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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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僕は三番目の側室

掲載日:2026/06/05

***BL*** 三番目の側室に選ばれた僕。それって、あんまり意味が無いと思う、、、。 ハッピーエンド



 僕は、三番目の側室

 第一王子の彼には、妃がいて。

 他に二人の側妃がいた。

 だから、男の僕を側室にした意味が分からない。



**********



 僕の存在理由は、第一王子を癒す事。

 一年間妃との間に子供が出来ず、一人目の側室を置いた。

 その半年後に二人目の側室を置いたけど、子供は出来なかった。


 とうとう男の僕が側室になった。

 

 ね。僕って必要?どっちみち子供は出来ないじゃん。

 妃達の間に子供が出来ない第一王子は、密かに男を好む傾向があるのでは、、、と言われた。

 それで、僕の出番です。

 僕との、そーゆう関係に刺激され、他の妃の何方どなたかと、子宝に恵まれれば万々歳、、、。


 

 つまりは、そんな存在なんだ。



 、、、無理だと思う。



 そりゃあ、僕は女性が苦手だよ?

 でもね。第一王子は違う。ちゃんと女性が好きなんだ。

 だから、この計画は最初から無理。



 だけど、僕は真っ白い綺麗なウエディングドレスを着たかった。

 だって、素敵でしょ?

 僕に合わせたピッタリなサイズ。

 鎖骨の見えるオフショルダーで、無い胸を意識させない胸元の刺繍。

 ふんわりと広がる裾を、揺らしながら歩いてみたかった。


 結婚は嫌だったけど、ドレスは着たかったんだ。


 それに、王子は僕に興味が無いと思っていたから、初夜の心配もしなかった。



 なのに、なのに、、、何故か王子がいる、、、。


「あの!無理しないで良いですっ!」


王子はベッドに腰掛けた僕の隣りに座り、ぎこちなくキスをしようとした。


「え?」


「だって、男にキスなんて嫌でしょ?!」

「うん、、、まぁ、、、」


 ちょっと傷付いた、、、。


「王子、僕とはその様な事をする必要はありません。無理に関係を持たなくて良いんです」

「、、、」

「僕達には子供が出来ないから、その様な行為があるか無いかなんて、誰にも分からないでしょ?」

「でも、、、」

「朝までベッドで、ゆっくり眠って下さい。それだけでシーツが乱れ、行為があったと思われる筈です。僕も同じベッドを使うのは嫌だろうけど、そこは我慢して下さい」

「、、、済まない」

王子の顔を見ると、隈があって肌の調子も悪かった。

「大丈夫です。僕も愛の無い行為は出来ませんから、、、」



**********



 僕には本当は、好きな人がいた。



 でも、その人も女性を愛せる人だった。

 僕だけが、どうしても女性を愛せない。

 父上が釣書を持って来る度に、理由を付けて断っていた。若い内は許された我儘も、とうとう我慢の限界だった。

 父上と大喧嘩になり、王子の側室にさせられた。



 これが、本当の理由。



*****



 側室との結婚は、一月ひとつきベッドを共にする。一月ひとつきと言っても、月の物が始まれば必要無くなる。

 月の物が有れば、そこから体調を管理され、次の行為をいつにするか決められる。


「だから、私はプレッシャーの塊なんだ」


ポツリと王子が言った。


「妃の事も、嫌いでは無かった。寧ろ、愛情はあった、、、。しかし、結婚して半年程すると、その行為は愛では無く、義務になった、、、」


 ただでさえ、第一王子と言う激務で、更には愛の無い夜の行為、、、。


 大変なんだな、、、と思った。


 王子はウトウトと眠り始め、徐々に深い眠りに就く。


 まぁ、僕の部屋に来た時位、愚痴を言って、ゆっくり眠れば良いと思う。



*****



 正直さ、、、側室って、昼間何すれば良いんだろう、、、。やる事も無いし、退屈だ。

 他の側妃は何をしているんだろう。

 でも、見に行く訳にもいかないし、、、。


 僕は自分の部屋から出ない。

 男の側室なんて、気持ちの良いモノじゃ無いだろうし、トラブルにも合いたくない。

 ひっそりひっそりと日陰を歩き、誰の目にも止まらず死んでいきたい、、、。

 最近はそんな事ばかり考えている。


「何を馬鹿な事を仰っているんですか」


ピシャリと言われた。

「いつ王子に触れられても良い様に、美しくかんばしくなさって下さい」


 えー、、、めんどい、、、。


「そういうのは、王子妃や側妃に任せれば良いと思う、、、」

と言うと、ジロリと睨まれた。


 チェッ、、、。


「ねぇ」

僕が自分の屋敷から連れて来た侍女。年齢は母上より年上。でも、僕が赤ちゃんの頃から僕の身の周りの事をしてくれていた。

 僕の事を何でも知っている。

「このマッサージ、僕に教えてくれない?」


 ピクリと反応した。


「何故ですか?」

マーサは僕の掌を揉みほぐしながら聞いた。

「王子にやって上げたいんだ」


 侍女はマッサージの手を止める事無く考えた。

「お優しい坊ちゃんですね」


 あ、これは嫌味だ、、、。


「毎晩、ただ眠りに来るだけの王子に、貴方様自らマッサージを施すなんて、、、お優しい、お優しい」


 にっこり笑う目は、全く笑っていない。


「マーサ、、、。僕は、側室になった事、後悔して無いよ?確かに、王子はこの部屋に眠りに来るだけだけど、別に良いじゃないか。昼間は激務なんだ、僕の所に来た時だけは、ゆっくり休んで貰おうよ」

「しかし、坊ちゃま、、、」

「マーサ、、、」

「もし、王子妃や側妃の何方どなたかにお子が出来れば、、、」

「別にどうにもならないよ。僕には最初から子供なんて無理だし。いつか、此処ここを追い出されるだけ。その時の為に、僕は僕の為のお金を使わないで貯めているし、王室からもお手当を頂いている。だから、僕は王子を癒して、王子妃や側妃と仲良くなって貰えば良いんだよ」


 そう、僕にはちゃんと予算がある。

 本当はドレスやアクセサリーを買ったり、お茶会を開くべきなんだろうけど、僕はこの部屋から出る事は無いから、使う事があまり無い。

「そうだ、僕の予算でマッサージに使う香油とか道具を買おうよ」


 マーサは「仕方ありませんね」と言う顔で微笑んだ。



*****



「お疲れ様です」

「君も寝ていれば良いのに、、、」


 王子は疲れた顔で入って来た。


 僕は早速リラックス効果のあるお茶を淹れる。

「良い香りだね、、、」

ゆっくりと召し上がる。

「お食事はいつ摂られましたか?」

「2時間程前に軽く」

「今日は、王子に触れても良いですか?」

「え?」

眉間に皺、、、。別に変な意味じゃ無いんだけどな。

「少し、マッサージを習ったので、試したいのです」

「君が?」

「はい、習ったものの、此処に来るのは侍女のマーサと王子だけなので、実験台は王子です」

「実験台にされるのか」

と笑った。


 此処に来て、初めて笑ったかも知れない。

 いつもは愛想笑いだった。


王子はベッドに横になる。

「失礼して、お顔を触らせて頂きます」

「顔のマッサージをするのかい?」

「そうです。王子はいつも疲れた顔をされているので、貴方のお顔を見ると心配になります。他の方も、不安になると思いますよ」

「では、お願いしよう」


 僕はオイルを手に取り、マッサージを始める。


 ほんの数分で王子は眠ってしまった。

 かなり疲れているんだ。

 僕は起こさない様に最後まで仕上げる。

 本当は仕上げに水分を摂って欲しいけど、余りに気持ち良さそうに眠っているので、枕元に水差しを置いて、僕はソファで眠った。



**********



 私は夜中に喉が渇いて目を覚ました。

 ベッドが広い、、、?

 いつもは隣りに誰かいるのに、、、。


 ぼんやりする頭で部屋を見回す。

 

 月明かりの当たらない、部屋の奥。ソファで寝ている彼を見つけた。


 ホッとした、、、。


 枕元の水差しに気付き、コップ一杯の水を飲む。

 喉の渇きが癒やされない。

 もう一杯、、、。


 その後、私は静かにベッドを出る。

 ソファに近付くと、リラックスして眠る彼。


「セシル、、、」

私はそっと彼の頬に触れた。

 彼が目を覚ます。


「ジェフリー、、、」


私では無い男の名前を呼んで、再び眠りに落ちた。



**********



 彼にも想い人がいた、、、ただ、それだけだ、、、。



 しかし、私の胸はチクリと痛んだ。

 もし、彼と「ジェフリー」が愛し合っていたのなら、二人の仲を切り裂いたのは私だろう、、、。



 申し訳無かった。



 それと同時に、彼に愛される「ジェフリー」がほんの少し羨ましいと思った。



 私には妃と側妃がいると言うのに、、、。、



 彼は男だったから、慣例通り毎晩彼の元に向かう必要は無かった。

 しかし、彼の元は癒される。



**********



 毎晩マッサージをした。最初は、顔だけ。その内、顔が柔らかくなって、余り時間が掛からなくなった。

「今日は掌に触れますね」

ゆっくりゆっくりほぐして行く。


 王子の呼吸が深くなる。

 力が抜けている。


 左の手が終わり、僕は右側に回り続きをする。

 気持ち良さそうに眠っている。

 今日は両手をやって終わりにしよう。



**********



 僕が三番目の側室になって、一月ひとつきが経った。

 

 毎日少しずつマッサージをしたお陰か、王子の顔色も良くなり、身体も楽になった様だった。


 今までは慣例があったから来て下さっていたけれど、そろそろ王子妃と側妃達のお部屋にも行かれるだろう。

 今日は久しぶりに一人でのんびり出来そうだな。



 なんて呑気に考えていたら、扉をノックする音がした。


 何で?


 僕はそっと扉を開ける。

「どうされたんですか?」

「いや、、、その、、、」

「どうぞ、お入り下さい。お茶は飲みますか?」

「いつものを、、、」


僕はお茶を淹れながら

「マッサージ、されますか?」

と聞いた。

「頼む」

「どこか気になる場所はありますか?」

「目が、、、」

「承知致しました」

「、、、済まない」


 丁寧にマッサージをする。

 くるくる、くるくる、円を描く様に。


「どうですか?」

「気持ち良い、、、」

最近はマッサージをしながら眠り込む事も無くなった。最後にコップ一杯の水を飲む。


「王子妃様のお部屋とか、お訪ねしなくて宜しいのですか?」

「、、、君といるとリラックスするから、つい来てしまうんだ」

一月ひとつきこちらでしたから、皆様淋しい思いをされていると思いますよ」

「、、、」

「王子?」

「君には、好きな人がいたのか?」

「?」

「、、、ジェフリー、、、」

「どうして、、、?」

「一度だけ、君が寝惚けて名前を呼んだ、、、。もし、愛し合っていたのに、側室になった為に彼を諦めさせたのなら、申し訳無いと思った」


 僕は、紅茶を淹れる。


「違います。ただの片思いです」

「片思い、、、」

「凄く好きだったんですけど、彼は貴方と同じ、女性を愛せる人です。、、、僕にはそれが出来なかった。彼に婚約者が出来て、父にお前は何故婚約しないんだと責められました、、、」

「私に子供が出来ないから、女性に興味が無いんじゃないかと言われた時期があったな、、、。それで、君が?」

「多分、そうです」

「、、、」

「だから、王子が気になさる事ではありません。妃様か側妃様が御懐妊されたら、僕は必要無くなり、此処ここから出て行く事になると思います。男の側室なんて、みんな嫌だと思いますし」

「君は、女性が嫌いなの?」

「そうです、、、。ただの友人なら大丈夫です。しかし、恋愛感情には繋がりません。身体を触れ合う事が出来ないのです」

「私は二人目の側室が来た頃から、夜の行為が出来なくなってしまった。重圧に負けたんだ」

「存知上げております。ですから、男の僕が側室になりました。僕と夜の生活をして、あわよくば、、、と言う所でしょう。でも、そんな事は無理です。そう言う事は、デリケートな問題ですから、女がダメなら男で、、、と言う訳にもいきません。それよりも、王子は大変疲れている様でしたから、貴方がリラックス出来る様に努めました」

「済まない」

「とんでもありません、ちゃんと僕の為の予算を付けて頂きました。僕ね、こっそり貯めているんです。いつか此処ここを追い出されても良い様に」

僕は、悪戯っぽく人差し指を立てて、唇に当てた。

「誰にも言わないで下さいね。だから、王子は心配しなくて良いのです」



 彼は小さく笑った。



**********



 彼といると、癒される。

 それは、マッサージの効果や、お茶の効果ばかりでは無い。彼の性格が私には合うのだろう。彼との時間は、気を使わなくて良い。



 毎晩でも此処ここに来たいと思う。

 


「そう思うのは、俺が君を欲しているからだろうか、、、」


 素直に聞いてみた。


「そうですね、きっと僕のマッサージの技術が欲しいのでしょう」

と澄まして言う。



 飾らない君が好きだ、、、。



 、、、好き?、、、。



**********



 何で?

 

 何で?王子は毎日来るんだろう。


 マッサージの効果もあるし、別に毎日来なくても良いと思う。

 それより、王子妃や側妃達の部屋に行かないとダメじゃないかな?


 毎晩、僕の所に来ても赤ちゃんは出来ないんだよ?



 と、言う事で、王子に聞いてみる事にした。



「何故、来るんですか?」

「え?」

「毎日、毎日、どうして僕の部屋なんですか?」

「え?だって、来たいから、、、」


 最近、王子も慣れて来て、この部屋ではリラックスして話す。


「そろそろ他のお部屋にも行かないと、、、」

「嫌だよ、、、」


 我儘も言える様になっている、、、。


「王子、、、リラックスし過ぎです」

「良いじゃ無いか、、、此処ここでしか素に戻れないんだから」

「分かりました。言葉使いは良いです。僕も、そんなに上手じゃ無いし。でも、毎日此処(ここ)に来てはいけません」

「えー、、、。今更あっちになんて行けないよ。行っても、彼女達の機嫌が悪くて怖いんだもん、、、」


 言葉使いっ!


「それは王子妃だけですよね?」

「え?違うよ。みんなだよ。行くと「どうして来てくれないんだ」とか責めるし、「愛が足りない」とか、誰かに贈り物をすれば、もっと良い物を欲しがるし、喧嘩しない様に同じ物にすると、機嫌が悪くなるか、泣くかなんだよ。本当に行きたく無い、、、」

「、、、」


 確かに、面倒臭いな、、、。


「じゃあ、どうするんですか?」

「だから、毎日此処(ここ)に来るよ」

「いや、ダメですよ?!」

なんで?!」

「毎晩この部屋に泊まっていたら、本当に噂通りだと思われちゃいますよ?!」

「良いよ」

「良く無いです!」

「、、、どうして?」

「だって!」

「だって?」


 ん?どうしてダメなんだろう、、、?


 僕には答える事が出来なかった。



**********



「昨日、妃に子供は側妃に産んで貰いたいと言われてしまった、、、」

「え?」


 一体何が、、、。


「君に言われて、妃の部屋に行ったんだ。彼女は、俺を拒んだよ。いずれ王妃になるのに、出産して公務を疎かにしたく無い。何の為に側妃を許したと思っているんだと怒られた、、、」

「、、、そんな」

「しかも、最後は授乳でドレスが着られなくなるのは嫌だと言われた、、、」

「、、、お強いお妃様ですね、、、」

「うん、本当に、、、。でも、素晴らしい人だよ。ただ、母親には向かないかな、、、」

「そ、、、その様ですね、、、」

 

王子は苦笑した。


「セシル、、、マッサージして貰っても良いかな」

「勿論です、王子」


 僕は、出産したく無いと言った王子妃の気持ちが分からなかった。



*****



「ねぇ、マーサ、、、子供を産みたく無い女性っているんだね、、、」

「どうされたのですか?」

「王子妃は、公務が疎かになるから、子供が欲しく無いと言ったそうなんだ、、、」

「そうですか、、、」

「僕が女性だったら、やっぱり好きな人の子供が欲しいよ、、、」

「お産は命懸けですからね、、、。怖いのだと思います」

「そっか、、、」

「無事に出産されても、身体が元に戻るには時間が掛かりますし、情緒も乱れますからね。公務に何らかの支障を来たすのは事実です」

「そうなんだ、、、」

「王子妃様が、幼い頃から王妃になる為に教育を受けていたのなら、その様にお考えになる事もあるかも知れませんね」



*****



 相変わらず、王子は毎晩やって来る。

 でも、今日はいつもと違った。

「明日から、第一側妃の部屋に行くよ」

僕はマッサージを続けた

「一週間は彼女の元を通う事になる、その後は第二側妃の所へ、、、」

「それでは、今日は丁寧に仕上げましょう」

「頼むよ」


 僕達は無言で過ごした。

 彼もウトウトしていたけど、深い眠りに着く事は無い。


 頭の中で、この人が毎晩女性を抱くのかと思うと、何だか凄く嫌な気分になった、、、。


 1分でも1秒でも長くいたい、、、。そう考えながら、丁寧に丁寧に施術した。

 マーサが教えてくれた事を思い出しながら、王子の身体全てをほぐす。

 最後に水差しの水をコップに注ぎ

「どうぞ、、、」

と手渡す。

「有難う、、、身体が軽くなったよ」

と微笑んでくれた。



 優しい笑顔、、、。

 僕の馬鹿、、、この人を好きになっちゃダメなのに、、、。



 そう思いながら、ニコリと笑った。



*****



 此処ここに来てからもうすぐ一月ひとつき半が経つ。


 昨晩、一人の夜を過ごした。


 淋しかったな、、、。


 ベッドが恐ろしく広くて不安になった。


 これから毎日一人なんだ、、、。


「あんな事言わなければ良かった、、、」

 王子妃や側妃の元に行って欲しく無い、、、。



*****



 マーサは静かにお茶を淹れてくれた。


「はぁ、、、」


僕の目の前に紅茶を置きながら

「恋煩いの様ですね」

と言う。

「恋煩い?」

「先程から、何度もため息をいています」

「そうかな、、、」


はぁ、、、


、、、あ、本当だ。ため息吐いてる。



**********



 第一側妃の元に来た。彼女の身体が、妊娠しやすい期間に入ったからだ。

 

「2ヶ月振りですね」

「そうだな」

「三番目の側室はどんなかたですか?」

酒を注ぐ

「、、、」  

当たり障りの無い言葉を探す。

 こう言う時、セシルを褒めてはいけない。かと言って侮辱する発言もダメだ。


 第一側妃も美しい。妃の美しさとは違う、可愛らしさがある。

 ただ、少し自信過剰だ。

 側妃に選ばれた事により、王子妃より愛されていると勘違いしている。

 実際、愛などは無かった。

 身分の高い、未婚の女性で、マナーや教養があり、健康な女性が選ばれただけだった。

 彼女は我儘も言うし、妃を妃として認めない様な発言をする。


 俺は酒を煽り、側妃の手を引く。

 それだけで、彼女は自分が求められていると思い、俺の瞳をうっとりと見つめた。



 、、、一週間の辛抱だ、、、



**********



 今晩も王子が来ないと分かっているのに、もしかしたらと思ってしまう。


 眠れないな、、、。


 

*****



 毎晩眠れない。


 今頃、王子は誰かと一緒に過ごしているんだ。

 

 側室って辛いな、、、。



**********



 七日間を第一側妃と過ごした。

 明日からは、第二側妃の部屋に行く。

 

 昼間の公務もあるのに、毎晩か、、、。

 1日位間を開けても良いだろうか、、、。

 いや、その1日が「もしかしたら」と思うと、避けられない。


 セシルの部屋に行きたい、、、。 


 半分回らない頭で、彼の事を考えた。


「済まない、、、セシルを呼んでくれ。マッサージを頼みたい」 

護衛騎士が、離れた彼の部屋に走る。

 

 仕事を続けながら、彼が来るまでと頑張った。

 あー、、、隣の部屋に移って来れば良いのに、、、。と、思いながら、一つでも仕事を終わらせる。



*****



「セシル様をお呼びしました」

「入れ」

「失礼します」

護衛騎士が扉を開けて、セシルに入る様に促した。 彼は深く頭を下げる。

「悪いな、、、少し、マッサージをして欲しい」

うけたまわりました」

護衛騎士は、一礼して部屋の隅に立つ。

此方こちらにお願い致します」

応接セットに、持ち込んだマッサージの道具を置く。

 俺はペンを置き、ソファに座った。


 セシルは俺の顔を見るなり

「大丈夫ですか?」

と声を掛けてくれた。

「少し、疲れが溜まっている」

「上着を脱いで頂いても宜しいですか?」

いつもと違う、丁寧な言葉使いだった。

 俺は上着を脱ぐ。

 彼は私の袖口のシャツのボタンを外し、捲った。

「まだお仕事中ですよね。掌をマッサージします。リラックス効果もあるので、、、」 

「済まない」

彼の口角が少し上がった。

「今日の夜は、、、」

と聞かれ

「第二側妃の部屋に」

と答えると

「今日から一週間ですね?」

視線を落としたまま聞いて来た。

 掌に香油を塗り、マッサージをしてくれる。



*****



 マッサージが終わり、彼は片付けをする。

「助かったよ」

「また、何かありましたら、お声掛け下さい」

深々と頭を下げた。



**********



 僕は王子の顔を見て、ギョッとした。

 明らかに寝不足の顔をしていた。

 本当は全身のマッサージをして差し上げたかったけど、机の上の書類を見て諦めた。

 今晩、僕の部屋に来てくれれば、時間を掛けてほぐして差し上げるのに、、、。


 でも、今晩から第二側妃の部屋に行く様だった。

 僕の部屋は、まだまだ順番が回って来ない。


 

*****



「マーサ、寝室にお酒を準備してくれない?」

かしこまりました」

「お願い」

「どんなお酒が宜しいですか?」

「1番度数が高い物を、、、」

一瞬、マーサの動きが止まり、深くお辞儀をした。



*****



 僕は、窓辺にテーブルと椅子を置いて貰った。

 一人用の丸いテーブル。

 椅子は大きめで、僕がすっぽり入る物。

 

 マーサにお酒を準備して貰う。

 ジェフリーが婚約した時も、マーサにお酒を準備して貰った。

 だって、他に、忘れる方法が分からなかったから、、、。


 椅子に膝を抱えながら座り、お酒を飲んで、窓から見える月を眺めた。


 王子が第一側妃の部屋に通って一週間。

 今日から第二側妃の部屋で一週間。

 毎晩彼女達を抱くのかな、、、。


 

 ま、良いんだけど、、、。



 お酒を飲んで、ふわふわして、色んな事、忘れちゃえばいいのにな、、、。



**********



 う、気持ち悪い、、、。

「自業自得です」

 もう、分かってるよ、、、。

「うー、、、」

「どうしてそんなに飲まれたのですか?」

「最近あんまり眠れなくて」

「何かお悩み事が?」 

「うーん、王子が側妃を抱いてると思うと、何とも言えない気持ちになるんだ」

「恋、ですか?」

「それは違うと思う」

「あら」

「毎日一緒にいてさ、妃や側妃の所に行きたく無い、行きたく無いって言ってたのに、今は毎晩「致して」らっしゃると思うと、何だかなぁって、、、。うー、、、気持ち悪い」

「ふふ、、、たくさんお水を飲んで下さい」 

と水差しとコップを目の前に置いた。


 今日も眠れないのかな、、、。


 

 僕はコップに水を注いで、ゴクゴク飲んだ。



*****



 ベッドの中で何度も寝返りを打つ。


 たった一月ひとつきしか一緒にいなかったのに、こんなにモヤモヤするなんて思わなかったな、、、。


 はぁ、、、


「だめだ、、、眠れない」


 そして、昨日の残りのお酒を飲む。


 窓辺の椅子に座り、月を眺めながら。



*****



 僕は王子妃や他の側妃に会いたく無かったから、いつも部屋から出なかった。

 でも、昼間外を眺めていると、側妃が散歩をしたり、お茶会をしている。


 僕の部屋の近くに来る訳では無い。

 

 日傘を差しながら、長いドレスで歩く姿は、遠くから見ても美しい。

 空の青、草木の緑、白いドレス。

 少し離れた場所に、侍女と護衛騎士が立つ。

 彼女のお腹には、もう新しい命があるんだろうか、、、。

 遠くて表情なんて見えないのに、彼女が幸せそうに笑った気がする。



**********



 第二側室の部屋に通って、一週間が経った。

 朝を迎えてから、漸く解放される。


 解放、、、。嫌な言葉を使ってしまった。


 別に愛が無い訳ではない。

 と、思う。


 それなのに、疲労感ばかりで早くセシルに会いたかった。

 今晩は彼の部屋に行こう。



**********



 ノックをして、扉が開くのを待つ。

 

 赤い顔のセシル。


 部屋に視線を投げると、窓際に酒。


「お前、飲んでるの?」

「王子も飲みますか?」

ヘラっと笑う。

「どうぞ、どうぞ」

と招き入れ、扉を閉める。

「あ、椅子が、、、」

「いい、俺が運ぶ」

と言うと、壁際の椅子をヒョイと持ち上げ、窓辺にまで運ぶ。

「どれ位飲んだんだ?」

「今日は、グラス半分かな?」

「今日は?毎晩飲んでるのか?」

「最近眠れなくて、、、」

「昼間寝てばかりいるんだろう」

俺が揶揄うと、ムッとした。

「だって、夜眠れ無いんだもん。仕方が無いじゃないか、、、」

セシルはグラスに残っていた酒を煽り

「王子のグラスがありませんね」

と立ち上がった。

 フラフラしながら部屋の中を歩く。色々な茶器やグラスの並んだ棚の中から、丁寧に選ぶ。

「今日はマッサージは無理だな」

と言うと、俺を見ながら

「この部屋では、マッサージしかしませんもんね」

グラスを渡す。

「どうした?」

「、、、」

彼は何も言わなかった。



**********



 毎晩側妃の部屋に行き、手答えは有りましたか?とか聞けないし、聞き方も分からない。聞いて、またプレッシャーを与えるんじゃ無いかと考えると、笑って誤魔化すしか無かった。


「飲みましょう」

と言って、王子のグラスに酒を注ぎ、自分のグラスにも注ぐ。

 グラスを持つ彼の手を見て


 その手で、彼女達を抱いたのですか、、、?


と、心の中で呟いた。



**********



 随分酒を煽るな、、、。



 そう思いながら、彼を見た。

 酒が強い様には見えなかった。


 彼の瞼が重くなって来て

「僕、寝ます」

と布団に向かう。


 こんなセシルは初めて見た。

 彼の好きな「ジェフリー」から連絡でもあったんだろうか、、、。

 そう思いながら、俺もベッドに横になる。


 セシルは背中を向けて眠る。

 何だか小さくて、淋しそうに見えた。



**********



「あ、、、の、、、」

「お早よう」

「お早よう御座います、、、」


僕は戸惑っていた。


「何故、王子が此処ここに?」

「セシル、今晩はマッサージをお願いしたいから、酒は控えてくれないか?」

「はい、、、」


 あれ?僕、1日勘違いしていたのかな?

 昨日まで第二側妃の部屋じゃ無かったの?

 どちらにしても、今晩はお酒を飲む訳にいかないな、、、。



*****



 王子は早い時間に部屋に来た。

「お仕事、終わったんですか?」

「今日は全身マッサージをして貰いたいから、仕事は切り上げて来た。明日、頑張るよ」

「分かりました。全身ですね、準備をします」

お茶を淹れて、王子が飲んでいる間にベッドの準備をする。

 準備が整うと、腰に布を巻いただけの姿になって頂く。

 彼も慣れたもので、ベッドにうつ伏せになる。


 広い背中を、香油を塗った両手でマッサージをする。

 王子は二週間毎日彼女達を抱いた、、、。

 彼女達はこの背中に腕を回して、、、。



 気分が悪くなりそうだった。


 

*****



「以上で終わりです」

と声を掛けると、やはりウトウトと眠っていたみたいだ。

「有難う。とても楽になったよ」

僕の手を取り、お礼を言った。

 彼に触れて欲しく無い、、、。僕はそっと手を引いた。

「今、お水をお持ちしますね」

ニコリと笑う。



 サイドテーブルに、水の入ったグラスを置いた。


 

**********



 暫く会わなかった所為か、セシルが他人行儀になっていた。

 言葉遣いも丁寧になって、俺は面白く無かった。


「セシル、言葉遣いが変わった」

「?」

首を傾げている。

 

 自覚が無いのか、、、。


「仕事が終わったから、飲んでも良いぞ」

「飲む?」

「酒、毎晩飲んでいたんだろ?」

「それは、、、眠れなかったからです。今日は施術をしたので必要無いと思います」

「そうか」


 シーツに香油がつかない様に敷いていた布を剥がし、セシルはベッドを整える。

「どうぞ、お休み下さい」

俺に笑う。

「お前は?」

「僕はもう少し片付けがありますから」


 また敬語、、、


「マッサージをしたからと言って、寝なくても平気と言う訳ではありません。明日の仕事の為に、しっかり睡眠を取って下さい」


 業務的な言い方だな、、、。



*****



 朝、目が覚めるとセシルは、ソファで寝ていた。

 俺は、朝まで一度も目覚める事なく眠れたが、彼がソファで寝ている事に腹が立った。



**********



 片付けが終わり、ぐっすり眠る王子を起こしたくない。


 と、言うのは建前。


 本当は、側妃達を抱いた彼と、同じベッドに入りたく無かった。


 僕は、たった一月ひとつき、夜眠るまでの数時間を過ごしただけで、彼を好きになっていた。


 我ながら呆れちゃう、、、。


 また、叶わない恋なんだな、、、。


 

 淋しい気持ちでソファに横になる。

 もし、今回、側妃に子供が出来たら、僕はどうなるんだろうか。

 すぐに出て行かなければならないのか。それとも、無事出産を終えて、次の子が生まれるまでこのままか、、、



**********

  


 僕の部屋に来るのは王子だけだ。

 

 そして、僕は彼が好きだ。


 毎晩、来るか分からない彼を待つのは辛い。

 他の側妃達もこんな気持ちなんだろうな、、、。


 扉を叩く音が聞こえると安心する。

 と、同時に来なければ良いのに、、、とも思う。


 僕が扉を開くと、彼は小さなケーキを持って来た。

「どうしたんですか?」

「一緒に食べようと思って」

と笑う。


 ああ、彼が好きだな、、、。


「今日はお身体の調子はいかがですか?」

「大丈夫、マッサージは必要無いよ」

「良かったです。今、お茶を淹れますね」


 僕はリラックス効果のあるお茶を選ぶ。

「どうぞ」

「ありがとう、、、」

王子はお茶を一口飲んで

「第一側妃が妊娠した様だ、、、。月の物が遅れている」

「、、、そうですか」

「まだ、はっきりは分からないが、ほぼ確定だろう」

「おめでとう御座います」

「うん」



僕達は静かにお茶を飲んだ。



*****



 それから暫くして、第二側妃にも妊娠の兆候が見られた。

 まだ、二人とも妊娠初期になる為、公表はされない。



 僕はこれからどうなるのかな、、、。

 いつまで此処ここにいても良いのか、王子に聞きたかった。



「第一側妃の悪阻つわりが酷いらしい、、、」

「、、、大変そうですね」

「第二側妃も、未だ月の物が来ていない」


 僕は返事が出来なかった。


「セシル?」

「あの、、、僕は、もう用済みですか?」

「用済み?、、、そんな事は無い」

「でも、お二人が妊娠されたのなら」

「まだ、産まれるまでは何があるか分からない。お前が用済みと言う事は無い」



 本当にそうかな、、、?



*****



 今日は王子が来ない。



 きっとこうして、少しずつ王子は僕から離れていくんだ。そしていつか、僕の存在自体忘れてしまうんだ。

 

 部屋の明かりを消して、月明かりだけでお酒を飲む。

 この時間なら外に出ても、誰かに会う事は無いかも、、、。


 ふわふわした頭で、僕はこっそり外に出てみた。

 男の側室だったし、みんなとは違って離れた場所に住んでいた。

 部屋から出ないから、護衛騎士も必要なかった。

 だから、外に出ても誰にも怒られなかった。


 扉をそっと開けて外に出る。

 目の前の広い庭が、今だけは僕一人の物だった。

 いつもは遠くから眺めていた花も、近くに寄ると良い香りがした。

 広い広い空に、月明かりが煌々としている。



 王子と一緒に見たかったな、、、。残念。



 僕は暫く散歩をした。


 建物の扉の前に王子がいた。

 今日はもう来ないと思ったのに。

「今晩は」と言おうと近寄ると、いきなり抱き締められた、、、。


ぎゃー!


「あのっ!、、、王子?」

「セシルがいないから、心配した、、、」

ギュッと力を込めて来た。

「ジェフリーの所に行ってしまったのかと思った」

「そんな事、出来ませんよ?」



**********



 俺がいつもより遅くセシルの部屋に来た時、扉が少し開いていた。

「セシル?」

部屋に入ると、飲み掛けの酒のグラスがあるだけだった。


 何故かセシルが「ジェフリー」と、男の名前を呼んだ事を思い出す。

 自分を用済みと言っていた、、、。

 まさか、ジェフリーの元に行ってしまったのか?


 俺は急いで窓の外を見る。


 セシルは、夜着のまま庭にいた。何をしている?


 散歩をしているみたいだ。俺は安心して、ため息をいた。

 


 彼を迎えに行こう。

 


 外へ出て、扉の前で彼を見ていると、彼は花の香りを嗅いだり、夜空を見上げたり、自由だった。

 そう言えば、部屋から出た彼を見るのは初めてだ。

 暫く好きにさせていると、こちらに戻って来る。


 俺の前に来て、俺を見てくれる。

 思わず抱き締めてしまった。


「あのっ!、、、王子?」


 セシルは、俺がどれだけ不安だったか分からないんだろう、、、。


 お前がいない部屋を見た時、俺がどんな気持ちになったか。 

 窓の外にお前を見つけて、どれだけ安心したか。



 きっとセシルには分からない。



**********



 部屋に戻る。

「、、、今もジェフリーの事が好きなのか?」

「、、、王子は、、、誰かを好きになった事がありますか?」

「、、、」

「僕は、ずっとジェフリーの事が好きでした。でも、好きと言う気持ちを伝えようとは思いませんでした。だから彼はいつも、普段と変わらず僕と接してくれたし、彼に婚約者が出来たからと言って、嫌いになる事はありませんでした。、、、彼を嫌いになる切っ掛けが無いんです。きっと、この先もずっとずっと好きだと思います。でも、、、ただそれだけ、、、。ジェフリーに対する好きは、花が好きとか白が好き、とか、、、そう言う好きだと思います。、、、だから、好きかと言われれば好きだけど、、、ちょっと違うかな?」

「、、、」

「喧嘩をしたとか、裏切られた、騙された、傷付けられた、、、そんな事があれば、嫌いになれたんですけどね」


 小さく笑った。


「俺の事は?」


「はい?」


「俺の事はどう思う、、、?」

「王子の事ですか?」

「アラステアと」

僕は微笑んだ。名前でなんて呼べないよ。

「、、、僕は、、、いつか此処ここを去ります。貴方に特別な感情を持たない方が良いと思ってます」

「好きか嫌いか」

「好きです、、、」


 ふふ、、、


「どうした?」

「貴方に、好きか嫌いか聞かれて、嫌いと答えられる人ってどんな人かなって、、、」

「本当は嫌いなのか?」

「好きです。初めて会った時より、ずっと好きになっています」


ニコリと笑った。


「嘘っぽいな」

「本当ですよ」

「、、、」

「本気です。でも、秘密です」


内緒ですよ、と言う様に指先を唇に寄せる。


「本人を前にして?」

「そうです」


笑う。


「僕の気持ちは僕にしか分かりません。だから、僕の本気度は秘密です」

「その言葉、信じよう」


「え?」


「部屋にセシルがいなかった時、俺は自分の気持ちに気が付いた。ジェフリーに嫉妬したし、もう二度と会えないと考えたら、不安だった」

「、、、」

「本当は毎日セシルの部屋に行きたかった」

王子は僕を抱き上げた。

「王子?」

「アラステアだ」

「いつもいつも、お前の事ばかり考えていた」

「僕のマッサージの事でしょ?」

「、、、セシル、、、誤魔化すな」

「、、、」


 だって、、、。


 だって、そんな事、、、。


「お前に会いたくて、マッサージをして欲しいと呼んだ。その時は、お前を呼ぶ口実があって良かったと思った」


 彼は僕をベッドの上にそっと降ろす。

 そして、僕の手を取る。


「セシルの手は、魔法の手だ。お前に触れられると、安心する。本当だ。だから、いつもセシルに会いたくなる」


 僕の手にそっとキスをした。


 僕は手を引いた。

 彼はグッと力を入れて離さない。


「好きと言ったね?」

「はい」

「では、、、」 


 と言って、王子もベッドに乗る。


 僕の瞳を見ながら、彼の顔が近付いて来た。


 え?、、、ええええ?


「待って!」

彼は背中に手を回す。

「待って下さい!僕!男ですよ?!」

これ以上近付けない様に、彼の胸を押す。

「知っている」

「なら、どーしてキスするんですかっ!」

「え?、、。好きだから」

「は?でも、王子は女性の方が、、、」

「今は、セシルが好きだ」

「冷静になって!おかしいよね?僕達お


唇を塞がれた。そのまま後ろに押し倒される。


 一度離れた唇が再び重なる。


 ちょっと!僕、初めてなんだけどっ!


 覆い被さる王子を押し返そうとしても、彼の方が力が強い。無理だ、、、。

 僕は彼を叩いた。何度も何度もめてと叩いた。

 顔を背ける様に、横を向くと彼の手が正面に向かせる。

 

 再度彼の唇が離れて、僕を見下ろした。


「セシル、俺の事、好きなんだろ?」


 彼の声、、、。僕は見つめる事しか出来なかった。


「好きだよな」


 優しく頬を撫でる。

 親指でそっと唇に触れると、静かに僕の口を開き、口付けをした。


 近寄って来る彼の顔が綺麗で、甘い甘いキスを受け入れてしまった。



 こんなに気持ちの良いキスを、彼は側妃の二人とも交わしたのか。そう思うと涙が出た。



 嫌だった、、、

 彼はキスに夢中で、僕の涙に気付かない。

 逃げ場も無いのに、少しでも彼から離れようと、身体を出来るだけベッドに押し付ける。


 彼は僕が泣いている事に気が付いた。きっと、頬に触れる指先に涙が触れたんだ。


 瞼にキスをする。

 涙を掬う様に、舌先で撫でる。


「セシル、、、愛してる」

「でも、、、僕は、男だし、三番目だし、、、」

「いつも側にいて欲しい」

「そんな事、出来る訳ない、、、」


貴方は王子で、僕は側室だもの、、、。


 

 女の子に生まれたかったな。

 でも、女の子だったら、此処ここに呼ばれる事は無かっただろうし、、、。



 自分の気持ちがあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、フラフラしている。自分でもどうしたら良いか分からなくて、情緒不安定になっていた。



「俺の事、好きか嫌いかだけ考えて、、、」


優しい声だった。

 その声がもっと聞きたくて、王子を見上げる。


「好き?」


 うん、と頷く。


「嫌い?」


 ううん、と首を振る。


「触っても良い?」


 どうして?って首を傾げる。


「触りたい」


「、、、」


「セシルに触れられると、俺は心地良くなるんだ、、、。だから、セシルに触れてみたい」


「どうぞ」


彼は僕の頬を包む様に触る。


 気持ち良い、、、。頬全体を包む手が、大きくて温かくて安心する。

 僕がスリスリと頬を動かすと、彼の掌の匂いがした。人の匂いだ、、、。温かくて、じんわりする。

 僕も手を添えて、もっと彼の手を感じる。


「セシル、、、」


と名前を呼ばれ、キスをされた。

 さっきとは違い、ほわほわとした優しいキス。


「僕、貴方が彼女達を抱いたと思ったら、嫌で嫌で仕方がありませんでした。、、、ごめんなさい」

「、、、」

「困らせたい訳じゃ無いんです。ただ、、、僕だけのモノになれば良いのにって、、、」

「済まない」

僕は頭を振った。

「大丈夫です。、、、大丈夫じゃ無いけど、王子の立場も分かるし、、、。ただ、それ位好きだって、知っていて欲しいんです」


 王子は僕を抱き締めてくれた。


「分かった、、、。今宵、誰よりも一番に、誰よりも深く、誰よりも長く、濃厚に俺の愛を注ごう、、、」


 そう言いながら、僕にキスをして、優しく触れる。



「愛してる、、、」

 


 僕の貧相な身体を触りながら、愛おしそうに何度何度も囁かれ、僕は心も身体もすごく幸せな気持ちになった。



*****



 アラステアは毎晩僕の部屋に来る。

 マッサージはたまに。

 お喋りをしながら紅茶を飲み、二人でベッドに入るのが習慣になった。



*****



 アラステアが珍しく、僕の部屋にランチを食べに来た。


「最近、側妃達の仲が良すぎて、俺は話しにも入れて貰えない」


と嘆いた。

「どうしたんですか?」

「二人は、妊娠した時期も近いから、お互いお茶会を開き、アレコレ相談してるらしい」

「お腹の子は順調ですか?」

「うん、安定期にも入ったし、二人で庭を散歩したりしているよ。仲の良い事は嬉しいけど、俺は邪魔みたい」


苦笑している。


「「悪阻って、自分の身体に良く無い物を排除しているみたいよね」って話しをしながらさ、俺の事を見る訳。何だか俺が悪い物みたいで居た堪れないよ」

「惹かれ合う男女は、遺伝子的に一番遠い相手を選ぶと言いますから、今、王子は彼女達から一番排除したい存在かも知れませんね」


マーサ?!


わたくしも妊娠した時はそうでしたから、暫くは側妃様達の好きにさせたらいいのですよ」

「え?それって、出産するまで?」

わたくしは、子供の手が掛からなくなるまでダメでした。人それぞれでしょうけど、子供を守らないといけませんからね。本人達の気付かない所で、自己防衛しているのです」

「俺、父親なのに?」

「遺伝子が一番遠いと言う事は、色々な事が真逆、、、ですからねぇ」


マーサ!!


「でも、それだけ彼女達は子供を大切にしているって事だよね!」

「そうですよ。それに、子供の父親が嫌いと言う訳では無いんです」


 王子はため息をいた。

「ま、側妃同士仲良くしてくれるなら良いけどね」

と、少し淋しそうに言い、僕の手を繋いでくれた。


「セシルは、いつまでも俺を愛してね」


上目遣いで僕を見る彼は、悪戯っぽい、少年の顔をして、僕の手の甲に


 ちゅっ 


と、キスをした。





まだまだ、悩みは尽きない様ですが、みんなが幸せになりますように、、、。

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