第1章『異世界来訪』第9話~決着、そして告白~
冬麻の放った戦技の威力にゲイルは己との力量差に崩れ落ち、ミューレとウルリカは驚きを隠せずにいた。
「「凄い……」」
「…………ふぅ」
(さて…と)
人に向けて撃った初めての技…冬麻自身もまた驚いていた。
「…………」
(何あれ!?咄嗟とはいえ、精一杯抑えたのにあの威力かよ!?当たらなくて良かった!本当に良かったよ!異世界に来て3日目(あれ?3日前にミューレに助けられたんだから今日で4日目か?)でいきなり人を消し飛ばすところだったよ!)
心中、冷や汗どころか滝のように汗をかく冬麻をよそに二人の少女は冬麻のもとに駆け寄っていく
「トーマさん!」
「トーマ!」
「うぉっ!?」
ミューレを追い抜き冬麻にダイブするように抱きつくウルリカの衝撃に思わずよろけるが、ウルリカは気にせずにしがみつく
「ちょっと、ウル!?」
「ウルって…あぁ、シチューを食べた子か…」
「トーマ!私はウルリカ、ウルリカ=リッケルトだ!」
冬麻にしがみついたままウルリカは突然名乗りを上げ、真剣な眼差しで見つめ始める
「へ?あ…俺は九条冬麻、冬麻が名前で九条が名字だ。宜しくウルリカ」
何か微妙なタイミングで自己紹介が始まったことにミューレは違和感を覚えたがそれは気のせいでは無かったと、後にミューレの日記に記される事になる。
「いきなりだがトーマ、私の婿になれ!」
「本当にいきなりだな!?ならないよ!」
(いきなり何言ってんの、この子!?)
「ウル!?」
(いきなりどうしたの、この子!?)
ツッコミつつもきっぱりと断る冬麻と、驚きを隠せないミューレに対し、ウルリカは……
「トーマは私の婿になるべきだ!」
キメ台詞(本人はそのつもり)で言い放つ!
「どこからきた、その自信!?」
(めげずに言い直した!?)
そんな二人のやりとりにもう一人は
「ダ…ダメ!トーマさんは私が先に目をつけたんだから!!!」
「こっちもどうした!?」
「トーマ!どっちを選ぶ!?」
「トーマさん!どっちですか!?」
「え!?」
(なんだ、この展開!?二人…いや、最初におかしくなったのはウルリカで、ミューレが後に続いた感じか…!?)
「「どっち!?」」
「ひぃぃっ!?」
ゲイルとの初めての戦いを終えて、心も体も休めないまま冬麻の異世界生活は翌朝を迎えることとなる……
「…………あんな奴に俺は、負けたのか…………」
そして、ゲイルもまた翌朝を迎える…仲間に存在を忘れられたまま……