第4章『父娘、救出・前編』第14話~奇襲③~
「…ッ!?すまんヴィーチェ!待たせた…って、顔近い!?」
「ぬぉぅ!?」
眼を開いた瞬間、視界に入ったのはやや頬を染めたヴィーチェが迫っていた…という不可解な状態だった………ちなみにヴィーチェの後ろには顔を真っ赤にしたミューレと何処か様子のおかしいウルリカが冬麻をチラチラと見ていた…。
ちなみにリンネは素知らぬ振りをしているがこちらも頬が赤くなっている。
「えへへ♪ヴェル、残念だったね!」
「ぐぬぬぅ…もう少しであったものを~!」
(龍帝殿~!せめてあと2秒!!)
何やら、ヴィーチェが悔しがりウルリカが勝ち誇っているようだが…きっと悪戯の正否で競ったのだろうと、冬麻は追求するのを止めて無かった事にしようと決め込んで辺りを見回す。
「…えと、状況に変化は?」
「と、特には…ですが、相手側に援軍が来てるみたいで…」
「ふん!増援なぞ予想の範囲内じゃ!纏めて妾の魔法で海の藻屑にしてくれるわ!」
「…ヴェル殿、ここは陸地ですが…?」
「………」
「………」
リンネのツッコミにヴィーチェが黙り込むが、ウルリカとミューレは斬り込む下準備を続行…触らぬ神に祟り無し、と言わんばかりである
「…リンネよ」
「はい?」
ゆっくりとヴィーチェはリンネに振り替える…その様を見ていた冬麻はふと脳裏にある言葉がよぎったのを自然と感じていた…。
(………やっちゃったな、リンネ)
冬麻の勘はその数秒後に現実となり、開戦の火蓋となるのだった………
「予定変更じゃ!お主が先手となり、斬り込めぃ!!『浮遊』!」
「え?ちょ、ヴェル殿ぉ!?」
抗議の声も虚しく、リンネの身体が急に浮かび出しゆっくりとヴィーチェの目の前まで移動すると………
「あの…?ヴェル殿…まさか?いや、あの…じょ、冗談………ですよね?」
「安心するが良い…『直撃』はさせぬから…上手く避けるのじゃぞ?」
「………………え」
リンネとヴィーチェの視線が交わった瞬間、喜劇は起きる
「まずは先手必勝じゃ!『特攻人間砲弾』!んでもって、追加じゃ!!『暴爆風連弾』!!」
「あああああ!?ヴェ、ヴェル殿ぉぉぉぉぉぉ!!!?私にも当たりそうなんですけどぉぉぉぉ!!?」
真っ先に撃ち込まれた人間砲弾を撃墜するかのように不規則に放たれる魔力の衝撃弾は荒れ狂う風を内包し、着弾と同時に暴風を撒き散らす………敵とはいえ、大の男達が軽々と宙に舞う様を見せ付けられた冬麻とミューレは思わず呟かずには居られなかった………
「…最初は状態異常魔法じゃなかったっけ?」
「…その筈、でしたかと」
「いいんじゃない?不意は突けたんだし?あっちの人達、凄い驚いてるよ?」
「………そりゃ、いきなり人間が猛スピードで突っ込んできた後から魔法で砲撃の雨を浴びせられたら誰だって驚くわな…」
「あのぅ…冬麻さん?転移門はリンネさんが確保するんでしたよね?」
「ん?あぁ、場所を知ってるのはリンネだけだから………………ん?あれ?」
「ヴェルが真っ先に突入させちゃってるね!」
ウルリカの言葉に二人はヴィーチェに向かって叫びながらもリンネを助ける為に戦場に突入し始める。
「ヴィーチェェェェェ!!?ちょっと待ってヴィーチェェェェェ!?ちょっ!撃つの止めろって!?」
「自分で建てた作戦を自分から台無しにしてどうするのヴェル!?と、とにかくリンネさんを助けないと!…ウル!行きましょう!!」
「合点だ♪ミューの敵は皆殺しだ~♪」
「ウル!?殺しちゃダメだからね!?」
一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図?に変わった戦場に響き渡るのは………
「踊れ踊れぃ♪そらそらぁ!あーはっはっは♪」
(妾は何をやっておるのじゃろう………?恥ずかしさのあまり勢いでリンネに八つ当たりしてしまったが………まぁ、やっちまったものは仕方あるまい!ウム♪なるようになるじゃろう!)
反省の欠片もない、犯人の愉快そうな声と敵兵の戸惑う声と撃墜され崩れ行く音の嵐だった………。
「………見つけた」
そして、不意打ちから始まった戦場から些か距離を置いて、人知れず木々の隙間から冬麻達を見据えるのはローブを纏った少女、その視線の先には………
「……大丈夫。もしもの時は私が………だから心配は無用…。」
〔………ユーリ……〕




