表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お嬢様は冒険の旅に出られるようです  作者: カツオ節のタタキ売り
9/11

お嬢様は私がお守りいたします

約5日ぶりの更新!遅くなってごめんなさい

なんか学校始まるとか課題やんなきゃとかゴニョゴニョ………

しかしそれでもわすれてなかった続きの更新!

そんな根性の第9話!どうぞ!

22時08分


ついにこのときがやってきた

これから、父さんの乗るシャトルにもぐり込むのだ


「……大丈夫かな…大丈夫…嫌でもやっぱり…大丈夫…自分を信じて…自信を持つのよ…そうよ私はキャッツアイ…何だってできる…私はとびきりいい女…見ーつめるキャッツアイ…えーんじゃぷれいんだんしんっ…みーどりいr」

「お嬢様、自己暗示は心の中でなさってください。捕まりたいんですか?」

「………………ゴメンナサイ」


と言っても、もうすでにシャトルの入口付近の影にいる

考えてみたら、ここまで来たら自己暗示もういらないじゃん

うわハズ


「しかし、ここまで上手く忍び込めるとは正直驚きです。もう少し手間取ると思い、早めに出発いたしましたが必要なかったようですね」

「………………私はアンタのこれまでの器用さに心底驚いたけどね。いまさらだけどレイって何者よ」

「………しがない執事にございます」


ざっくり説明すると、ここはなんと一宮亭の地下から通じる道を少し行った先にある、一宮財閥宇宙開発部門専用緊急用小型発射台である。この長い名前は建前で実際は今回の打ち上げを秘密裏に行うためにごくごく最近急ピッチで父さんが造らせた施設のようだ。そのため書斎を見つけたときにはまだ存在せず、私も知らなかった。それをレイが父さんの「会社」のパソコンをしれっとハッキングして気づいたらしい。急に造られたためセキュリティは監視カメラと見張り程度しか配置されておらず、レイがカメラをたやすくハッキングし、どこからか持ってきた制服で整備業者になりすだけで簡単にここまで来れた。

………もう一度聞きたいんだけど、アンタナニモンだよ

あとはすでに気づかれないように、開けっ放しの入口からもぐり込んで地上を離れるまで父さんに見つからない場所に隠れてじっとしてる。発射してしまえばこっちのものだ。いくら騒いでも引き返せまい。


「しかし、妙でございますね……」

「何が?」

「容易過ぎる、いくらこの施設が急に造られたとはいえ、仮にも国家最高機密のセキュリティとは思えません」

「いやでも、そんなに広い場所でも無いし、入れそうな場所もさっきの入口くらいしか無かったから監視カメラがあれば十分だと思ったんじゃない?」

「そうも考えられますが………」

「それに、まさか財閥のパソコンハッキングしてまでこんなとこから何か盗もうなんて企むアホも、それを実行するなんて無茶をするバカもいないでしょ」

「………その場合、我々はどうなるんですか」

「…………………で、でもいいじゃん!結果ここまで来れたんだからさ」

「それはそうなのですが………」

「それよりさ、どうやって忍び込むの?開けっ放しって言っても入口に警備員がいるよ?」

「はい。彼には申し訳ありませんが、スタンガンで少し眠っていただきます」

「ここにきて随分と荒っぽい手段にでたわね………」

「しかし、これが一番確実でございます。入口までは、最終チェックの整備員になりすまし周囲をあざむきます。入口の目の前は発射装置や蒸気で死角になるので強引な手段でも問題ありません」

「じゃあ、もう行った方がいいんじゃない?」

「いいえ、旦那様がまだシャトルに入っていないようです。もし警備員ともめている間に旦那様が来たら全て水の泡でございます」

「あ、そっか」

「………静かに、来ました」

「………………」


父さんだ

ゆっくりシャトルの入口に向かって行った


が、急に立ち止まりポケットから何かを取り出した


あれは………携帯?


ピリリリリリリリ


「「!!!!!」」


突然、作業服と一緒にレイに渡された、工具の入ったバッグのポケットから大きな音が鳴った

急いで探ると携帯が1台入っていて、画面には「代表取締役 一宮一孝」と表示されていた


「「………………」」


恐る恐る通話ボタンを押す


「………………出てきなさい、全て知っている」


とだけ言って切れた、間違いなく父さんの声だった


「「………………………………」」



シャトルの入口の正面で、私達3人は向かい合った


「……いつから気付いてたの?」

「最初からだ」

「どういうこと?」

「実は、我が家で雇っている使用人全員の制服には盗聴機が仕込んである。財産目当てで我が家に入り込もうとする輩もいるかもしれないからね」

「………………」

「制服に盗聴機なんて……どうやって………」

「袖に付いているボタンだよ。それくらいの大きさの盗聴機なら作れるし、まずそのボタンを触るようなことは普通に生活していたら無いだろう?」

「でも、それって犯罪じゃ……」

「もっと大きな犯罪を防ぐための手段だ。やむを得ない」

「でも…でも………」

「そんなことより」

「!?」


レイが私の言葉を遮った


「何故もっと早く我々を止めなかったのですか?私がこの話をお嬢様に持ちかけたのは2週間前です。流石についさっきまで気付いてなかったわけではありますまい」

「そ、そういえばそうだよ!なんで?」

「……………レイ、君なら気付いているだろう?」

「………………」

「え?そうなの?」

「………………」

「……理由は簡単だ。ハルに会いたかった。ただ、それだけだ」

「………え」

「私は本来、あの時以降ハルには会えないことになっていた。だが、ハルの方が私を追いかけてくると言い出した。嬉しかったよ。完全に嫌われたと思ったからね」

「………………」

「だから、あと少しでも思い出を作りたいと思ったんだ。娘の最後の言葉が自殺宣言なんて死んでも死にきれない。ただの父さんのわがままだ」

「………あのときはゴメン」

「いや、いいんだ。話すのが遅れた父さんが悪かった。ああなるのも無理はない」

「………そんなこと」

「だが」

「………」

「本当にここに来たということは、あの時と気持ちは変わってないんだね?」

「………うん、私やっぱり父さんと行きたいよ!私も、母さんを助ける手助けがしたい!」

「………………止めなかった私が言えたことでは無いが、やっぱりそれはできない」

「………」

「この間言ったこともそうだが、なによりハルが死んでしまうかもしれないと考えると、どうしても連れていけない。だから、待っていてくれないか」

「………………それなら」

「スタンガンはお貸し出来ませんよ。お嬢様」

「………レイ」


見抜かれたか………


「………これだけがわからないんだがレイ、君は一体どういうつもりなんだ?」

「………と、おっしゃいますと?」

「言い方は悪いが、君はハルをそそのかしここまで連れてくるためにハッキングと不法侵入という犯罪までしでかした。そこまでしてハルに協力した理由はなんだ?」

「………………」

「それと、ここまでしたにも関わらず、私にバレたというだけであっさりでてきたのは何故だ?それこそ、そのスタンガンで無理矢理ハルを送りだすこともできるのにそれをしない。明らかに行動が矛盾している。君はハルにどうなってほしいんだ?」

「………………」

「………レイ?」


私も気になってはいた

これらのことがレイに与えるメリットは1つも無いのに、どうしてレイはこんなに協力してくれるんだろう、と


「………旦那様と同じでございます」

「………?」

「私はお嬢様に、1人になっていただきたくないだけです」

「…どういうこと?」

「……失礼ですが、先日旦那様がお嬢様と例の話をされて、お嬢様が1人になるかもしれないという考えが出たとき、お嬢様の表情は見るに耐えないものでした」

「………………」

「心の中では絶望と恐怖が入り交じり、終いには自分の命を省みない発言をした。もしもこのまま、本当にお嬢様が1人になってしまわれた場合、どのような状態になってしまわれるかを想像するのは難しいことではございません」

「………………」

「だから私はお嬢様を1人にしないために協力いたしました」

「………娘のことを思ってくれていたことには感謝しよう、だが、それならば何故諦める?」

「………いいえ、私は何も諦めてなどおりません。むしろ今のこの状況こそが私の計画通りなのでございます」

「………何?」


………わけがわからない。私も父さんもそう思っていた

すると、レイがとんでもないことを言い始めた


「………旦那様もお嬢様も、家族を失うことで1人きりになってしまうとおっしゃられました。それはすなわち、私ではお嬢様を1人じゃないと感じさせるには足りないということになります」

「え、いや、違っ、私そんなつもりじゃ……」

「かまいません。そうなるとやはり、お嬢様を1人にしないためには、旦那様がそばにいなくてはなりません。しかし、このままでは旦那様は死への旅路にすすむことになってしまう」

「………………」

「ならば、行かせなければ良い。そうは思いませんか?」

「一体どういうことだ、話が見えな……」

「私はかつて宇宙飛行士を目指したことがありまして、そのときに宇宙に飛び立つ権利を取得しております」

「「!?」」

「さらに、経験はともかく、知識ならば旦那様に匹敵すると思っています。精密機械の操作や自己の治癒程度なら簡単にできる」

「お、おいレイ!」

「そのうえ、単純な身体能力なら私の方が上です。サンプルが厳しい環境にあっても採取できる可能性は私の方が高いと思いますが」

「ちょっと!アンタまさか!」

「………………」


まさか、レイは………


「………つまり、宇宙への旅路は私に任せていただき、旦那様は地球でお嬢様と共に私の帰りを待っていてください、ということでございます」

「な……」

「お願いいたします。もうこれ以外、お嬢様を1人にさせない方法が無いのです。私は、旦那様の替わりにはなれない」

「………レイ」

「バカなことを言うな!そんなこと、できるわけが……」

「できるのでございます。事前にこのことは総理に話を通しており、その認可もいただきました。私か旦那様ならば、どちらでもかまわないとのことです」

「だめだ!同じことだ。お前が行けばお前が死んでしまうかもしれないんだぞ!?」

「旦那様が死んでしまわれるよりは幾分マシでございましょう。どのみちどちらかが行かなければならないならば、私の方が適任かと」

「私が許さん!そんなことは……」

「………申し訳ございません」

「!何をする!!はな……」


バチィッ!!


「グッ!」

「父さん!」


スタンガンを首に当てられた父さんは、静かに倒れた


「………………数々のご無礼、お許しください。お嬢様

………………それでは、失礼します」

「待ちなさい!」

「………………」


レイは立ち止まってくれた


「………違うよ、レイ」

「………………………」

「………こうじゃない、私はこんなの望んで無い!」

「……これが最善でございます」


そのとき、警報が鳴った


「打ち上げまで5分前です。残り2分で扉をロックします。乗組員はただちにシャトルに乗り込み、座席についてください。なお、座席のロックは1度座ると安定飛行に入るまで外れません」


「………それでは時間が無いようなので、失礼します」

「………………あ」

「ご安心ください。必ず生きて帰って来ます」

「………………いあ」

「………お嬢様をお願いします」

「………わかりました」


入口の監視員にそれだけ言って、レイは行ってしまった


「………いや」


なんで?


どうして2人とも私のこと聞いてくれないの?


自分勝手に私のためとか言って、私が本当に望んでることなんて全然わかってない


私は


私が望んでるのは


「………陽菜様、事情はうかがっています。さあ、お父様を連れてここから離れましょう」

「………………」


「打ち上げ、4分前です。あと2分で扉をロックします。乗組員はただちに座席についてください」


私は


私が!


「うあああ!!」

「な、何を、グッ!」


気づくと私はスタンガンを握り締めて、警備員の首に押しつけていた


「な、いけ、ま…せ」

「ハア……ハア………」


警備員が倒れたのを確認し、父さんの方を向いて時間も無いので手短に用事をすませた


「じゃあなクソ親父!もう二度とお前の言うことなんか聞かねーからな!帰ってきたら覚えとけよ!」


そう言って私は、シャトルの入口にかけ込んだ







「打ち上げ3分前です。あと1分で扉をロックします。乗組員はただちに座席についてください」


「………………」


これでよかったんだ

これで、お嬢様も旦那様も一緒にいることができる

これでよかったんだ


「………お嬢様」


旦那様の気持ちが、今ならよくわかる

もう二度と会えないかもしれないと思ったら、急に会いたくなってきた

もう少しだけ、最後に話をしたかったな


「………………?」

「ーーーーーーーー!」

「………何の音だ?」

「ーーーーイ!」

「………この、声は……まさか」


その直後、荒々しい足音が、すぐ近くまで迫っていた




「ハア……ハア!あそこか!おーーい!」


わかりやすく座席が並べられた部屋に、レイはいた


「こんんのクソレイ!いるならとっとと返事をしなさい!」

「お嬢様!?どうして!?」

「決まってんでしょ!私も行くわよ!ベルトこうしめんの?」

「何を言ってるんですか!すぐにお戻りください!」

「はあ!?ふざけんな!行くっつったら行く!お、こうか」

「ああ!いけません!それをつけてしまうともう!」



「打ち上げ2分前になりました。扉をロックします。まだ乗っていない乗組員は、持っている無線機で管制塔まで連絡してください。乗り込みが完了した乗組員はただちに座席についてください」


「………だってさ、もう出れないね♪」

「………………なんということを」

「ま、そういうことだから諦めなさい。ふ~やっと閉まった」

「なぜです!なぜこんなことを!」

「決まってんでしょ!母さん助けるためよ!」

「だからそれは私に………」

「あとアンタも助けるため!」

「!?」



ここまできたら、このわからず屋に思ってたこと全部ぶちまけてやろう


「大体私はね!父さんに付いていきたいって言ったけど、死ぬつもりなんて全く無かった!ただ、私が手伝えば生き残れる可能性も上がると思ったから行こうとしただけよ!」

「………ですから、お嬢様には知識も何も」

「だぁから雑用でも何でもやらせりゃ良いでしょ!あれ結構体力使うのよ!」

「な………無茶苦茶だ!」

「アンタだって似たようなもんでしょうが!雇い主のためなら自分の命捨てても良いっての!?」

「私はお嬢様のためを思って!」

「私のためって何?」

「………え」

「私のためって具体的に何よ?言ってごらんなさい」

「………お嬢様のご家族を助け、お嬢様を1人にさせないということです」

「私の家族って誰を指すのよ」

「………それは当然、旦那様と奥様のことでございま………」

「レイもっ!」

「!」

「レイも……アンタも一緒じゃないと嫌だよ!」

「な、何を……」

「アンタさっき、自分じゃ父さんの替わりになれないなんて言ってたけど、ふざけんじゃないわよ!誰がいつアンタに父さんの替わりになれって言ったのよ!」

「………それは例えでございます。私は、旦那様のようにお嬢様を支えられないと言いたかったのでございます」

「アンタねぇ、私が言ってたこと聞いてた!?そんなつもりじゃ無いって言ったでしょうが!」

「………それは」

「結局わかって無いんじゃない。私が本当はどう思ってるのとかさ」

「………申し訳ありません」

「この際だからハッキリ言っとくけどね」

「………」

「私も父さんも母さんも、アンタのこと家族って認識してんのよ!1年執事やってたのにそんなことにも気づいてなかったの!?」

「!?………え、な、そんな」

「だからアンタは!………レイは私の家族なんだからさ。守らせてよ」

「………………お嬢様」

「自分じゃ私を支えられないとかさ、そんな寂しいこと言わないでよ」

「………………」

「私がアンタを守るから!助けるから!アンタも私を、これからもずっと守り続けなさいよ!」

「………………」


レイが黙ってしまった


泣いているわけじゃない


ただ困惑してるんだろう


そう思うと、ちょっとうれしい


あのレイを私が困らせたのだ



「まもなく、打ち上げ1分前になります。カウントダウンを開始します。…60…59…58…57」




「………で?返事は?」

「………………」





レイは少しうつむいて、何か考えたようだが、すぐにこちらにむきなおし、少し、ほんの少しだけ潤んだ笑顔で憎まれ口をたたいた


「………………知りませんよ、どうなっても」

「なによ、私が死ぬとでも思ってんの?」

「………いえ」

「あーでも何があるかわかんない星だしなー。下手すると死んじゃうかもなー」

「………………」


なんて意地悪を言ってみる


「………そのときは、私がお守りいたします」

「………………うん!よろしい!」



「…3…2…1……発射」



「よーし!行くよ!宇宙!」

「はい!」




こうして、私とレイは宇宙に飛び立った


お互いのことを守ると誓って











第9話を読んでくださった方々!ありがとうございます!

長くなりました!多分!これまでのどれよりも長かったと思います!

そしてついに!ついにここまで来ました!出発しました!

ヤッホーーーイ!!

やっとやりたいことができる!やっと書きたいことが書ける!

そう!今までのは前座です!タイトルの通り、これからが物語の始まりなんです!

それでは、次回!第10話から!本当に始まる本作をよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ