第3章『2つの神器』第8話~『異世界人』冬麻VS『剣聖』リンネ①~
投稿が遅れてしまいました!
皆様、すみません!
ふらつくヴィーチェを支える冬麻達二人の前に立ち塞がるのは二振りの短刀を携えた騎士鎧の青年…優しげな微笑みの影に潜む鮮烈な威圧感を感じた冬麻は瞬時に警戒、ヴィーチェの前に出ると気を一気に放出し身体に纏う
そしてその上から更に気を全身に覆う。
『迅雷』や『剛雷』を使えない冬麻に出来る唯一の自己流強化技法である。
「すぅ……はぁ……」
(よし、思った通り気の制御力が向上してる!あっさり二段階強化…しかも全身に纏うことが出来た!)
「……なんと」
(あれはまさか……二重の身体強化か?それも強化系戦技ではなく気で?この距離でなければ妾でも見逃す程の些細な変化じゃが…いかん、クルツやリンネにはこれでも通じぬ……やはり、何とか2対1に持ち込まぬと時間稼ぐのも厳しいのぉ…ウルかミューのどちらかでも来てくれれば何とかなりそうじゃが…冬麻が戻ってきたのなら先程の追っ手の三人をウルが…もしくはミューも含めた二人で相手しとるんじゃろうな…まぁ、ウルが戦っとるんなら直に来ると思うが………あやつ…もしやと思うが《神の尖兵》使ってないじゃろうな?)
※絶賛、使用中です。
「む……?」
「どうしましたリンネ?」
「……いや、気のせいかも知れませんが…彼の纏う気が『一層』増えたような…?」
「……『一層』?二段階強化ですか?気だけで?それは流石に有り得ないかと思いますが……」
「ですよね……」
(うーん……あの少年が気を纏い始めた辺りから首筋がピリピリする、ってことは間違いなく『何か』あるんでしょうけど……)
冬麻の些細な変化を直感だけで捉えたのは流石というべきか、見た目の若さとは裏腹に百を軽く超える戦場で生き延び鍛えられたリンネの超一流の直感は見事言い当てていた
「クルツ」
「はい?」
声をかけたリンネはクルツの隣に並び立つ
「私が代わりますので、アルベルト殿を本陣まで護衛しなさい」
「……は?」
「な!?リンネ、貴様…何を勝手な!それより二人同時にかかればすぐにでも…!」
「それは愚策です、アルベルト殿」
「なんだと!?」
「リンネの言う通りですね。エルトリンデ殿は設置魔法と『無言詠唱』の併用で一軍を翻弄し、一晩で壊滅させた事もある使い手ですよ?僕達が側に居なかったら一瞬で拘束されるか、上半身が吹き飛ばされて人生が終わるかのどちらかですよ?ま、僕は一向に構いませんけど?」
「クルツ…貴様ぁ!!」
「そこまでです。クルツ、頼めますか?」
「仕方ありませんね…リンネがそこまでいうならこちらは任せます。」
「ええ、任せてください…但し、そちらはお願いしますよ?」
「お任せ下さい、リンネ総隊長」
「………ぉ?」
(これはチャンスかの?…【空間を超え・時を超え・世界をも超え・幾多の異界より集いし武具の一柱よ・ヴィーチェ=エルトリンデが願い奉る・我が身に眠るは・汝との契約の証・今ここに契約の履行を求めん】)
「では、参りましょうか?団長殿?」
「くっ………わかった、残存の騎士達の態勢を整えたら戻ってくる!それまでにその二人を始末しておけ!」
「承知」
(するわけないでしょう…先程の私の言葉をもう忘れたのでしょうか?)
「はいはい、行きますよ~」
(やれやれ、団長達さえ見付かるまでの間とはいえ…無能な上官のお守りは疲れますね………)
「ぐぁ!?ク、クルツ!貴様~……」
クルツに背を押されて、ようやく騎乗したアルベルトに続きクルツも騎乗するとすぐにアルベルトの馬の尻に蹴りを浴びせて無理矢理走らせてから自身も続く
「ふふ…流石はクルツ。さて、と………ヴェル殿?そろそろ魔法の下準備は終わりました?」
振り返りヴィーチェに微笑むリンネにヴィーチェは「あ~…」と苦笑いをする
「やはり、バレとるかの?」
「当たり前です。何度、貴女と模擬戦をしたと思っていますか?で?」
「いやぁ…もうちょい?かかりそうじゃ」
「それは残念」
言うと同時にリンネは、スラリと腰に差した鞘から刀を抜き放つ
「あ~………のう、リンネや?」
「待ちません。手加減はしてあげますから何とかしてみせなさい『魔女』殿」
「ッ…ヴィーチェ!俺がやる!」
(龍帝!斬撃は防げるか!?)
〔無茶を言いますねトーマさん。何か媒体があるなら私の力で干渉して『遺産』の一つにする事は可能ですが…そこらの量産品は絶対に嫌です〕
(我が儘だな!?そんな余裕あるかよ!!)
「トーマ…妾を…?」
(いかん…キュンと来たのじゃ……は!?いかんいかん!詠唱を続けねば…【…戦う力・護る力・救う力・数多の力より・我が望み願うは・《切り開く力》也・逆境を・危機を・困難を切り開く・我が求めに応じるなら・名乗りをあげよ・汝が名を我に・聴かせたまえ】)
……………
(……失敗?嘘じゃろ!?)
「さて……では参りますが、峰打ちでやりますから安心して下さいね?……ふっ!!」
瞬時に消えるリンネ、と同時に冬麻は蹴りを真後ろに放つ
「破ッ!!」
「ふふ………見事です…では、次!」
「ちッ!」
「お見事!ふふふ……次々行きますよ?」
「くっ!……はっ!!せい!」
(速い!!聞いてはいたが、さっきのお姉さんとは格が違う!しかも遊ばれてるな…くそっ!)
「っ!更にもう一つ!ふふふ…良い眼をしていますね?」
(なるほど…大したものです。これは、ヴェル殿が熱をあげている御様子も頷けますね)
自身の斬撃をここまで受け続ける冬麻にリンネは興味を抱きつつあった…手加減しているとはいえ、ここまで持ち堪えているのはクルツ以来久し振りだからである
「……ふむ。これはもう少し楽しめそうですね」
「っ…」
(龍帝!)
〔嫌です〕
(即答かよ…あ~…マジでヤバイな…)
〔『咆哮』で時間を稼げばいいじゃないですか?〕
「………すぅ………止まれぇぇっ!!」
(忘れてた!!)
〔やれやれですね…とはいえ、このままというのもマズイのは理解できますし…何か使える道具があれば良いんですが…〕
「ぐっ!?」
(これは先程の!?やはり、使ってきましたか………それにしてもこれはいったい…?)