第1章『異世界来訪』第7話~冬麻VSゲイル~
「ガタガタ騒ぐな!生意気なガキに身の程を教えたまでの事だ!」
ミューレとウルの非難に一喝で返し、冬麻を自身が最も得意とする戦技『螺旋撃』で殴り飛ばしたゲイルは追い打ちをかける為に冬麻の元へ歩みを進めていく……が
「………ふん」
その前に浮かび上がる人影に眼を細める
「一応聞くが…何の真似だウルリカ?」
身体に纏わせた気を隠さず揺らめかせるゲイルに対し、ウルリカは静かに立ち塞がる。
「ゲイル、無抵抗の相手に戦技を叩き込むだなんて何を考えているの…?よりにもよって『螺旋撃』…戦闘用の戦技を素人に放つなんて、ヴェルや族長に知れたら貴方…処罰されるわよ?」
ウルリカの詰問に対しゲイルは両手を上にあげ、さも非は無いと表現はするが表情には反省の色も見せないところがまた…ウルリカを苛立たせ、ミューレはそんな二人を危ぶむように見守りつつトーマの姿を捜す。
(トーマさんが異世界人なのは間違いない…なら扱い方のわからない気での防御は出来ないはず………どうしよう、無事だと良いんだけど…)
「処罰だと?知ったことじゃないな!それよりあの小僧の墓穴でも掘ってやったらどうだ?まぁ手加減はしたからまだ息はあるだろうけどな?」
「いやいや、穴を掘る必要はないぞ?息も当然してるし、ついでに言えば…派手に飛ばされはしたものの大した事は無かったな……拍子抜けした、ってのが正直なところだ」
「「!?」」
「……トーマさん!?」
「ん?」
平然と歩いて戻ってくる冬麻を見て3人は信じられないものを見たかのように動きを止める
「あの……」
ミューレが冬麻を、正しくは冬麻の全身を見回す。怪我の具合を確認するためである…が、かすり傷一つ無いその立ち姿に驚きを隠せずにいた。
「なんだ?」
「だ、大丈夫…なのですか?」
「あぁ、問題ない。あの野郎が気を纏った時は驚いたが…咄嗟に俺も気で防御したからな」
(ヤバイと感じた瞬間、思わず気を全身に纏ったが…これは思った以上の効果があるな。もしも腕だけ防御していた場合だと殴り飛ばされた先で岩に叩きつけられた時、背中を強打して下手すりゃ背骨か脊椎がやられていたかもしれないぞ…)
冬麻の無傷宣言と気という発言に対しミューレは思わず絶句してしまう
(どういうこと…?トーマさんの世界にも気があるの?手加減したとはいえ、ゲイルの『螺旋撃』を受ければ普通は骨折じゃすまないのに無事ってことは本当に防いだ…それもただ防ぐわけじゃなくダメージを無効化するほどの防御をするだなんて…並の保有量では土台無理な話よ)
「ちっ…おとなしく寝てればあと2~3撃で見逃してやったものを…!」
ゲイルは気 を更に高めて冬麻を再び見据える
「いやいや、あれ以上殴られたら永眠しちゃうだろ」
(さて、防御は何とかなるが問題は攻撃か……気の強弱はたぶん、俺の方が上なのは間違いなさそうだが…単純な打撃で何とか…ならないよな、きっと。となれば…気を纏った状態でやるっきゃないよな?さてさて、どのぐらい持続出来るかわからないがやれるだけやってみるか)
「……なぁあんた、確かゲイルだっけ?」
静かに気を身に纏わせていく冬麻に対し、ゲイルも警戒を露にしていく。一触即発、その言葉通りの光景にウルリカは冷や汗をかきながらミューレの側に立つ。それは万が一にも彼女に危険が及ばないよう護るためである。
……傍目から見ればそれは妹が姉をかばうかのようにも見てとれるだろうがウルリカもまたゲイル同様に部族の中でも有数の使い手、だからこそ二人の戦いを止めなければならない立場にあるのだが……
「あのお兄さん……本当に何者…?ただの漂流者だと思ってたけど、何処かの軍人か高ランク冒険者?」
ウルリカの問いにミューレは静かに首を横に振る
「…トーマさんは異世界人よ。多分だけど、来たばかりの…ね」
「…………マジ?初めて見た異世界人なんて存在…」
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