第5章『父娘、救出・後編』第5話~冬麻VSユーリ~①
[冬麻/ユーリ視点]
時は少し遡り…
冬麻とユーリの戦場はある意味で人知れず、別の意味で最も目立っていた…。
「『烈破六咬連弾』!!」
懐に飛び込むと同時にユーリが冬麻に気を纏わせた高速の六連撃を浴びせる。
「ッ!が…はっ!?」
(かろうじて見えたけど…反応できねぇ!しかも一撃が鉛の塊みたいな重みがある!あの女みたいに気の放出防御で何とか繋いでるけど……何時まで耐えれるか判らないぞコレ!?)
《変質》したユーリと戦いを始めてまだ10分を過ぎてもいないのに、冬麻は防戦一方に追い込まれていた…。
「ッ……な、めるなぁ!『拡散砲弾』!」
(くそっ…眼がせっかく慣れてきたってのに、速すぎてそれでも殆ど見切れん…それに呼吸するだけでもズキズキするこの痛み具合、もしかして骨にヒビが入ってるか?…やっぱり出し惜しみしてる場合じゃないぞ!なんとしてでも早く倒さないとヤバい!)
ユーリとの戦いの最中で《圧縮砲弾》を使う暇が無く、どうするか悩んだところ…相手が気軽に気の弾を連続で撃ってきたので回避しつつ真似してみたらフツーに出来た事に冬麻は内心驚いていた。
(あれぇ?フツーに出来たぞ?……何でわざわざ圧縮してたんだ俺?あ、威力の加減がわからなかったから……だったっけ?)
単に手頃な量の気を射出するだけの《砲弾》で牽制するも完全に見切られていて無意味だった為……
(取り敢えず当たらなきゃ意味無くね!?)
……というわけで、急遽考案。
狙いをつけなくても有効範囲を広げりゃもしかしたら……?と
(狙いを定めなくても当たるように…あ、散弾銃をイメージしてみよう!取り敢えず小さいのをばら蒔く感じで!)
と、思い付きで考案したのが炸裂する散弾式(気の)砲弾…《拡散砲弾》である。が…
「……『俺』に当てるには『まだ』速度と練度が足りない」
(九条冬麻…歴代《異世界人》の中では間違いなく最上級の潜在能力を秘めてるわね。
《剛体法》に《礫》、それに《礫》?の派生戦技みたいだけど見たことのない技ね…独自改良かしらね?
それにしても、戦技を何度か見せただけで『修得』して使いこなす上に新しく独自の戦技を開発・即座に実戦で使用…教える手間が省けて楽ですね、正直。
流石は元聖天使が隠し持っていた秘蔵たる《神器》を譲渡しただけはあるわね。というか、近くで見ないとわからなかったけどこの子…身体強化を気だけで二段階強化してる。《迅雷》や《剛雷》じゃなく気で気を覆うなんて…その発想も凄いわね)
「………………」
「…っはぁ…はぁ…はぁ…」
(何か…妙な感じがするな、この空間それにあいつ…)
冬麻が決着を急ぐ理由は3つある。
1つ
相手との実力差がありすぎる為、疲弊する前に全力で活路を見いださねばならない。
2つ
現状では、ミューレ・ウルリカ・ヴィーチェ達の援軍が望めない。
そして3つ目…
「なぁ」
「…なに?」
冷や汗を隠しきれない冬麻が涼しげな表情をする敵に問いかける。
「これって、さ?《結界》ってヤツだったりする?」
眼に見えて明らかに一定距離から先が『歪んで』いるのが理解できる。
しかも…
(あの『歪み』のあたりで俺の《砲弾》が弾けた…ってことは、空間の境目みたいなものなんだろうな…で、しかもビクともしないほど硬い。全力の《圧縮砲弾》なら破れるかもしれないが…それでも確実とも言い切れない)
「正解。私の秘蔵の1つ。《不殺の独壇場》よ」
「…………」
(意味が解りにくいが、なんとなくヤバいのはわかった。)




