第5章『父娘、救出・後編』第2話~ヴィーチェとユーリ①~
「《疾風断ち》!」
(【風の刃よ・より鋭く・より薄く・鋼を切り裂く一陣となれ】!)
唱え始めてから、既に二桁にも届いている『力ある言葉』が斬撃の嵐を創り出し身軽に飛び交う少女を狙うが……
「残念、当たりませんよ」
(威力よりも速度を、速度よりも回避しづらい魔術を選択してきてますね…流石は『翼の魔女』。魔眼が無ければ既に…おっと、次が来ますね)
「まだじゃ!もう一発…《疾風断ち》!」
(コレも避けられるのは承知の上!本命はコッチじゃ!【魔力よ・偉大なる空の王の領域にて・幾百の陣を刻み・断罪の印たる・稲妻纏う槍を以て・我に仇なす全ての者に裁きを与えよ】……!)
「次は…雷の広範囲攻撃魔術………しかも、あれは独自術式?あの若さで大した完成度ですね…」
(流石は《魔女》確実に仕留めるつもりですか……仕方無い、手の内を見せずに事を済ませたかったのですが…)
2発目の中級魔術の軌道を『視』て回避したユーリは次に備える為、1度左右の瞳を閉じて心を静めて発動に必要な《魔力》と《気》を集め始める
(…仮初めの身なれど、《契約者》として命じます。我が『瞳』に宿りし《深淵》よ…神をも鎮める力の片鱗を此処に示しなさい!)
「威力の加減はするが《雷槍放電撃》を上回る妾の奥の手の1つ…容易く防げるとは思わぬ事じゃ!…」
集中して高めた魔力と気の全てを瞳に宿した《神器》の解放に費やし、ユーリは閉じた眼を見開き空を睨む。
そして、空には時を同じくしてヴィーチェが発動させた魔術の雷槍がその姿を次々と姿を見せていく
「【神威解放】…《消失する領域》!」
(規模はともかく数が多い…!消しきれるかどうか…!)
「妾の本気…どう凌ぐか見せてもらおう!…《封覇槍天雷閃陣》」
(…気のせいか、違和感を感じる…いや、気のせいではないな…片っ端から、雷槍の術式が消されとる!?信じられぬ…じゃが!今更、後には退けぬ以上押し切るまでじゃ!)
次々と空に出現する術式から放たれる雷の槍だが、術式展開中もしくはやや遅れて射出中に消えていくものの…1本、また1本と完全には対応しきれずに地面に突き刺さると同時に内包された魔力が雷を周囲に爆散させていく
「っ…!何て威力…個人相手に使う魔術じゃないでしょうアレ…どうやら、からかい過ぎましたかね?」
(…魔眼の使用限界も近いし、これは失敗するかもしれませんね…何とかエルトリンデ嬢を味方に加えたかったのですが、もっと早く近づくべきでしたか……あ…コレは避けれ)
ほんの一瞬、ユーリの気が逸れた瞬間…雷槍がユーリの眼の前に着弾しようとしていた
(《分身》とはいえ、痛いのは嫌なのですが…仕方ありませんね)
ユーリは瞬時に諦めると、大人しく瞳を閉じて断罪の雷が自身の命を奪う時を待つべくその場に立ち尽くす。そして…
「貴様…何をしておる?」
その身に届いたのは雷の一撃ではなく、何かを問い掛ける女の声だった。




