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十二、反せし者 21

「防げる?」

 花応は目をその電撃から離さずに雪野に訊いた。

 花応は宗次郎に肩を抱かれたまま、そのことを忘れているかのように電流に目を奪われている。

「率直に言って、難しいわね。一応障壁ってのを張るけど……」

 雪野が杖を構え直しながら答えた。

 雪野が構えた先には胸を張る速水の姿があった。胸の前で天井に向けられたその掌の上では、電流が空中に放たれ上へと伸び上がっていた。

 雪野が逆さまに落ちるいかづちのような電流に目を光らせる。電流の瞬きがそうさせる異常に、雪野の目が険しく光った。

「ふふ……」

 速水の電撃はその本人の含み笑いとともに膨らみ弾けるように辺りに閃光をまき散らす。

 煙幕でフタをされた教師で照明よりも明るいその閃光は辺りの影を壁へと写し込んだ。

 そしてその影は弾ける雷光に合わせて歪み揺れて、猛るように千千ちぢに暴れた。雷光は速水の興奮に呼応するかのように、閃光が瞬く度に明と暗を次々と入れ替えながらも衰えることを知らずにほとばしる。

「ジョー! 来なさい!」

 花応がその様子にジョーを厳しい口調で呼んだ。

「ペリ!」

 ジョーが突然の呼びかけにびくりと身をすくませた。今やジョーは教室の一番端まで逃げ惑っていた。

 廊下の壁と隣の教室とを隔てる壁の交わる角でジョーが長い首をすくめていた。その引っ込めていた首を驚きに伸ばす。それでもおっかなびっくりなのかその長い首はへっぴり腰のような角度で歪みながら伸び上がる。

「早く来なさいってば!」

 花応がじれたように床を踏みつける。

「ペリ!」

 ジョーがようやく羽を羽ばたかせた。ジョーは壁際に低く滑空すると速水を遠巻きにして飛び立つ。見るからに遠回りをしてジョーは最後は花応達の背中へと回ってきた。

「よ、呼んだペリか?」

「呼んだわよ。すぐに来なさいよ」

 花応がようやく身を捩り宗次郎の手から肩を外した。

 花応はジョーに向かって軽くかがむとその目を覗き込む。

「ペリ……」

「煙幕よ。できる限り薄く――ううん、何て言うか、密度を薄く、張りなさい」

 花応がジョーに指を指しながら噛んで含ませるように短く言葉を区切りながら言い聞かせる。

「ペリ?」

「いい、あんたのご主人様がピンチなの。あんたも力になりたいでしょ?」

「勿論ペリよ」

「よろしい。じゃあ――」

「はは! ごちゃごちゃやってるじゃないッスよ!」

 花応が全てを伝え終わる前に速水が右手を振り上げた。

 右手の中の電撃はその動きに合わせて噛みついた蛇のように速水の掌を中心に暴れる。

 速水がその手をすぐに振り下ろすと、電撃は掌を離れて雪野に襲いかかった。

「やれやれ、僕も居るんだがな」

 迫り来る閃光に時坂の姿が一瞬で消えて教室の窓際に現れた。

「――ッ!」

 背中に花応達を背負った雪野は逃げようとしなかった。

 突き出した杖を更に突き出してその電撃を真正面から受け止める。

「ぐ……」

 雪野の杖の先で何かが光った。不可視のそれは速水の電流を雪野の杖の前で押しとどめる。

「それか? ショーヘキってのは?」

 宗次郎が花応の前に立ちながら雪野の杖の先に目を凝らす。

 雪野の杖の前の障壁らしき目に見えない壁に速水の奔流のような電撃が襲いかかり続けていた。

「ええ! 全部はもちこたえないわ! 花応をお願い!」

 実際受け切れない電流が端々から後ろに漏れるように弾けている。

「おう!」

 宗次郎が花応の背中を今度も肩を掴んで引いた。

「ちょっと! 急に引かないでよ! てか、まだ途中! いい、ジョー!」

 花応が後ろに引かれながらジョーを指差す。

「ベリ!」

 一緒に後ろに逃げようとしていたジョーがびくりと体をすくませてその場に止まった。

「言った通りにやりなさい! 無理なら、無理で、それはいいから! 雪野の役に立ちたいでしょう?」

「ああああ、当たり前ペリよ!」

 ジョーがその場に何とか踏みとどまる。

「じゃあ、任せるわ! 気合いを入れなさい!」

 花応が宗次郎に後ろに下がらされながらジョーに向かって叫び上げた。

「ペリペリ!」

 ジョーが応えるとともに嘴を大きく開けると、そこからうっすらと煙が吐き出された。

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