お嬢様は真実を確かめてしまわれました
勢いとは思ったより続くものですね、どうも作者です!
前回のお話でお父さんがでてきました。彼もなかなかに濃厚な人物です。ネタにしやすい(笑)
さて今回は、そのお父さんからのお話を聞く回なんですが、はたしてどうなることやら……
朝6時42分
私は望み通り、リプトンのミルクティーにありついていた。
おいしい。
ミルクティーに免じて隣でいじけている父さんのことは許してあげよう。ちょっと私も言い過ぎたし。
「ゴメンね父さん、元気だして。話があるんでしょ?」
「………………………」
?なんだろう、この違和感は………
「もうクズとかケジラミとか○○○○とか言わないからさ」
「あ、あぁすまない…でももう一度言わなくてもよかったんだが……」
それだけ言うと、以外にもあっさりこっちに笑顔を向けてこう言った
「それに……自分でわかっててけしかけたことだしな。……まぁ○○○○まで言われるとは思わなかったが」
…………うん?わかっててけしかけた?
「流石にいくら仕事で忙しくても、娘の好みくらい覚えているさ。あれは、ハルをちょっと怒らせてみたかったんだ」
…………ホエ?チョットオコラセテミタカッタ?
「えと、さっきからちょっと混乱してるんだけど…なんで私をわざと怒らせるの?」
「…………………はは」
なんだろう、さっきから父さんの様子がおかしい………
「え、もう。いじわるしないで教えてよ~」
「………………そうだな。ちゃんと話さないとな」
私はこの父さんの声を聞くまで、今日は父さんとただくだらない話をして、楽しいままでいれると思っていた。
「そ、そんないつまでもいじけた顔してないでさ。さっきのこと本気で言ったわけじゃないんだから」
「悪いけど、別にいじけているわけじゃないよ。ただ、覚悟を決めていたんだ」
「………………覚悟?」
嫌な気分だ……でも逃げられない
「ああ………ハルに、本当のことを伝える覚悟だ」
「………………………………」
「………………時間が少ない、まずは結論だけ先に言わせてもらう」
…………父さんの顔つきが変わった。これはテレビとかでよく見る仕事をするときの顔、いや、それ以上に険しく、どこか悲しそうな顔だった。
自然に私もレイも表情が強張る。
空気が張りついていく中で、父さんは言った
「もしかすると、父さんはもう二度とハルに会えなくなるかもしれない」
冗談では無いことは、すぐにわかった。父さんの目、そして………私にはその予感がしていたからだ
「「…………え?」」
私とレイは同時に声をあげ、同時に違う質問をした
「なんで!?どうしてそんなこと言うの!?」
「どういうことですか旦那様!?話が違います!」
…………話が違う?
私がレイの方をにらむと、レイはしまったという顔をしていた
「ちょっとレイ!どういうこと!?あんた何か知ってたの!?」
「落ち着きなさいハル、レイも本当のことは何も知らない」
レイも………………か
それから父さんは一呼吸置いて、信じがたい………いや、信じたくなかった話を始めた
「まずは、ただ黙って私の話を聞いていてくれ。質問は後でいくらでも聞く」
私とレイは、目を合わせてからゆっくりと頷いた
「ありがとう、最初に確認しておくが、現在、世界中で流行しているウィルスのことは知っているね?」
……知らないはずがない
そのウィルスは「CDウィルス」と呼ばれ、最近では毎日のようにニュースや新聞に出てくるようになり、人々を騒がせている。
語源はCertain Death。直訳で「確実な死」
その名前の通り、このウィルスは感染者の血液を通して体中の細胞に寄生、捕食し、放っておいたら地獄のような苦しみに襲われた後、きっかり1年後には100%の確率で死に至らしめるという非常に恐ろしいものだ。
「我々一宮財閥を含め、あらゆる医療機関が躍起になって研究を進めているが、今のところ確実な治療方法が存在しない。
悔しいことに、感染して3時間以内に感染者の血液を全て入れ替え、ウィルスが細胞を食い始める前に体外に追い出すというあまりに強引なやり方が、成功率37.3%とこれでも一番高い。だが、このやり方は患者への負担が恐ろしく大きいうえに、全部入れ替えてもその体に馴染める血液なんてそうそうあるもんじゃない。しかもそれを3時間以内、手術にかかる時間を考えると1時間ちょっとで見つけて現場に用意するなんてほぼ絶望的だ。
ゆえに、手術にさえ至らず死んでいく患者が大半をしめる。だから、手術を試みた者、受けた者を含めての感染後の死亡率は…」
「…………96.8%だよね……父さん」
「!」
…………当然、知ってる……だって
「どうしてハルがそんなことまで知っているんだ?この数字は混乱を防ぐため、トップシークレットとして扱われているはずだが……」
「ハハ…私は父さんの娘だよ?この家にある隠し書斎も、そこに父さんの緊急用のパソコンとデータがあることも知ってる」
「……………………」
「パスワードを私の幼稚園の出席番号にしたのに気づくのは時間がかかったけどね。でも、やっとの思いで見れるようになったのに、この間どっかに持ってっちゃったみたいだけど……」
「ふうむ……………」
「…………」
「…………そうか……レイに探させたんだな?」
「…………」
「………………申し訳ありません、旦那様…」
「いいよ謝らなくて、レイは悪く無いから」
「………ふむ、社会の事に関心を持つのは立派なことだが、それならなぜ父さんに直接聞かなかったんだ?確かに私は家にはあまり帰れて無いが、口振りから察するにずいぶん前から気づいていたんだろう?それなら聞く機会はあったはずだ」
………娘だからわかる…父さんは今、確実にあせっている…流石に気づいたのかな………
………でも
………遅すぎたね
「………聞いても答えなかったでしょ?」
「………………」
「私がそれを聞くってことは、考えられるのはさっき父さんが言ったように、単純に興味があったから……それと」
「………………」
「………そ…れと」
「………………」
「………母さんが…母さんがウィルスに感染したことを……私が……知った…から」
「……………………………そうだ」
ずっと信じたくなかった真実を確かめてしまった私は……………
…………その場に泣きくずれた
第4話を見て頂いた方々、ありがとうございます!
少し展開を回すのに無理があったと反省しています。
そして今までとはうって変わってかなりシリアスな展開になりました。
思ってた雰囲気と違うと感じた方もいると思います。申し訳ありません。
しかし、私はこの小説を書くにあたって、どうしても今回のような話を書きたかったんです。
理由はここでは言えないので、次回の後書きにて説明させていただきます。勘の良い方なら、次回を読んでいる間に気づくかもしれません。
それでは、また次回をよろしくお願いします。