第4章『父娘、救出・前編』第6話~協力者①~
[フローレスの森・ガルディア王国軍陣営・第2部隊駐留拠点]
ここ、第2部隊の拠点では部隊長を小隊長数名が小一時間ほど詰め寄り続けていた……
「クルツ隊長!説明してくれよ!」
「そうよ!何で私達にだけ帰還命令が出たのよ!」
「あ~…それはね?」
「しかも!代わりに第4部隊が来るってなんだよ!?あの隊は寄せ集めの新造部隊じゃねぇか!」
「しかも装備に無駄に金を使っただけの坊っちゃん部隊だそ!?」
「いやいや、ちゃんと歴戦の『元』冒険者達もいるぞ?」
「何で元冒険者が騎士になるんですか!?」
「冒険者辞めたんなら大人しく隠居するか養成学校で教職にでも着くだろ普通!?」
「そりゃあ…ごもっともな話だねぇ…あっはっは」
「「「「「隊長!!!」」」」」
「……あ~…ほら?団長の命令だしねぇ?」
(まぁ、どう考えても第2部隊は素直にアルベルトの指示を聞こうとしないからね…かといって、戦力的に不安なのか部隊長まで戻しはしないというこの中途半端さが…アルベルトの器の至らないのを物語ってるなぁ…)
[同地点・第1部隊駐留拠点・第1部隊隊長テント内]
「くそっ!斥候連中は何をしてる!」
(…リンネを監視させていた奴等と交代する時間はとっくに過ぎてるのに戻らないだと…?
まさか、交代要員も一緒にやられたというのか……?いや、そんなバカな!わざわざ冒険者ギルドに依頼して斥候の腕利きを用意させたんだぞ?ありえん!)
「団長!失礼します!」
声をかけると同時に入ってくる連絡係にアルベルトは苛立つ姿を隠し、余裕があるように見せつつ対応する
「っ……何だ?出陣の準備は整ったのか?」
「はっ!!第1部隊及び第3部隊は出陣可能!第2部隊は帰還の命に不服を示し、支度が遅れています!」
「第2……クルツの部隊か、予想はしていたがリンネの息がかかっている連中は厄介だな……やはり、手を打っておいて正解だったか」
「……は?」
「何でもない!それより増援要請した第四部隊と特務小隊はどうした!?」
アルベルトの問いに連絡係の青年は再び直立し、届いた情報をアルベルトに伝え始める
「はっ!!第四部隊は転移門より今しがた現着、既に準備を始めています!特務小隊ですが未だ連絡は……」
「我々なら既に居ますよ?」
「なっ!?」
「わぁっ!?」
連絡係の青年とアルベルトは突然の声に驚き辺りを見回すが……姿を見つけられずにいた
「ど、どこだ!?」
「失礼……こちらですよ。お前達も悪ふざけせずに姿を見せなさい」
声と同時に生まれた気配が背後に現れた事にアルベルトは無意識に身体を強張らせていた
「う……!」
(バカな……後ろを取られていた、だと!?声は間違いなく前方の何処かの筈だったのに……)
アルベルトの背後から音も気配も無く姿を見せたのは漆黒のローブで顔すら見られないよう深く被った落ち着いた感じの男だった……
そして、謎の男の声を皮切りに一人ずつ姿を現していく……もちろん、アルベルトも連絡係の騎士も誰一人の気配を微かに掴むことも出来ないまま……そして、最初の男を含めると合計で四人のローブの人物達がテントの中に現れる
「…………」
2番目に姿を見せたのは小柄のローブ姿の人物、無言なので性別すら判別は出来ないが…相当の修羅場を潜り抜けているのか自然と周囲に知らしめる雰囲気を漂わせている…
「うふふ……ごめんなさいねぇ?そんなつもりは無かったのだけど…職業病って厄介よねぇ……?」
三人目は背丈とローブ姿からでも判る膨らみと声が妙齢の女性だとアルベルト達に教えていた…が、こちらも只者ではないのがよく理解できる……姿を現した途端に纏った血の濃密な匂いが室内に充満し始めたからである
「酷いなぁ?最初に悪戯を始めたのは隊長じゃないですかぁ?ねぇ、ユーリさん?」
最後に姿を見せたのは幼さが残る声をした体格的にも子供のような小柄なローブ姿の少年だった……が何か違和感を感じたが、アルベルトにはこれ以上の何かを見抜く眼は無かった…
「…………知らん、俺には関係の無い事だ。」
「……っ……」
(この声……女だったのか!?)
2番目に現れた無言のローブ姿の人物が女だった事にアルベルトは驚く…すると
「お前……何を驚いている?俺が女だからか?」
「ッ……!?」
傲岸不遜であり自信家の塊であるアルベルトが一睨みで瞬時に金縛りになったかのように、硬直してしまう
(な、なんなのだ……この感じは?)