願うことはただ1つ~ある女の野望~
拙い文章ですが、お付き合いください。
前回の短編の悪役?視点です。
静かな部屋の中で黒い漆黒の髪と瞳の妖艶な女が執事から紅茶を受け取り優雅にお茶をしているとブチッと音がどこからともなく響いてきた。
「あらあら、残念だわ。あと少しで魅了の呪が完成しましたのに・・・。
これで全て切れてしまいましたわ」
音のした方に視線を向けながら軽くため息をついた。
「やはり、複数相手にしたのがまずかったかしら?
私もまだまだ未熟ねぇ」
「複数相手でここまでできたことはすばらしいです。
さすがは伝説の女王様の再来と言われたお嬢様です」
執事の言葉に女は艶やかに笑った。
「貴方にそういわれると嬉しいわ。
王子達を骨抜きにして城を乗っ取りたかったのだけどこうなったら諦めるしかないわね。
まぁ、大体欲しい城の情報は確保できましたし、これはこれでよしとしましょうか。
それに簡単に事が運びすぎてもつまらないですし・・・・」
女はそういうと窓際に立ち、外を眺めた。
「そういえば呪矢を受けた小娘は今どうなってますの?」
「3日程高熱を出し、今は声を失っているようです」
「声だけなの?あれには死の効果もあるはずなのに、効かないなんて・・・・」
「呪矢はまだ、試作段階です。これから影響が出る可能性もあります」
「そうね。でも、効果は即効性が望ましいわ。
あの小娘には邪魔もされたし、死んでほしかったのに!!
ほんとあの男といい、呪が効かないなんて忌々しい」
瞳に憎しみの炎がやどり、カーテンを引き千切るような勢いで握り締めた。
「お父様から連絡はあって?」
「あちらの準備も順調に運んでるようです。あとは例のものが手に入れば問題ないかと」「そう。それが一番の難関ね。
でも、長年の私達一族の悲願ですもの。ここで諦めるわけにはいかないわ。
必ずこの地を手に入れて見せますわ」
妖艶に微笑み、窓から街を眺めるその目はまるで獲物を狙う獣のようだった。
「それでどうしますか?呪が敗れた今、ここにいるのは得策ではないとおもいますが」
「そうね。ここから引き揚げましょう」
女性は扉の方に向かって歩き、扉の側にある男に視線を向けた。
男は何の表情も浮かべず、焦点の合わない目は天井をみつめていた。
「男爵、あなたのおかげで色々と情報が取得できましたことお礼申し上げます。
今まで、お世話になりました。
もう奥様と愛娘のカミーラの元へ逝ってよろしいですわ。
さようならデストリュ男爵」
そう微笑むと女と執事が部屋を出て、扉を閉めると同時にドサッと男爵と呼ばれた男が血泡を吹きながら倒れた。
-数日後-
デストリュ男爵の家から上半身に大きく魔法陣が刻まれた男爵、
寝室では磔状態の男爵夫人、
地下からは血を抜かれた使用人達、
そして書庫では魔法陣が描かれその上に胸に杭を打たれた少女が発見された。
男爵以外は死後数か月は経っている状態だった。
書庫にいた、少女は先週まで学校に通っていたことから、
事件の詳細がわかるまでデストリュ男爵一家は行方不明ということになった。
最後までありがとうございました。