第1章『異世界来訪』第5話~出会いとは転機の訪れ~
誤字&加筆修正しました!
「…私の後ろに誰か居るのですか?」
ミューレが俺の視線を追うようにくるりと後ろを振り返るが誰もいないのを確認するとこちらを見直して首を傾げる
「トーマさん?」
ミューレに呼ばれると、失礼にあたるのではないかと慌ててしまう
何か種族的な特徴なのだろう、うん。
「ご、ごめん…ミューレの背にある翼が……」
「…翼、ですか?」
ふぁさ…ゆっくりと自慢するように片翼を広げ、またゆっくりと閉じる
正直…綺麗だ、と思う。思わずどんな触り心地なのか気になってしまったが……やめておいた方が良いだろうな、うん。
「翼自体は他の種族もお持ちの方はいますから、見たことはあると思いますが…」
無いよ!?ちなみに義母さん(天使モード)のはカウントしません!
地球にそんなの持つ奴は神話にしか存在しないから!
「私のこの翼はその中でも特別なのです」
「…特別?確かにミューレの翼の色はただ黒いわけじゃ無さそうだけど…」
思わず俺は首を傾げるとミューレは僅かな考える素振りを見せると、何かに納得がいったようでなるほど…と呟く
「合点がいきました。トーマさんは異世界人でしたか」
「……まよいご?」
聞きなれない単語に思わず聞き返してしまうと、ミューレは丁寧に説明してくれた。
異世界人とは……
姿形は人族ではあるが、どの種族よりも気・魔力どちらかが極めて高い資質または希少価値の高い特殊技能の発現など、いずれかを秘めた状態で突然出現する来訪者達の事を指す言葉らしく
判断基準は知ってる筈の常識を知らないという事と見知らぬ服装などでわかるらしい
そして、その時初めて気付いたのだが……
俺の服が……いつの間にか着替えさせられてたよ……全部、まるっと……
「?」
ミューレは、自分自身を確認し始めた途端に動きを止めた俺を見て再び首を傾げてしまう…そりゃそうだ、急に止まれば反応するよなぁ…だが、誰がやってくれたのか確認ぐらいはしないと不味い気がする…
「あ、えーと…ミュ、ミューレ?俺の着てた服だけど……」
「あ、それなら乾かしてそちらの籠の中にいれてありますよ」
「そ、そう…ありがとう」
すでに乾燥済みかよ!?俺って何日寝てたんだ!!
「ちなみに経緯を説明すると、3日ほど前の話になりますが……トーマさんはこの近くの海域にポツンと浮かんでた所を私達が見つけまして、ここまで運ばさせていただいたのです」
3日も寝てたのかよ、俺……つーか、浮かんでたの?よく溺死したり魚に食われたりしなかったなぁ……
まぁ、あんな高さから落ちたんだから命があること自体が奇跡だな……
ぐぎゅるるるる……
「……ぉ?」
「あら…?」
何か意識したら急にお腹が鳴り出したよ…そりゃそうか、3日も飲まず食わずって育ち盛りには厳しいっての…
俺のお腹の音を聞いたミューレは一瞬、キョトンとするとすぐに微笑みを浮かべた……うん、やっぱり可愛いな…って、命の恩人に不謹慎だな俺…ちょっと自重しよう…
「うふふ♪お話の続きは食事の後にしましょうか?」
「あ、いや……何というか助けてもらった上に食事の世話までしてもらうわけには…正直、申し訳無いというかだな…ぶっちゃけると払えるお金が無いんだ……」
しどろもどろに遠慮を申し出ると、ミューレの表情が途端に睨み付けるように切り替わる
「……貴方には私がそのような薄情な者に見えますか?」
「……はぃ?」
…何かミューレの翼が黒い輝きを放ち始めたぞ?ヤバい感じがする…
「トーマさん…貴方には私が《異世界人》であることを知った上で食事の代価を払えと迫るような悪女に見えたのですか?」
「…………っ!」
こわっ!?今度は笑顔だけど……笑顔の中に怒りのオーラが見えた!これはヤバい!たまに千鶴や義母さんもする笑顔だコレ!
「す、スミマセンでしたぁぁ!?」
俺は咄嗟に頭を地面に擦り付けるように下げる!
「…………」
ミューレは無言で俺を射抜く視線を放ち続ける!物凄くチクチクする!
「けしてミューレの事をそんな風に見た訳じゃなくて!助けてもらった上に看病までしてくれて!そのうえ洗濯までしてくれたし、更に食事までなんて…いくらなんでも甘えすぎだと思っただけで!ミューレには感謝してもしきれない恩が出来たわけだし、これ以上は……」
「ふぅ……もういいです、トーマさん」
「……え?」
「食べたくないのか?食べたいのか?どちらなのかを聞かせてください」
「是非、食べたいです!正直言うとお腹が空きすぎて限界でした!」
「ふふ…最初から素直に仰ってくだされば良かったのに……少し待ってて下さいね」
そう言うとミューレは立ち上がり、入り口(といっても布で塞いでるだけって感じだけだが)っていうか、今気づいた!結構広いけどテントかこれ?よく見たら何やら調度品とかもあるし……とはいえ、余りジロジロ見るのも失礼だよな……もう少し横になってミューレが戻ってくるのを待つかな…
そう思いすぐに横になって目を閉じる…空腹感が半端じゃない…疲労感、というか気怠さもあるが、これは目覚めたばかりだからだろうな…まだ、身体が順応してないって事だな…
などと考え事をしていると、漂ってくる美味しそうな匂いに反応して再び鳴いてしまう俺のお腹……よしよし、もう少し待とうな~
「…お腹、余程空いてたんだなぁ俺……」
美味しそうな匂いが近付くと同時に話し声も聞こえてきた…ミューレの他にも誰か来たのか?