第1章『異世界来訪』第6話~続・出会いとは転機の訪れ~
一度にキャラが増えましたが、登場人物紹介はマイペースに行きます!
「ミューレはここか!」
がばっと勢いよく入り口(布を垂らしているだけだが)を開けて入り込んできたのはミューレと同じ翼持ちの男だった。……なんだ、ミューレじゃなかったか…美味しそうな匂いがしたからてっきり戻ってか来たかと思ったんだが…残念だ。
「む?誰だ貴様は?」
テントの中を見回す途中で俺の姿を捉えた優男(見かけはややイケメンよりか?それにしても、確かこんな顔の奴がクラスメイトに居たような…居なかったような…)
「答えろ!誰だ貴様!」
もぎゅもぎゅ
……ん?物を食べる音が聞こえる…?
俺は騒ぎ立てる男を意識の外に追いやり漂う匂いと咀嚼する音の発生源を見付けるべく意識を優男の後ろに向ける……
…モグモグ「…ミューのご飯」はふはふ…「マジうま」もぐもぐ……「流石はミューだ、うん」もぎゅもぎゅ…
………………?
今なんつった!?まさかと思うが……
「あーーー!?」
俺がピクリと反応すると同時に叫び声が響き渡る…間違いなくミューレの声だ。
「トーマさんの為に用意した私のシチュー!何でウルが食べてるのぉーー!?」
やっぱりかぁぁぁぁぁ!!
優男の後ろに居たのは小さめの片手鍋を持ちつつ空いた手には木製の大きいスプーンを持ち、感想を挟みつつひたすら食べ続ける女の子が居た。
「すぐに返しなさい、ウル!」
ミューレがウルと呼ばれた少女に駆け寄り、すかさず片手鍋を奪還するも……
「ごちそうさま、ミュー」
「あああぁぁぁぁ………………珍しく良質の鶏肉が手に入ったから作ったのに……」
……ミューレのあの崩れかたから予想するに、殆ど食べ尽くされてしまったようだ……食べたかった……3日ぶりのシチュー…………だけど
「……っ、よいしょっと…」
「む?貴様!何処に行く気だ!?まだ話は終わっていないぞ!」
「邪魔」
「ぬっ!?」
ゆっくりと立ち上りミューレと少女の元に向かおうとする俺の肩を掴もうとする優男に『威圧』を仕掛け動きを怯ませつつ、そのまま歩きだす……あ~腹が減って力が出ない……
「……ミューレ」
「うぅ…ウルの馬鹿…せっかく…」
「ミューレ」
「え?あ…トーマさん……ごめんなさい。トーマさんのご飯、ウルに…この子に食べられて」
「ちょいとごめんよ、行儀が悪いが非常事態ってことで勘弁してくれ」
「え…?」
俺はミューレが持つ片手鍋の中に手を入れると指を使い、僅かに残ったシチューをすくいあげるとパクリと口に入れて味わう
「……これは驚いた…メチャクチャ美味いな、このシチュー」
「!」
「!」
「!」
その場に居た3人が一斉に沈黙する…俺を見たままで
「なんだよ?」
怪訝な顔をしながらも俺の指と口は止まらない。そりゃそうだろう、空腹の悲鳴をあげ続ける俺の胃袋にようやくやってきた貴重な栄養源なのだから!
「くっ…このガキ!ミューレの手料理を食べやがった……俺ですらまだ…!」
凄い形相で俺を睨み付ける優男…そういえば誰だコイツ?
「………フフ、間接キス…フフフ」
若干トリップ気味の少女…いや、お前はスプーンだったろう?間接成分が薄すぎて問題外じゃないか?
「…………」
残るミューレはただ俺をじーっ、とひたすら見ている。まるで何かを待つように…
「……ミューレ、御馳走様。美味しい食事をありがとう」
満足気に片手鍋をミューレに渡し、俺はその場に座り込む
「っ!え、えと……」
「本当にありがとうミューレ、この恩は忘れない。何か俺に出来ることがあれば遠慮なく言って欲しい。このシチューにはそれだけの価値があると思っている」
「…!」
俺と視線を合わせたままミューレは動かない。まるで見定めるようにひたすら俺を見続けるミューレ。だが、訪れた静寂は空気を読めない一声で破られる
「いつまで無視する気だ小僧!!」
「…………」
やれやれ…
「さっきから五月蝿いなアンタ、せっかくミューレのシチューを味わってたのに台無しにする気か?少しは静かにしてろよ」
振り向くと同時に優男に向かって腹ごなしの苛立ちをぶつけることにした。
「貴様、誰に向かって…!」
「知らんよ、誰だお前?」
「ぐっ…うぅ…」
徐々に血管が額とかに浮かび上がる優男。
あー…忍耐力が無いなぁ…こいつ
一方、エキサイトする俺達の近くでミューレとウルは密談を交わしていた…
「あのお兄さん…誰なのミュー?」
ひそひそ…
「えと、私とヴェルが3日前に助けた…」
ひそひそ…
「あー…例の…となると、このままゲイルと戦わせるのは不味くない?目覚めたばかりなんでしょ?」
ひそひそ…
「うぅ…だから、少しでも栄養を取ってもらいたくてシチューを用意したのにウルが………」
ひそひそ…
「…………あー…そゆこと…ごめんね、ミュー」
などと、少女達がひそひそと話している間に事態は少しずつ変化していたのだった……悪い方向に
「くたばれ小僧!!戦技『螺旋撃』!」
ズドォォォォォォン!!!!
「「きゃっ!?」」
ミューレとウル、二人が優男とトーマの方を見ると、ゲイルの振り抜かれた右の一撃がトーマを捉えて殴り飛ばす瞬間を目にしてしまう
「トーマさん!?」
「ゲイル!あんた、なにを!?」