第3章『2つの神器』第9話~『異世界人』冬麻VS『剣聖』リンネ②~
「…っ!はぁぁぁぁ!!!」
(チャンス!気を集中して圧縮…更に集中して圧縮…!圧縮二回分の簡易版!)
「…………」
(驚きました……なんて気の量……直撃は避けた方が無難なのですが…ダメです、動けません………詠唱していないところを見ると魔法では無さそうですが、いったいどういう理屈なのでしょう?)
「『圧縮砲弾』!!」
集中と圧縮を二回分にする事で発射までの時間を極端に縮めた圧縮砲弾をリンネに向けて放つが、発射直後にリンネが『咆哮』の硬直から解放され動き出す
「ッ!?」
(もう動ける!どうやら、さっきよりだいぶ短くなってますね…条件付き、なのでしょうか?)
「もう効果が切れたのか!?」
〔致し方ありません。《神器》…つまり《私》を受け継いで、まだ三十分も経ってませんからね。『遺産』もまだまだ機能不全という事です。〕
「…っ……せやぁっ!!」
解放されたリンネはすぐに上段の構えをとると同時に気を刀に纏わせて振り降ろすと、気の斬撃を放ち冬麻の『圧縮砲弾』にぶつける事で相殺…小規模ながらも爆発し周囲に衝撃波を飛散させ、三人をそれぞれ驚かせる
「『飛燕』で突破出来ない!?」
「『圧縮砲弾』を相殺したのか!?」
「………なんと」
「ふ………ふふっ……ふ…」
「「…!?」」
驚く三人の中でリンネがいち早く反応を取り戻し、含み笑う声を発すると冬麻が遅れて警戒をするが…ヴィーチェが僅かに早く待機させていた魔法を放つ
「トーマ、下がれ!!『地槍乱突』!!」
瞬時にリンネ目掛けて地面より大地の突槍が次々と顕れ襲いかかる
「くっ…ヴィーチェ!?手を出さないでくれ!」
後ろに跳躍し、ヴィーチェの魔法の範囲から遠ざかりつつヴィーチェの方に振り返る
「……馬鹿者!…っ…ごふっ…!リンネを甘く見るでないわ……はぁ…はぁ…『風刃音速断』!!……ぐっ…」
(まずいのぅ……魔法発動時の体内を駆け巡る魔力の流れに損傷している器官や臓器が…悲鳴をあげとる…魔法の起動速度も威力も今一つ足りぬ!)
更に発動した魔法が地の槍が乱舞するリンネが居る場所に左右と上空から飛来し、自身が生み出した魔法の槍ごとリンネを八つ裂きにするかのように間髪いれずに多方面から切断していく
「やりすぎだヴィーチェ!?もしも当たってたら……!」
「いくら私でも死ぬでしょうね?」
「…やはり当たらぬか!」
声がした瞬間にヴィーチェが三度、魔法の発動に入るが最後まで言葉が続くことはなく途切れてしまう
「っ…『風縛……ぅ…ぐっ……」
「ヴェル殿?お邪魔はそこまで、ですよ!」
ヴィーチェの腹部にめり込むリンネの刀……刃は返し、峰打ちではあるが更に骨が数本折れたのかヴィーチェは静かに崩れ落ちていった……
「!?」
「さて…これで一対一ですね?」
目の前で倒れたヴィーチェに、冬麻は感情が爆発するにつれ気と魔力が膨れ上がるのを自然と理解していた…
「よくも…ヴィーチェを!てめぇぇぇぇぇぇ!!」
(頼む、龍帝!あいつだけを吹っ飛ばしてくれ!!)
〔これは流石に仕方無いですね……ですがトーマさんの魔力を総量から最低3割は代償に貰いますからね!!〕
(構わないから全部持ってけ!)
〔うふふ…男の子ですねぇ♪なら、その意気に応えてみせましょう!『遺産』の機能を限定解放!『咆哮』を一時的に上位互換!『龍帝の咆哮』の発動を認めます……トーマさん!!〕
「ありがとう!龍帝!……その身に味わえリンネ!!これが…龍帝の一撃だ!!」
「……は?…レーヴェリア?…龍帝?龍帝……レーヴェリア……え!?まさか………《始祖》!?」
不穏な単語を耳にしたリンネが思わず問いかけてしまうが、当然の如くトーマは答えるつもりも発動を中断するつもりもなかった…ヴィーチェを助ける。それが冬麻の最優先事項だからである
「…ッ龍帝の咆哮!!!!」
〔…と、同時に魔法一覧表公開・選択・自動起動開始。魔法名『熾天覆う七つの円環』を強制発動させます。対象選択…目視で確認…ヴィーチェ=エルトリンデを指定、斜角調整後発動します。…トーマさん!〕
「ッ!『熾天覆う七つの円環』ッ!!」
(感謝する!龍帝様!)
冬麻の最大火力と最大防御が僅かな時間差で発動し、リンネとヴィーチェ…それぞれを捕捉すると盛大な爆発音を伴った炸裂する衝撃波がフローレスの森の中心からやや外れた一帯を……ものの見事に更地に変えて沈黙の風を辺り一面に吹かせていた……
加筆修正しました!