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ハートの心

作者: 碧蜜柑

心臓くんは、今日も元気に血を全身に送っています。心臓くんはある日疑問を抱きました。

「僕らの心はどこにあるんだろう?」

心臓くんは近くの肺くんに尋ねました。

「僕らの心はどこにあるか知ってる?」

肺くんは、忙しそうに答えました。

「さあね、僕は息をするのも精一杯で考えてる暇がないな。」

心臓くんは少し考えて胃くんに尋ねました。

「ねえ、胃くん、僕らの心はどこにあるか知ってる?」

胃は眠たそうに答えました。

「さあね、僕は食べ物を腸に送るので精一杯さ。今だってやっと仕事が終わって休んでたんだから、そっとしておいておくれよ。」

心臓くんは、また少し考えて腸くんに尋ねました。

「ねえ、腸くん、僕らの心はどこにあるか知ってる?」

腸くんは怒ったように答えました。

「今の胃の話聞いてた!?僕は今、食べ物が送られてきて忙しいの!考えてる暇なんてないよ!」

心臓くんがしょんぼりしていると、いつもは無口な肝臓くんがこう言いました。

「脳に聞いてみなよ。彼はとても物知りだから。」

心臓くんは目をキラキラさせて肝臓くんにお礼を言いました。

「ありがとう!脳さんに聞いてみるよ!」


「ねえ、ねえ、脳さん、僕らの心はどこにあるか知ってる?」

脳さんはイライラしながら答えました。

「すべての指令は私が君たちに伝える。それ以上でもそれ以下でもない。」

「でも…。」

心臓くんが言葉を発しようとすると、脳さんはさらにイライラして、こう言い放ちました。

「いつも通り、命令通りやればいいんだ!心なんて必要ない!元気なだけが取り柄のやつにはわからないかもしれないけどな。」

心臓くんはショックを受け、それ以降、何も言わなくなりました。


ある朝、いつものように仕事をしていると、急に脳さんからの指令が届かなくなりました。気がつくと、周りの臓器たちも静かになっていました。心臓くんもだんだん動くのが辛くなってきました。なんとなく、これで終わる…。そんな気がしました。


どれくらい時間がたったでしょうか?心臓くんは動き出しました。でも周りの臓器は皆知らない子ばかりです。

「ここはどこ?僕はどうなったの?」

知らない脳から声が届きました。

「ありがとう、心臓くん、君のおかげで僕たちの体は生きることができた。ありがとう。」

「どういうこと?」

「君の前の持ち主は、脳死してしまったんだ。だから、君の前の持ち主から、僕たちの体に移植されたんだよ。」

「脳さんが…死んだ…?」

心臓くんは何も言えませんでした。あのうるさい脳さんも、構ってくれない臓器たちも大切な仲間だったのに…。

ふと、新しい持ち主の声が聴こえました。

「私、この心臓をくれた人の分まで頑張って生きる…。」

心臓くんは泣きました。前の持ち主と脳さんの死、そして他の臓器たちとの別れを悲しんで。

しばらくして、泣き止んだ心臓くんは、体中に聴こえる声で言いました。

「僕は前の持ち主と、脳さんの分まで生きます。元気なだけが取り柄ですから。」

心臓くんの心はここにありました。様々な思いのなかに。

身体中から、大きな拍手が聴こえた気がしました。


終わり

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― 新着の感想 ―
[良い点] 臓器移植の童話という、珍しいテーマで、物語のテンポも良く、面白かったです。
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