第3章『2つの神器』第6話~神器発現!始祖龍帝レーヴェリア登場!(精神体なので、姿は見えません)~
「…何でだ?……身体が軽い……」
走り始めて感じた違和感に冬麻は戸惑いつつも、徐々に速度を上げていくが自身の基礎身体能力が、リーファとの速度全開状態の長時間戦闘及びジオやグエンとの油断=死に繋がる幾度の攻防が、《異世界人》としての冬麻に与えられた《特性》を活性化させた事を知らないままミューレの治癒と魔力譲渡でほぼ全快となったのだが……
実際、リーファ達との戦闘前とでは能力の上限が3倍近くまで上昇しているので…冬麻は自分の身体がいきなり軽くなったと錯覚しているのを本人は全く気づいていない(正確には気づく余裕も無いだけだが)
「…そろそろ、着く頃合いだな……って、あれは……?」
一刻も早くヴィーチェの姿を見付けたい一念が成したのか、自然と『視覚強化』と『聴覚強化』を同時強化に成功させた瞬間
〔……れは命令だ!さっさとその女を殺せ!〕
「!?」
(その…女…?殺せ……だと?まさか!?)
耳に入った声の意味を理解すると同時に速度を更に上げると、やがて三人の男女を視界に捉えるが冬麻にとっては見知らぬ連中だった
(誰だ…あいつら?ヴィーチェはどこだ?ヴィー、チェ…は……っ!?)
三人の男女の側に倒れている一人の女……
(白い翼の女…だけど、片側は紅くなってる…なぜ?)
見覚えのある背格好に髪の色……
(ミューレは黒いけど、ウルリカやヴィーチェ…集落の皆も白かった…よな?)
うつ伏せに倒れているのは、翼持つ金髪の女性…動く様子は見られない
(少し前まで一緒に居たんだ…見間違えるわけがない)
〔アルベルト殿…そのような事は出来ませぬ。〕
〔…同感です、団長殿。我等は貴方の危険が迫る時のみ剣を抜く、そういう約束ですよ?〕
〔なっ………ぐっ…貴様ら!俺に逆らうのか!?〕
〔……はぁ…アルベルト殿…誤解の無いように今一度、申し上げますが〕
急げ!今ならまだ!
(間に合うのか?)
〔な、なんだ……〕
迷うな!急ぐんだ!
(ヴィーチェ…!今、行くから…!)
〔私達は、貴方の部下ではありません〕
〔そう。ボク達は、ヴォルフさんとラピスさんの同志であり仲間です〕
〔…確かに我等は貴方との約定に従い、彼女に刃を降り下ろしはしました…が〕
間に合うか?いや…間に合わせろ!!
(ミューレなら…!何とかなるはずだ!)
倒れ伏したヴィーチェの近く目掛けて冬麻は最後の跳躍を踏み出し空を舞う…そして
〔我等はヴェル殿を…殺すつもりなどはありませぬ〕
〔ッ……もういい!なら俺が自ら手を下してやる!どうせ、虫の息なのだからな!!〕
(いま、なんて言った……?)
ドクン……
〔警告、過度の精神負荷により《保持者》九条冬麻の精神保護障壁に異常を感知、深層領域第一層が強制解除されました。それに伴い深層領域全七層に分割封印された《神器》の一部を解放します〕
ドクン……ドクン……
〔等級確認……終了。創世神話級《神器》を確認〕
ドクン……ドクン……
(なんだ……また、声が聞こえる…だけど前とは違う、機械音声みたいな…この感じは何なんだ!?)
〔神核を確認……終了。《始祖龍帝レーヴェリア=アーマライト=クロムウェル》の『魂』を確認〕
ドクン……ドクン……ドクン……
(それに急に気分が……いきなり身体の中に妙な物を放り込まれて、かき混ぜられているみたいだ……)
〔《魂》の覚醒を確認……《神器》・《始祖龍帝の遺産》の起動準備を開始…………起動完了〕
〔初めまして今世代の《保持者》九条冬麻…『私』を受け継ぐ者よ…〕
(……《保持者》?俺が?それにさっきまでの声とは違う、随分と若い声だな………信じがたい事だが、あんたは《神器》…なのか?)
〔その通りです。……あぁ、今は時間が無いようですから手短に済ませましょう。単刀直入に言うと、ヴィーチェ=エルトリンデは重傷ではありますが、致命傷ではありません。手当てをするならまだ間に合いますよ。〕
(本当か!?)
〔えぇ、ですから《私》の力を少しですがお貸ししますので救助を優先します。構いませんか?〕
(勿論だ!頼む!力を貸してくれ!)
〔わかりました。では…《遺産》の一つ、『咆哮』の使用を許可します〕
(咆哮…?ハウリングの事か?竜の咆哮…何だか凄そうだ…)
〔万能な能力ですので、使い勝手は良いですよ。今回は対象者に対して効果のある能力を優先しましょう〕
(助かる!使い方は!?)
〔気合いを込めて叫びなさい〕
(説明そんだけ!?)
〔叫べばわかります。対象と効果の選択はこちらでしますから、発動の動作だけそちらでお願いします〕
(…うぅ…恥ずかしいがわかった!今は恥を捨てる!ヴィーチェの救助が最優先だ!)
〔心優しい《保持者》に巡り会えて幸いです。では、参りましょう〕
(あぁ、宜しく頼む《龍帝》!)
(ようは叫べば良いんだよな!なら……)
すぅぅぅ…………
「お前らがっ!ヴィーチェをこんな目に合わせたのかぁぁぁぁぁッ!!」
「「「!?」」」
(何だ!?急に身体が……!?)
(動かぬッ!?魔法!?ヴェル殿の『無言詠唱』!?いや、ヴェル殿にもはやそのような力は残っていないはず!なら、この声の青年が我等を一声で束縛したのですか!?)
(なんだ、身体が動かん!?何が起こった!?)
三人の男女に叫ぶと同時に着地した冬麻はヴィーチェの近くに行き、怪我の具合を確認すると…刀傷が見えていた。しかも、三ヵ所…つまりは三回もヴィーチェは切りつけられたのだ…『死』をイメージしてしまった冬麻は思わずヴィーチェの身体を揺さぶってしまう
「ヴィーチェ!しっかりしろ!ヴィーチェッ!!」
「いったぁ!?ちょっ!!痛い!?痛いぞトーマ!?もちっと優しくせぬか!」
「…ヴィーチェ!死ぬな!!死ぬんじゃ…ない………ぇ?」
「ぬぁぁ!?痛いと言うておろうが!?……げふぁっ!?」
ヴィーチェの刀傷を見て一瞬、我を忘れたトーマだったが……重傷による気絶中(だと冬麻は思っていた)の相手が叫びながら痛みを訴える(ていうか血を吐いている)様に唖然としてしまう
「はぁ……はぁ……ごふっ!……のう……トーマよ?」
「…なんだ?」
「と、とりあえず…傷が痛いので揺さぶるのは止めて貰えぬかのぅ?」
「…………ごめん」
「う、うむ……心配かけてすまぬな?」
(…………おい、龍帝)
〔はい?〕
(知ってたな?)
〔はい♪〕
(良い性格してやがるな!?龍帝様よぉ!?)
〔ありがとうございます♪〕
悪びれぬ龍帝に、冬麻は心中、全力で雄叫びを放つ!
(ぬがぁぁぁぁぁ!?)
〔私に私の『咆哮』は効きませんよ?〕
(だろうな!!)
色んな意味で色んな事が台無しなタイミングだった……




