外伝・第四話~ヴィーチェ=エルトリンデ編『偽りの《守護者》③』~
外伝~ヴィーチェ編第三話~です。
ヴィーチェ編連続投稿となりましたが、次で終わりますのでもう少々お付き合いください。
なお、今回長めなので次回は短めの予定となります。
その後に第6章に突入となりますのでご了承ください。
「だって、ヴェルちゃん。
実戦経験、ちゃんと積んでるじゃない?」
「!?……な、何の事じゃ?」
実戦、じゃと?
この口振りはまさか…知っておるのか?
いや、しかし…偽装は完璧なはずじゃし…ミュー達にも口止めはしっかりと…
「…あぁ、ヴィーチェが冒険者組合に登録して小遣い稼ぎしていた件か」
……なぬ!?
「何故バレとるんじゃぁぁぁ!?」
妾、本日一番の叫びじゃった…。
「ウルから聞いたわよ?」
あっさりと密告者の名前を吐くエリス様は可愛く首を傾げる
…年に見合わぬ外見(娘はある部分だけ年齢不相応のモノを持っておる)なのは流石、親子としか言えぬが…それはさておいて、とりあえずは…
「ウルリカァァァァァァァァァァァァ!!!」
妾、本日二度目にして一度目を超える魂の叫び…。
「あ~、思い出した思い出した!
《狂乱の暴風姫》だったわよね!
新米の冒険者達の中でも新進気鋭の有望株で瞬く間に名前が知れ渡ってるって聞いたわ♪
それに、大小様々な団体から誘われてるんだって?流石はエリスの秘蔵っ子!大したものね♪」
!?
「なぜ《二つ名》までバレとるんじゃああああ!!?」
「娘から聞いたわ♪」
「ミュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?」
妾、三度目どころか四度目の……ていうか
お前もかぁぁぁぁぁ!?
…いかん、頭が痛くなってきおったわ…
おのれ!あっさりと告げ口しおってからに、二人とも覚えておれよ!?
「まぁ、我が愛娘達の事は許してやってくれヴィーチェ。
人族の街に行った事については別に怒っている訳じゃないんだ」
族長…アンリエッタ様は苦笑いしつつ、そう言うとエリス様に視線を向ける
「ええ、ただ…夫を喪ったあの事件…」
「………」
『セーネスの惨劇』…か、忘れるものか!
人族と有翼種族による完全な共生を試みた最中に起こった人族からの一方的な殺戮…義父上を目の前で殺され、数多くの同胞を失い、更には妾自身の無力さを思い知らされた一件でもあるのじゃからな
「あの事件……他の族長達も未だに調べてくれてたんだけどね…。
まだ真偽は定かではないけど魔族が関わってるという噂があるのよ」
「……む」
確かにあの事件には怪しすぎる点は多くあるが…
魔族が絡んでいた?
なにゆえじゃ?
魔族と人族が結託?
いや、あの時の村人達の反応も思い返せばおかしい部分はあった…。
もしも操られておったとしたなら…アズマール様の説得に耳を貸さず無抵抗の相手に対しても僅かな躊躇いが無かったのも頷ける。
しかし…だとしたら狙いは何じゃ?
村一つ…百人足らずとはいえ、一度に術を施して思うままに操れる奴が魔族の中にもそうそういるとは思えん…魔族の殆どにそのような芸当が出来るなら人族は魔族の手下も同然じゃからな。
それに…力量にもよるが我ら有翼種族のたかが一部族をどうにかするために魔族が搦め手を使ってまで、ちょっかいをしてくるとも思えぬが…
「…黒幕が誰であれ、私達の可愛い跡取りが命を脅かされた上に『二強』の一人を欠く結果となってしまった…。
勿論、元凶が誰かわかったなら報復はするわよ?
ただ…その為にも、エリスには自由に動ける状態になってもらいたいの。
そして、その為に《魔女》の座を信用できる誰かに渡さねばならないの、これは未だ見えざる敵の全てに対する囮も兼ねてるわ。だから…」
囮…なるほど、のぅ
「だから、妾…なのじゃな?」
「「そういうこと♪」」
綺麗にハモりおったのぉ…
じゃが、エリス様を自由にさせている間に再びミューレが狙われたら妾とウルリカで守らねばならぬ
ならば力試しによる部族間の駆け引きも兼ねて《二強》の肩書きはやはり必要になるか…
「委細承知じゃ!部族最強の座!妾が纏めて貰ってみせよう!!」
護ってやるとも!
ミューレも!
アンリエッタ様も!
ウルリカも!
…ついでにエリス様、は大丈夫じゃろうけども…うむ。
「…話は終わったかな?」
「ぬ?…師匠か」
「あら、レスター。良いタイミングね」
「昨日、話したとおりヴィーチェと私達が不在の間なんだけど…」
テントに顔を覗かせたのは金髪碧眼の青年で、妾とウルリカに格闘術を教えている…名をリシャール=ヴェレス=レスターク。
聖都レスタークの第四王子…らしいが、権力争いが嫌で国から逃げ出したらしい。
…昔こやつに助けられた後、何故かここに住み着いたのじゃが…なんやかんかで格闘術の手解きをウルリカ共々、受けることになり今に至るのじゃ。
ちなみに『レスター』は本人がレスタークの名を呼ばれるのを嫌がるため一字だけ取って呼び続けていたらそのまま定着してしまい誰も名前ですら呼ばなくなったので、本人はもう名前で呼んでもらうのを諦めたらしい。
師匠…レスターは先天的な体質で魔力と気を生成できる量が標準値より少なかったそうじゃが、他国交流のためレスターク城に訪れていたどこかの一行の一人から手解きを受け少ないモノ同士を更に極少量ずつ掛け合わせる事で結果的に爆発的な強さを得ることが出来たらしい。
余談じゃが、後にその技法はリンネの奥の手の一つ《紫電》に似て非なるモノであると知ることとなる。
何はともあれ、妾は更に師匠に指導を受けた後に部族最強を決める《力試し》にて術者としても戦士としても他の部族代表を蹴散らして《二強》の称号を妾一人で独占することに成功したのじゃった。
あ、文句をつけてきた輩には妾自慢の『雷槍』をお見舞いするという丁重な扱いをさせてもらったので問題はないのじゃ。
ちなみに翌年からの《力試し》では毎回、妾対参加者全員という方式になったが半年ぐらいで術式を完成させた独自術式の《雷槍放電撃》で最速の決着を着けたら三年目以降は挑戦者が激減したのは残念じゃったのぉ…。




