれが内包した爆炎の魔力を解放し撒き散らしていく
「………!!グッ!?ガァアアアアアア!!?」
(馬鹿な!?無効化を一瞬で突破された!?)
魔獣に降り注いだおびただしい数の紅蓮の矢は一瞬で高位魔族が持つ魔術無効化が可能な限界量を突破させ、確実なダメージを与える事に成功する
「グ………ガ…ッ!」
(《翼の魔女》め…リンネ、クルツの手で一度は瀕死まで追い込まれたというのにコレほどの実力を持つのか!?)
一瞬の硬直、それは驚愕か自己再生の予備動作なのか?
ただ、一つ言えるのは《魔女》の相棒はその隙を逃す三流ではないということだけである
「【身を分かち・虚う鋼・刹那の真実を以て・剣の理を此処に示さん】!」
《紫電》を纏い縦横無尽に飛び交うリンネが突如一人から二人、二人から四人、四人から八人に増えて魔獣の周囲を高速を超える速度で地を走り空を駆ける
「《一刀繚乱・陽炎交差》!」
超高速で動き回る八人のリンネが更に加速。
八人が更に無数の残像を伴い振り抜いた《紫電》を纏う《宗近》の斬撃が巨獣の身体を次々と切り裂くと刹那の静寂の後、血飛沫が一斉に数十の傷痕から噴き出していく!
「ッッ!!?グォアアァァァァァォ!?」
(《剣聖》か!?おのれ!おのれ!おのれぇぇぇ!!)
「手応えあり!このまま攻めます!」
(体躯がありすぎて、致命傷にはなりませんか!
さて、《陽炎》で駄目なら…後は《影斬り》と《歪断ち》、それに《灰塵》ですか……
《影斬り》はリーチ不足で首を一太刀で切り落とせないし…《歪断ち》ならあの巨躯でも両断できるだろうけど……発動するまで時間がかかる、更には残っている気からして使えば間違いなく《紫電》が維持できないでしょうね。
それに、魔力切れが近い今のヴェル殿一人で時間が稼げるかどうか……)
(っ馬鹿者めが!何を悩んでおる!
今、魔獣をどうにかせねば城に繋がる唯一の《転移門》を壊されかねんじゃろうが!!
我等が今出来る最善を尽くさぬか!!)
(ッ…ヴェル殿の声!?なぜ頭に直接響いて……
あっ!『思考共有魔法』ですか!?油断も隙も無いなぁ…ていうか、いつの間に仕掛けてたんですか…)
「【戒めの楔・刻印の檻を以て・断罪の領域を築かん】!リンネ、巻き込まれる前に下がれ!」
(城内ではぐれたら困るじゃろうから事前に仕掛けておいただけじゃ!上手く使えばこのように相手に悟られずに作戦が伝えられるではないか!)
「…承知!」
(上手く使えば、でしょう?全く…まぁそれは置いておくとして…)
「クッ!?チョウシニノルナァァァ!!!」
リンネがすかさず飛び退くと魔術の詠唱を終えたヴィーチェが翼を大きく広げて術式を魔獣目掛けて放つべく両手を突き出す
「魔族よ!お主に動かれると大事なモノまで被害を被るのでな、しばし大人しくしておるがよいわ!!
【魔刻鍵縛鎖牢】!」
(うむ!まずはこやつを仕留めねばラピス達を連れて帰ることも出来ぬ!)
発動宣言と同時に巨獣の足全てと胴体に向けて大地から生じた百を軽く超える数の黒い鎖が絡み付くと、押さえ付けるように重力結界が更に巨獣を地面に縛り付ける
「ヌ…グ……ガァァァァァッッ!?」
(何だこれは………!?
《魔女》め…疲弊しているからこそ大技を温存していると思っていたけど……先程に続いて大規模な術を連続で使ってくるとは想定外だ!
仕方ない、一部の生命力を魔力に変換して抵抗力を強化!力づくで壊す!!)
「はぁ…はぁ………予想外にも程があるわい、まったく……じゃが、これなら動けまい!…ぬ?」
(リンネ!何かがこちらに近づいておる、1つはあきらかに人外の気配じゃ!しかも速い…気を抜くなよ!)
「……後少しだけ時を稼いで下さい、ヴェル殿!」
(はい、私も気配を感じました。しかし…ヴェル殿が知らない気配なら敵側の増援でしょうか?
だとしたら《歪断ち》では発動するまでの時間が足りません!気は進みませんが《灰塵》を使います!)
オオォォォォォォォッッ!!!!
ミシ…
動きを封じられた巨獣の身体が突然、黒い気?に包まれていくと同時に鎖と結界から逃れるべく激しく暴れ始めると徐々に鎖と重力の力場が軋む音が響き始める
「……嘘じゃろ?この魔術は妾の使える結界術の中でも対高位魔族用に構築した秘奥なのじゃがなぁ……まだ改良が必要かの?」
(ふむ、防御無効耐性無視の《灰塵》……か。
仕方ない、その選択がベストじゃろうな。
ではそれまで妾の結界で抑え込まねばならぬが…うぅむ…
ヤバイのぉ。相手が巨大すぎるゆえに、この術式を使わざるしかなかったが…うむ。
まぁ、ぶっちゃけて言うと?
魔力が足りぬ!!
発動した際に残存魔力の殆ど持ってかれたのには驚いたぞ!?
開発したのは妾自身じゃが、魔力消費量を考慮するのをド忘れしておったわ!!
この手の拘束・封印系は発動してからも術を維持している限り魔力を消費し続けるんじゃが……うむ。いかに完全無欠な妾でも…
(ブフッ!?)
…リンネ?今、お主…笑いおったな!?
(…………)
まだ『思考共有』は繋がっておるのは知っとるじゃろうが!?覚えておれよ!後でトーマにその貧相な胸を揉みしだかせちゃるからの!!)
「グォアアアアア!!!」
(くっ!更に強化したのに、まだ砕けないのか!?
この檻…厄介だな!)
「【空を裂き・地を砕くは生命燃ゆる赤より朱き焔・灼熱より来たりて・業火へと至れ】…《一刀一殺・灰塵之太刀》!」
《宗近》の刀身が煌々と輝く朱い焔に包まれる、しかしリンネの唇が続きの詠唱を紡ぎだす
「…………リンネがあの若さで《神将》に選定された理由の1つは先々代の《剣聖》を真っ向から実力で倒したからじゃが…人外の絶技を修めてる危険人物を監視する為でもあるらしく…その一つであるアレは化け物を葬る為の剣技そのものじゃ。
まぁ、反動があるので再使用には時間がかかるからのぉ…その度に手厚く看護せねばなぁ?………ククク♪」
「……ッ!…【《灰塵》よ・《煉獄王》が座せし・更なる高みへの扉を開き・我が魂に応え・終焉をもたらす力を此処に示せ】!
《終焉之煌炎》!」
(…………ちょっとぉぉぉ!?気が散るから悪ふざけはやめてくださいませんか!?
(はん!妾は本気じゃぞ?)
(……ヴェ、ヴェル殿?)
(そして、その後に妾ので口直しをさせるのじゃ!
その反応を見せた上で格の違いをリンネには思い知らせてやろう)
「私の尊厳を二重粉砕するんですか!?」
「んなもん必要かのぉ?」
(いかん、気を抜いたら砕けそうじゃ!!
あ……ていうか拘束の鎖が砕け始めておる。くぅ…魔力さえあれば…ぐぬぬ)
ピシッ…バキッ
ピシピシ…
1本、また1本と鎖が次々と砕け始めていく
「オオオオオオオッ!!」
(アレはまずい……!)
バキバキバキバキッ!!
「「!!!」」
(…破られる!?リンネ!間に合うか!?)
(問題ありません!《紫電》の速力強化が完全に尽きる前に何とか当てて見せますよ!!)
パキィィィィィン!!
(砕けた!だが…間に合わん!くっ…我等が王よ、役目を果たせぬまま消え行く事をどうか……)
「はぁぁぁぁぁぁ!!焼き…尽くせぇぇぇ!!」
ゴォォォォォォォ!!
振り降ろすと同時に刀身から放たれる劫炎の塊が魔獣を包み込まんとする勢いで迫る
ヒュンッ!
だが、直後に淡い光を放った《転移門》から現れた影が魔獣の前、空中にて立ち塞がる
「ぬっ!?」
(なんじゃ!?あやつ…)
「なっ!?」
(《転移門》を通ってきた!増援ですかッ!)
「懐かしい匂いだと思って来てみればこの魔力……まさか《煉獄王》?
ならば…【四界を統べし覇者の魂宿りし・魔神の器たる汝に願い奉る・絶望を喰らいて嘆きを糧に・滅びの力を活力に転じよ】!」
カッ!
漆黒の鎧が淡い光を放つ瞬間
リンネとヴィーチェ、魔獣の視界には一面を埋め尽くす炎が存在する命を余すことなく喰らい尽くさんと紅く輝く姿を見せ付ける




