第3章『2つの神器』第12話~リンネとの決着、他国から見た『冬麻の価値』②~
冬麻はヴィーチェとリンネに、自身が理解している範囲での説明をしていた……が
義理の母親から《神器》を渡されたと口にすると、その義母は何者か?と質問が増え、二人を信用して義母が《風の聖天使》と名乗っていた事を言うと、途端に二人がぎこちなくなったりもしていた……
(ヴェル殿…私、リュミエールという名の天使に聞き覚えがあるのですけど……)
(奇遇じゃな…リンネ、妾もあるぞ)
「……で、義母さんから渡されたのが《神器》1つと《魔法》が3つ、らしいんだけど…どれも使い方がわからなくていたんだよ……ん?二人して、どうした?」
「ぬ!?い、いや…何でもないのじゃ…て、天使と聞いて驚いただけじゃよ?のぅ、リンネ?」
「え、えぇ…その通りです。さ、さぁ…続きをどうぞ?」
「?…あぁ、えっと…」
(……リンネ、後で頼みがあるのじゃが…)
(?…はい、ではのちほど…)
そして、冬麻の話は更に10分ほど続く…といっても要点をまとめると、気の使い方と基礎制御は空中落下するまでに覚えたらしく、その後はゲイルとの戦いで戦技『圧縮砲弾』を修得(ただ、圧縮しただけの力業だが…圧縮後の固定化が実は難しく失敗時の暴発が危険すぎる為、実戦で使う使い手はまず居ないらしい)、そして先の四騎士達との実戦での経験値獲得を経て、リンネ戦では身体強化の全身2段階の成功と圧縮回数を少なくすることで対人戦でも『圧縮砲弾』が通用する事が判明など……ちゃっかり成長していることも二人には話していた
「……貴方、規格外過ぎるのではありませんか?身体能力の異様な高さに加えて戦技もろくに使えないのに馬鹿げた気の保有量……しかも《神器》の覚醒は私が原因で……」
「まさか妾も一枚噛んでたとは……(うずうず)……愛しておるぞトーマ♪」
「ぐはっ!?タックルはやめて!?」
一瞬で冬麻を押し倒すヴィーチェに抵抗も虚しく、マウントポジションを取られてしまうが…突如、凄まじい殺気を感じて二人の動きが止まる
「……真面目にやっていただけます?」
リンネの背に般若(ヴィーチェには鬼に見えたらしい)が見えた気がした二人は
「「スミマセンでした!!」」
即座に謝っていた。
((こわっ!!))
「やはり……知識と経験が乏しくても少年…いえ、トウマ君は一国が欲する直接及び支援戦闘向けの《神器保持者》ですね…」
「そうじゃな……しかも、トーマ自身も戦力としては一級品…『圧縮砲弾』なぞ、加減してアレなら全力だと…殲滅兵器になるぞ?集落から見えるごっそり削られた山の跡地…トーマがやったとウルから聞いたが、あれでも全力では無いのじゃろう?」
「……威力的に全力の3割強くらい?」
「……城一つどころか、小国すら消え去りますね」
「…知らぬうちに損害が出てないことを願うばかりなのじゃ…」
「……申し訳無い」
そして、再開した冬麻の質疑応答が終わる頃に…
「トォォマァァァァァァァ!!!!」
「…キャアァァァァァァァ!!?」
一人の叫び声と誰かを呼ぶ(?)叫びが空から降って(言葉通りの意味で)きたのだった……
「リンネ!」
「承知!」
「え?え?」
何かを察したヴィーチェとリンネは冬麻が瞬きする間もなく左右に大きく距離を取る
「!?」
〔トーマさん、身体強化をしないと折れるかもしれないですよ?〕
(折れるって何が!?)
〔もしくは砕けるかも♪〕
(だから何が……)
ドスン!
「ぐぁぁぁ!?」
ドスン!!
「んぐぅぅぅぅ!!?」
その日……冬麻は2度目の気絶を経験(気絶した自覚は無いけど)したのだった…………