第3章『2つの神器』第4話~ミューレ&ウルリカ参戦!女は護られるだけじゃない!①~
「はぁぁぁぁぁっ!」
蒼い雷を纏った女騎士リーファの槍が電光石火の連続攻撃で冬麻を追いたて
「ぬんっ!!」
紅い雷を纏った熟練の騎士グエンの剣が、冬麻の行動を先読みし、鋭く力強い一撃を放つも紙一重で冬麻は避けるが………
「……っ…!」
(ここまでなら何とか……けど問題は次だ…!)
「おぉぉぉぉっ!!!!」
グエンと同じ紅い雷を気の上から更に纏い、回避直後の冬麻に目掛けて剛剣を放ち空中から地面に叩き付ける!
「ぐあっ!?」
(くそっ!こいつらタイミングを合わせるのが上手すぎる!!)
二人までの連携なら避けることも出来た冬麻も、絶妙に合わせたジオの一撃だけは避けきれず『楯』で身を守るのが精一杯だった…何度避けようと、必ず三手目で動きを止められてしまうのだ……さしもの冬麻も余裕を無くし始めていた……が、それはジオも同様であった。
何しろ本来なら一撃必殺の好機であるにも関わらず、幾度も『楯』で直撃を防がれているのだ。攻めているのに攻めきれていない焦燥感がジオを含む、三人には燻っていた……
「…………また、防がれたか」
(あの『楯』……『剛雷』を纏った俺の剣を何度、あれだけ防いで砕ける様子が無いとは……何の魔法か見当がまるで付かん)
「リーファ!副隊長!小僧を休ませるな!畳み掛けるぞ!」
「はい!」
「……そうだな、ここまで来て退くわけにはいかん!」
衰える事を知らないかのように三人の気と戦技の稲光が強まるが、それとは対照的に冬麻の疲労は隠せぬほど積もっていた……術者の冬麻だからこそわかる事だが…『楯』がジオの剛剣をあと二、三発も受ければ消滅しそうだからである。
「……せめてあと一人、倒さなきゃ…こっちが殺られるのは確定だな…」
(『楯』が消える前に何とか『圧縮砲弾』で一人は沈めたいところだが…集中する余裕が全く無い!あっちはもっと人数がいたし、ヴィーチェは大丈夫なのか……?)
「行くぞ!小僧!」
「ッ!」
(ダメだ!今はこっちに集中!ヴィーチェなら大丈夫だと信じろ!)
ジオ達三人が再度仕掛けようとし、冬麻が身構えた瞬間……両陣営の中間に突如、爆発が起きる
「「「「ッ!!?」」」」
冬麻とジオ達が動きを数秒止めるもすかさずグエンが剣で切り払うように爆発で起きた土埃を一振りで散らす
すると…そこには新たに二人の人影が冬麻を左右から支えるように立ち、ジオ達に向かい合っていた
「…………ミューレ?それにウルリカも…良かった、一緒だったのか……」
二人が誰かを確認した途端、安心した冬麻は片膝をついていた……同時に気が緩んだせいか『楯』も消滅する、実際には発動した際に込められた魔力が尽きただけだが…
「トーマ!?」
「トーマさん!?」
「大丈夫だ…少し疲れただけだから……それよりも、奴等の狙いはミューレだ……ウルリカ、ミューレを……」
冬麻の発する言葉に、二人の少女は状況を察した……
何故、ヴェルが此処に居ないのか?
答えは、本隊もしくは大将と対峙しているからだろう
ヴェルがすぐに戻ってこない理由はそれだけの手練れが相手だということ…。
何故、冬麻はここまで疲弊しきっているのか?
答えは、危険を知らせるためにここまで戻ってはこれたものの敵に追い付かれてしまい…やむ無く戦闘に突入したからであろう、と
何故、冬麻は……逃亡を選ばず、こんなになるまで戦ってくれたのだろう?
答えは……
((冬麻は!私達を守るために、ここまでしてくれた!なら、私達がするべき事は決まっている!!))
「グエンさん、副隊長…あの少女は、もしや」
「あぁ、あれが【黒い翼の少女】か…!!」
「向こうから来るとは好都合だな…二人とも一気に制圧するぞ!!」
「「了解!」」
ジオ達が構える頃にはウルリカもまた、臨戦態勢を整えていた……
「ミュー!トーマを!」
「任せて!ウルはあの人達の相手をお願い!…【光の精霊よ・彼の者に・癒しの奇跡を】!」
トーマに手を添えてミューレは治癒魔法を発動させるが、あちこちにある擦り傷は治せても疲弊した体力までは戻せない……故に、ミューレは更なる詠唱を続ける
そして………
「………勿論だよ、ミュー…私達のトーマにこんな酷いことしたんだから………あんた達………」
「ッ!………この子の気配、何なの!?…よくわからないけど、何かされる前に仕留める!!」
徐々に変質し始めるウルリカの気に怪訝そうにするも、最速を誇るリーファが『迅雷』を再度、纏って先手を仕掛ける
………が
「きゃあっ!?」
「「リーファ!?」」
冬麻とあれだけの時間、速度で接戦を続けたリーファをウルリカは呆気なく蹴り飛ばし…直後にはグエンとジオの目の前に立っていた。
「死ぬ覚悟は出来てるよね?」
「「!?」」
(この小娘!?)
(リーファよりも速いだと!?)