第5章『父娘、救出・後編』第6話~冬麻VSユーリ~②
(さて、どうしたものやら…と、俺だけで考えてもどうしようもないなら年長者の知恵を借りるのがベストな選択だよな?ってわけで…レーヴェ!おーい、レーヴェ!)
……
〔はいはーい♪ようやく呼んでくれましたね?もぉ、トーマさんってば焦らすのが好きなんですかね♪
…………
………………
って、誰が年寄りですかぁ!?まだピチピチですよ!?触ってみます!?触ってみますか!?まぁ、精神体だから触れませんけどねぇ!?〕
(言ってないしピチピチでもないよな!?)
〔…………〕
(…ぁ)
〔ガーン!?酷いですトーマさん!泣きますよ!叫びますよ!?うわーーん!!!〕
(ゴメン!今のは俺が悪かった!けど、頼むから今は現実世界に集中させて!?)
〔うわーーん!!トーマさんのあほー!ばかー!きちくー!〕
(おい!最後、何て言った!?)
「…格上を目前にして呆けるとは…余裕があるというのなら少々本気で遊んであげましょうか?…ふっ!」
精神体である龍帝と言葉を交わしている刹那の隙を突かれ、再びユーリがまるで瞬間移動さながらの如く冬麻の眼前に現れて拳と蹴りを次々と放つ
「ッ!?」
(俺の間抜け!気を抜くとどうなるか身をもって味わっただろうが!レーヴェ!今は真面目に行くぞ!)
〔ひっく……ひっく…………。
ふむ、心外ですね。私はいつも真剣のつもりですが…まぁ、良いでしょう。では、以前お約束した冬麻さんが継承した魔法の封印を1つ解放するとしましょうか?…まぁ報告するのをすっかり忘れてたんですけどね!
この人…対人戦闘に慣れてるみたいですし?使える手札は多い方が良いでしょう?〕
(色々突っ込みたい発言が混ざってたが、まぁいい…頼む!)
ユーリの攻撃を何とか防ぐが一撃当たる度に目に見えて削られていく気に冷や汗が出るが、幸いにも貯蔵量は豊富。ゆえに削られる側からすぐに補填していくがこれでは追い詰められる一方であるのも冬麻は理解していた
「…じり貧だな、つーか…このままじゃ俺の方が負けるな」
〔ふーむ…強いですね、あの女。トーマさんの周りには並外れた女性ばかり集まってますねぇ…これが噂に聞くカカァ天下って奴ですか?〕
(噂の出所を追求したいが、取り合えず突っ込む。使うタイミングも意味も何もかもが違う!それは既婚者に対して使われる言葉だ!)
〔…なるほど、勉強になります。で、誰とならカカァ天下になるのですか?〕
(その話題続けるのかよ!?真面目にやれ、耳年増!!)
冬麻の罵倒も虚しくレーヴェから伝わるのは喜びの感情…
(って、なにコレ?まさか、喜んでんの!?)
〔うふふ…不意打ちの誉め言葉ありがとうございます♪〕
(誉めてない!欠片も誉めてないから!)
冬麻は別の意味で焦るも、気による《身体強化》の重ね掛けを再発動し防御を強固しつつ《感覚強化》で聴力と視力を活性化させ不意打ちに備えて僅かな気配をも逃さない体勢を整えると同時に空間に溶け込むようにユーリの声が響き渡っていく…。
「……《我は虚也》」
(!?)
〔…おや?〕
冬麻とレーヴェが同時に違和感を抱きユーリを注視するが…声に続いて姿までが揺らぎ始め霞がかっていく…
(なんだ?気配が薄くなっていく!?)
言葉にしづらい感覚が『油断するな』と警鐘を鳴らし始めるものの焦りを募らせる冬麻には打てる手はなく…
〔っ…回避が間に合いません!《剛体法》を!〕
珍しく焦りを含ませたレーヴェの声が聞こえると同時に危険を感じ取った冬麻は無意識に気の放出防御による衝撃緩和を瞬間的に目一杯まであげていた
「《刹那の一閃・幾重にも煌めけ・神をも噛み砕く牙を放て》!」
そして、ユーリの声に遅れてやってきた自身の身体へ響く衝撃の連続に
「ッ!?…ぐっ……がはっ!!」
全方位に対し気の徹底防御を重視していたため、今回も直撃は避けたがそれでも一瞬で四人のユーリから放たれたそれぞれの拳と蹴りの連撃は不完全とはいえ冬麻の《剛体法》を貫き身体に届かせていた。
当然、冬麻の口からは苦悶の声が吐き出される
「…ってぇ…ッ…今の、何だ?
分身、か?まさか…異世界に来て忍者に会えるとは思わなかったぜ…」
(マジで効いたわコレ…消えた瞬間からのコンマ刻みの連続攻撃…こりゃキツいな!ていうか《剛体法》って何だ!?)
〔え?何って!?さっきまでトーマさんが使った直撃を逸らすのに使ってた防御系戦技ですけど……ていうか、今も使ったじゃないですか?〕
(今のが《剛体法》…なるほど)
〔……なるほどって、名称知らなかったんですか…いつの間にか使えてたから驚いていたんですけどねぇ…ちなみにいつ頃から使えるようになったんですか?〕
(ついさっき。あの女の防御の仕方を真似てみたんだが…まだ上手くいかないな)
〔…………ナンデスト?〕
「ふふ…またも無意識ながらも《剛体法》を使いましたか…さぁ、続けますよ?加減はしますから是非とも修得してくださいね?…《我は虚也》…」
「っ……させるか!《砲弾》!来い!『安綱』!」
(ふざけるな!?アレを連発でくらったら軽く天に召されるわ!?)
再び気配が薄くなるユーリ目掛けて《砲弾》で威嚇射撃、続けて接近を仕掛ける為に『童子切安綱』を召還し《身体強化》状態で踏み込み刀を振るう
…ちなみに戦闘開始時直後に『安綱』は蹴り飛ばされていたのだが、念じると手元に召還出来るのに気付くまで時間がかかったのはレーヴェには秘密である
「はぁぁぁ!」
「ふふ、危険を承知で私に接近を挑みますか…勇ましく正しい判断です、ですが」
〔!…冬麻さん《咆哮》を!〕
(…!)
迎撃体制に入るユーリに突貫するするもレーヴェの言葉に《神器》・《龍帝の遺産》の持つ能力を使うことを忘れていた冬麻は迷わずに使うことを選ぶ
「悪く思うなよ!《咆哮》!!」
「…っ!これは…」
(なっ…身体が動かない!?
なるほど、これがアルベルトが言っていた『動けなくなる何か』の正体…となれば間違いなく彼女が渡したのは《龍帝の遺産》!そしてこの拘束は《咆哮》ですか!)
冬麻の叫びにユーリの動きが完全に止まる。実力差を鑑みても効果はほんの一瞬、だが互いの距離を見てもその一瞬こそが決着を着けるには十分過ぎる時間でもあった
「悪いが、貰った!」
(後味が悪くなるが、ここで負けるわけにはいかない!このまま倒す!)
〔トーマさんは律儀ですね~、勝負は非情なんですから躊躇わずにどうぞ!〕
(躊躇うわ!?)
そして、『安綱』を振り降ろす間際
「…なるほど、リュミエールは《魔神》ではなく《龍帝》の《神器》を託したのですね。悲しくはありますが…賢明な判断です」
「!!」
(レーヴェ!今…リュミエール、って言ったよな!?)
〔…言いましたね〕
(んー…はて?《アイシャ》とも言いましたが、人間がなぜ彼女の名前まで知ってるのでしょう?私の名前を知ってるならともかく……)
「…くっ!」
(速度を乗せすぎた!相手は《咆哮》で避けれない以上、俺が止まるしかない!間に合うか!?止まれ!義母さんの名前を知ってる人を斬っちゃダメだ!)
勢いを乗せた刃は咄嗟の判断も間に合わずユーリへとその身を切り裂くべく近付く刀を冬麻はその眼に捉え続けていった…




