第3章『2つの神器』第11話~リンネとの決着、他国から見た《冬麻の価値》①~
今回はシリアス多めです!
「ッ!いつまで…掴んでるんですか!?」
「ぐはぁっ!?」
互いに沈黙となり(龍帝は爆笑していたが)…たっぷり1分近くそのままでいるとようやくリンネが我に返り、涙目で冬麻に拳を振り降ろし直撃を叩き込む
「ぐぅぅ…おぉぉぉぉ…………」
(な、にが起こったんだ……)
〔流石はトーマさん…期待を裏切りませんね!私ですら予想できない事態ですよ♪いやぁ、貴方が私の《保持者》で本当に良かった!〕
「ッ……ぅ……げほっ」
(…龍帝、お前の仕業か?って、痛すぎて声が……出せん)
「何をしておるのじゃ、ぬしらは…?」
リンネの拳で悶え苦しんでいると、ヴィーチェがリンネと冬麻の所に現れる
「っ!……チェ、無事……っ…か」
「う、うむ?ああ…トーマの防御魔法のおかげじゃよ。どれ、礼と言ってはなんじゃが…治癒魔法をかけてやろうかの。そのままではまともに喋る事も叶わぬじゃろう……まったく、馬鹿力で殴りおってからに!」
キッと、ヴィーチェが睨むとリンネが縮こまってしまうがヴィーチェは気にせずに冬麻に治癒魔法を発動する
「うぅ……し、しかしヴェル殿…」
「しかしも案山子もないわ馬鹿者!言い訳は良いから事情を説明せぬか!先程の冬麻の……あれは攻撃魔法なのかのぅ?まぁ、さっきので我等を監視していた者共も吹っ飛んでいきおったから安心するが良いわ」
「……本当ですか?…というか、私の一撃で気絶してたんじゃあ……?」
「気絶しとったよ?当たり前じゃろう?自動発動する状態回復魔法を待機させといただけじゃ。それと監視していた者については安心せい。念のために複数の探知術式を今も発動させておるが、虫一匹もおらぬ。動物の類いは逃げてしまっておるからファミリアの心配も無いのじゃ」
ヴィーチェの再三の探知術式による結果を聞き、ようやくリンネは腰を降ろすと二人に頭を下げた。
「まずは御二人に…そして、ここにいないトゥール族の皆様にも謝罪を……」
「んなものはいらん。さっさと事情を話さぬか、ヴォルフめは何をしておるのじゃ?ラピスもじゃが…ガルディア王国は何故、《神器保持者》を欲したのじゃ?また隣国と戦争をする気かの?」
「…戦争には代わりありませぬが…ヴォルフ団長は戦争への反対を訴えた故に城にて拘束、軟禁状態と相成りました。ラピス様はそれを知り、団長を助けに騎士を数名連れていったようですが…」
「…捕まったと?」
「はい…。随伴した騎士が裏切ったようでして…ですが一人だけ、若い騎士が重傷を負いつつも私とクルツが配置されていた砦までやってきて私達にラピス様からの伝言を伝えたのです。」
「…その若いのは?」
「私達の目の前で息絶えました…最後に、ラピス様を御守り出来なかった己の無力さを嘆きながら……」
「…………そうか」
「ですが、彼の行動が私とクルツをここまで導いてくれた……私はそう思っています」
「……」
(なぁ…龍帝、これって)
〔まぁ…ようは戦争推奨派のお馬鹿さんが否定派の方々をどうにかしつつ一騎当千に値する人物や兵器の類いを手段を問わず、首輪を付けたいと…そういう事でしょうね……〕
「…………戦争なんてものは、したい奴だけが勝手にしてりゃいいんだ…周りを巻き込み利用するなんて…間違ってる」
(いつだって……戦争は悲しみを多く生み出す…俺は…俺は、だからこそ……)
〔………………〕
「トーマ……おぬし…?」
(何か思うところがあるように見えるが……む?そういえば、トーマの家族も《異世界》に来てると言っておったな。
で、あれば気が気ではないということか……目の届かぬ何処かで何かあったらと思えば致し方ない事じゃが……)
「少年……君は優しくもありますが残酷でもありますね」
「!……何が言いたい?」
「『周りを巻き込み利用するのは間違ってる』…『したい奴がすればいい』……ですか。
貴方が何処の国の出身なのかは存じませんが、戦争の悲惨さを多少は知っているようなので多くは語りません…が、望まない争いであっても挑まなければならない時もあります。」
「リンネ……」
「…………」
〔…………〕
「確かに……戦争をするなど、馬鹿らしい事です。今まで隣に居た誰かを失い、大切にすべき自然を損ない、愛すべき平穏を容易く打ち破るのですから……そして、それに通じる事が私達、軍属の者にもあります。
……私達が腕を磨くのは幾つかの理由が各々存在しますが…私の知り合いには、けして戦争をする為に鍛練を続けている人は居ません」
「っなら何で!」
「少年、君は強い。私とここまで立ち会える程となると国内でも上位50人の中に入ると思います。
……故に断言しましょう。今のままの君では『兵器』として、戦争に必ず『利用されるだけの存在』になるのは間違いありません。」
「……ッ!俺は!」
「否定は無駄です。必ずなりますよ。何故なら…少年、君は《神器》を持つ《保持者》なのですから」
「…………!」
〔……そういえば、先程…私の名前と龍帝の呼称だけで《始祖》と言い当ててましたね……私の存在を知ってるとは予想外でした〕
(…もしかして、龍帝って凄いのか?)
〔そりゃあまぁ……等級でいえば、この世界が誕生してから一番最初に《神器》となったのは私ですから?等級は最上級ですよ?まぁ、『なった』…というより『された』、が正しいですかね〕
(……大変だな、色々あるみたいで)
〔…………御理解有り難う御座います〕
「……リンネ、何の事じゃ」
「?ヴェル殿は御存知ないのですか?」
「…うむ。トーマは《異世界人》でな、海に浮かんでいたのを妾とミューの二人で救助したのが10日ほど前くらいなのじゃ」
ヴィーチェの言葉の一部にリンネは信じられないとばかりに再び問う
「…………今、なんと?10日前にこの世界に来たばかりなのですか?」
「うむ!並外れた戦闘能力についてはウルから聞いておったが……《神器》については初耳じゃ……トーマ、説明せい…隠し事はせずに頼む……お主自身のためにも、な」
「……わかった、話す。まずは《神器》を渡された経緯からだけど……」
珍しくヴィーチェの真剣な眼差しに気圧され、冬麻は《神器・龍帝の遺産》について自身が知る限りをリンネとヴィーチェに語り始める……




