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辛辣の辣 1
汚れた窓に映る空があまりにも綺麗でしたので、ふとあなたのことを思い出し、この手紙を書きました。
私は不器用なもので、ふと心を空想の世界に走らせるとなかなか戻って来られないのはあなたもご存知のことでしょう。
今目の前に横たわる仕事のことなど、まるでなかったかのように、目の前が無機質のデスクが、色鮮やかな、秩序のないもう一つの世界にじゅくじゅくと浸食されていくのです。
怒られて、怒られて、叩かれて、叩かれて、私の心の形は変わってしまったのでしょう。かつてのような無邪気な私は、毎日少しずつ擦り潰されていくことによって、もう大分小さくなってしまいました。水の中にたゆたう心は粉になって、深い深い水底に、次第に沈んでいったのです。
やがて私の深い森は輪郭をつけ、色彩豊かなものになっていきました。そして、窓ガラスに映るビルの群れが、この世ならざる色に浸食されてゆくのを、とうとうはっきりと見てしまったのです。
いつものように、ここよりあとは読まなくても構いません。あなたがこの手紙を持っているというだけで、私はまた生きていける気がしますから。