忘れ物
「おはよ!陽介!」
俺の名は 桑田 陽介。
別にたいした特技もないどこにでも居る高校生…だと自覚している。
「ねぇ、おはよってばぁ~!」
俺にしつこく話しかけてくるのは同じクラスの女子で 坂崎 玲奈 。
一応俺と玲奈は幼稚園からの幼馴染で家もそこそこ近く、昔からよく遊んでいた。
「あぁ〜ハイハイ。おはよう、おはよう。」
「何その塩対応〜!ぶっー!」
ふてくされている玲奈を横目に俺は1限の授業の準備を始める。
…がしかし重大なミスに気がついてしまった。
「ふ、筆箱…忘れた。」
まさかそんなはずは、と何度もカバンの中を漁るが無い物は無い。
学生の刀とも言われる筆箱を忘れるような日がくるとは思ってもみなかったのだ。
「なにー?陽介筆箱忘れたの~?」
玲奈が先ほどの態度とうってかわり、自慢げな態度をとり始めた。
「るっせーな、お前には関係ねーよ。」
少し小馬鹿な口調で玲奈にそう言い放ち、隣のクラスの友人にシャーペンと消しゴムを借りに行こうとした刹那、玲奈が急に俺の手を両手で握りしめた。
「な、なに…まさか怒ってる…?」
玲奈は普段はとても明るく元気っ子だが、前に1度喧嘩した時に全治2週間の怪我を負わされたことがある俺はその時、何かしらの覚悟とトラウマが頭を巡回するのを感じた。
「ち、違くて…その…もしよかったら私の…使わないかな…って何言ってんだろ私!」
その時の玲奈は今まで見たこともないほど頬を赤く染め、そして見るからに焦っていた。
触れている手から手汗が染み出ているのがわかる。
「い、いいけど…玲奈はいいのか?」
玲奈は大きく頷くと自分の席に戻って行った。
「はい!シャーペンと消しゴム!」
「あぁ、ありがと…。」
玲奈はそれだけ置いていき再び自分の席へ戻った。
「…ピンクのシャーペンて…使いずら。」
そう呟いて今日も俺の学校生活は始まった。
玲奈視点からのバージョンも執筆予定です!
よろしければご覧くださいませ。