第5章『父娘、救出・後編』第7話~冬麻VSユーリ、決着~
(レーヴェ!)
〔はい?〕
(《咆哮》の対象を俺だけにしてくれ!出来るか!?)
〔!……可能です…修正完了、どうぞ!〕
『安綱』がユーリに届く前に、冬麻が閃いたのは強制停止の効果を持つ自らに宿った《神器》の能力
、己自身に宿る力を自らに放つ…という普通ならば考える機会はそうそう無いであろう《咆哮》の暴発だった。
咄嗟の判断で間に合うかどうかの保証など当然無いがそれでも…
「《咆哮》ッ!!」
(今はこれしか無い!迷うな、信じろ!俺達の力を!)
結界内に響き渡る冬麻の《咆哮》、それはいちかばちかの勝負に挑んだ心からの叫び
そして……
「…………ふぅ」
〔…………見事です、トウマさん〕
(超絶ギリギリだったけど、な…《楯》だと完全に間に合わなかった…《咆哮》だからこそ間に合ったんだ。…さんきゅ、レーヴェ)
〔ふふ…むず痒いですね、こちらこそ感謝を…我が《保持者》殿〕
(元聖天使であるリュミエールを知ってるのは私と彼女を含めた『協力者』、『敵対者』達、あとは…かなり昔に3人の《神器契約者》が立ち上げた『聖鍵守護者』と『魔鍵守護者』…ぐらいですかね?とはいえ《黒白》が結成されたのは三千年ぐらい……?もうちょい昔だったでしょうか?
まぁ詳細はともかく今も残っているかどうかもわからない派閥ですからねぇ…消去法からしておそらく、この人は『協力者』だと思いますが……それにしても全力を出さずに未熟とはいえ規格外のトウマさんを圧倒…逸材を見つけましたね、リュミエール)
「…………どういうつもり?私は敵なのに、殺さないの?」
冬麻の刀は見事、ユーリの首…の薄皮一枚を斬るに留めていた
「知ってるよ。散々ボコられたんだからな……それと勘違いしないでくれ、殺すつもりなんか最初から無いっつーの。《安綱》、戻ってくれ……ふぅ」
武器を《送還》すると同時に地面へ座り込む冬麻に対しユーリは
「……龍帝の継承者、名を聴かせて」
静かに、ただ静かな感情を宿す『黒い瞳』で冬麻を見つめていた
「九条…冬麻、だ。こっちだとトウマ=クジョウって名乗り方が正しいんだったか?」
(…ダメだな。《咆哮》の暴発の反動のせいか身体が動かない、強がるのが精一杯だな…しかも気の制御もろくに出来なくなってる…《身体強化》が解除されてて再発動が出来んし、これはマズイなぁ)
虚勢を張る冬麻にユーリは静かに佇みながら口を開く
「トウマ…クジョウ。もう1つ聞く」
「…なんだよ?」
(やっぱり。眼が『金色』じゃなく『黒い』…色が変わってる、レーヴェ…わかるか?)
〔私は途中からだったので確証が持てませんが、種族特有の特異技能による身体への影響の結果か《魔眼》系統に属する《神器》の起動状態の有無ではないかと〕
(ま、魔眼…何か怖そうだな…)
「貴方の……母の名前はアリサ?」
さっきまで本気で(冬麻だけだが)戦っていた相手の口から飛び出したのは既に故人となった実母の名前
「は!?な…んで、お前がその名前を…」
〔…………〕
《異世界》で聞く筈の無い名前を耳にした冬麻は完全に虚を突かれた形となった
「その反応は正解、ということね…。
なら、リュミエールはちゃんと約束を守っていた以上…私も約束を守らなければいけない」
(精神体…本体の美冬に貴女の申し出を受けると伝えて)
〔…感謝します。《槍》最強の一角に名を連ねる貴女になら安心して義息子を任せられます。
これで、私の本体も後顧の憂いなく戦えるでしょう〕
「約束?いったい、なんの…」
(リュミエール…やっぱり聞き間違いじゃなかった。美冬さんとは知り合い同士なのか?それよりもなんで母さんの名前をこの世界の住人が知ってるんだ…訳がわからん)
〔…………〕
(いずれ、リュミエールから説明はあると思いますが万一の時は私が言うんですかね…?)
「その問いにはまだ答えられない。
…少し待ってて」
(質問…今の美冬一人で他の聖天使達に勝てるの?)
〔難しい、というか無理です。手持ちの《神器》を使い捨てるつもりで時間稼ぎをするのが精一杯でしょうね。本体が展開した《異空間》は解除したのですが……すぐさま『聖天使』の《異空間》で囚われたので術者をどうにかしない限り脱出も難しいかと…〕
(……そう。空間破壊するにしても空間解析と術式構築を組み立てる暇は無いだろうし、此方から救助に向かわないといけない、か……
やる事が増えたけど…いずれ必要な人材だったから探す手間は変わらない。
美冬にはくれぐれも時間を稼ぐように伝えて)
〔有り難うございます。ご面倒をお掛けしますが、お願い出来ますか?〕
(最善は尽くすけど、時間はかかる…最低でも5年は時間を稼いで)
〔………〕
(………)
〔…………〕
(…………?)
〔………………〕
(………………どうしたの?)
〔……さ、3年なら何とか〕←冷や汗
(うん。予想より危機的状況って事は理解した)
〔す、すみません…〕
(謝罪は不用。でも義息子は転移の余波が丸わかりだったけど実娘の居場所は私には解らないから、そっちは運任せになる)
〔……ですよね。まぁ、千鶴ちゃんなら大丈夫でしょう…うん。あのコの義兄探知機は本物ですから〕
(本物?意味が解らない、なにそれ?)
〔ツッコミは受け付けません!……では、私はこれで。分散した精神体が一人でも多く戻れば少しは役に立ちますから
ユーリさん…どうかみんなを…〕
(ん…わかってる。任せて。やれるだけはやってみるから)




