僕は三番目の側室
***BL*** 三番目の側室に選ばれた僕。それって、あんまり意味が無いと思う、、、。 ハッピーエンド
僕は、三番目の側室
第一王子の彼には、妃がいて。
他に二人の側妃がいた。
だから、男の僕を側室にした意味が分からない。
**********
僕の存在理由は、第一王子を癒す事。
一年間妃との間に子供が出来ず、一人目の側室を置いた。
その半年後に二人目の側室を置いたけど、子供は出来なかった。
とうとう男の僕が側室になった。
ね。僕って必要?どっちみち子供は出来ないじゃん。
妃達の間に子供が出来ない第一王子は、密かに男を好む傾向があるのでは、、、と言われた。
それで、僕の出番です。
僕との、そーゆう関係に刺激され、他の妃の何方かと、子宝に恵まれれば万々歳、、、。
つまりは、そんな存在なんだ。
、、、無理だと思う。
そりゃあ、僕は女性が苦手だよ?
でもね。第一王子は違う。ちゃんと女性が好きなんだ。
だから、この計画は最初から無理。
だけど、僕は真っ白い綺麗なウエディングドレスを着たかった。
だって、素敵でしょ?
僕に合わせたピッタリなサイズ。
鎖骨の見えるオフショルダーで、無い胸を意識させない胸元の刺繍。
ふんわりと広がる裾を、揺らしながら歩いてみたかった。
結婚は嫌だったけど、ドレスは着たかったんだ。
それに、王子は僕に興味が無いと思っていたから、初夜の心配もしなかった。
なのに、なのに、、、何故か王子がいる、、、。
「あの!無理しないで良いですっ!」
王子はベッドに腰掛けた僕の隣りに座り、ぎこちなくキスをしようとした。
「え?」
「だって、男にキスなんて嫌でしょ?!」
「うん、、、まぁ、、、」
ちょっと傷付いた、、、。
「王子、僕とはその様な事をする必要はありません。無理に関係を持たなくて良いんです」
「、、、」
「僕達には子供が出来ないから、その様な行為があるか無いかなんて、誰にも分からないでしょ?」
「でも、、、」
「朝までベッドで、ゆっくり眠って下さい。それだけでシーツが乱れ、行為があったと思われる筈です。僕も同じベッドを使うのは嫌だろうけど、そこは我慢して下さい」
「、、、済まない」
王子の顔を見ると、隈があって肌の調子も悪かった。
「大丈夫です。僕も愛の無い行為は出来ませんから、、、」
**********
僕には本当は、好きな人がいた。
でも、その人も女性を愛せる人だった。
僕だけが、どうしても女性を愛せない。
父上が釣書を持って来る度に、理由を付けて断っていた。若い内は許された我儘も、とうとう我慢の限界だった。
父上と大喧嘩になり、王子の側室にさせられた。
これが、本当の理由。
*****
側室との結婚は、一月ベッドを共にする。一月と言っても、月の物が始まれば必要無くなる。
月の物が有れば、そこから体調を管理され、次の行為をいつにするか決められる。
「だから、私はプレッシャーの塊なんだ」
ポツリと王子が言った。
「妃の事も、嫌いでは無かった。寧ろ、愛情はあった、、、。しかし、結婚して半年程すると、その行為は愛では無く、義務になった、、、」
ただでさえ、第一王子と言う激務で、更には愛の無い夜の行為、、、。
大変なんだな、、、と思った。
王子はウトウトと眠り始め、徐々に深い眠りに就く。
まぁ、僕の部屋に来た時位、愚痴を言って、ゆっくり眠れば良いと思う。
*****
正直さ、、、側室って、昼間何すれば良いんだろう、、、。やる事も無いし、退屈だ。
他の側妃は何をしているんだろう。
でも、見に行く訳にもいかないし、、、。
僕は自分の部屋から出ない。
男の側室なんて、気持ちの良いモノじゃ無いだろうし、トラブルにも合いたくない。
ひっそりひっそりと日陰を歩き、誰の目にも止まらず死んでいきたい、、、。
最近はそんな事ばかり考えている。
「何を馬鹿な事を仰っているんですか」
ピシャリと言われた。
「いつ王子に触れられても良い様に、美しく芳しくなさって下さい」
えー、、、めんどい、、、。
「そういうのは、王子妃や側妃に任せれば良いと思う、、、」
と言うと、ジロリと睨まれた。
チェッ、、、。
「ねぇ」
僕が自分の屋敷から連れて来た侍女。年齢は母上より年上。でも、僕が赤ちゃんの頃から僕の身の周りの事をしてくれていた。
僕の事を何でも知っている。
「このマッサージ、僕に教えてくれない?」
ピクリと反応した。
「何故ですか?」
マーサは僕の掌を揉みほぐしながら聞いた。
「王子にやって上げたいんだ」
侍女はマッサージの手を止める事無く考えた。
「お優しい坊ちゃんですね」
あ、これは嫌味だ、、、。
「毎晩、ただ眠りに来るだけの王子に、貴方様自らマッサージを施すなんて、、、お優しい、お優しい」
にっこり笑う目は、全く笑っていない。
「マーサ、、、。僕は、側室になった事、後悔して無いよ?確かに、王子はこの部屋に眠りに来るだけだけど、別に良いじゃないか。昼間は激務なんだ、僕の所に来た時だけは、ゆっくり休んで貰おうよ」
「しかし、坊ちゃま、、、」
「マーサ、、、」
「もし、王子妃や側妃の何方かにお子が出来れば、、、」
「別にどうにもならないよ。僕には最初から子供なんて無理だし。いつか、此処を追い出されるだけ。その時の為に、僕は僕の為のお金を使わないで貯めているし、王室からもお手当を頂いている。だから、僕は王子を癒して、王子妃や側妃と仲良くなって貰えば良いんだよ」
そう、僕にはちゃんと予算がある。
本当はドレスやアクセサリーを買ったり、お茶会を開くべきなんだろうけど、僕はこの部屋から出る事は無いから、使う事があまり無い。
「そうだ、僕の予算でマッサージに使う香油とか道具を買おうよ」
マーサは「仕方ありませんね」と言う顔で微笑んだ。
*****
「お疲れ様です」
「君も寝ていれば良いのに、、、」
王子は疲れた顔で入って来た。
僕は早速リラックス効果のあるお茶を淹れる。
「良い香りだね、、、」
ゆっくりと召し上がる。
「お食事はいつ摂られましたか?」
「2時間程前に軽く」
「今日は、王子に触れても良いですか?」
「え?」
眉間に皺、、、。別に変な意味じゃ無いんだけどな。
「少し、マッサージを習ったので、試したいのです」
「君が?」
「はい、習ったものの、此処に来るのは侍女のマーサと王子だけなので、実験台は王子です」
「実験台にされるのか」
と笑った。
此処に来て、初めて笑ったかも知れない。
いつもは愛想笑いだった。
王子はベッドに横になる。
「失礼して、お顔を触らせて頂きます」
「顔のマッサージをするのかい?」
「そうです。王子はいつも疲れた顔をされているので、貴方のお顔を見ると心配になります。他の方も、不安になると思いますよ」
「では、お願いしよう」
僕はオイルを手に取り、マッサージを始める。
ほんの数分で王子は眠ってしまった。
かなり疲れているんだ。
僕は起こさない様に最後まで仕上げる。
本当は仕上げに水分を摂って欲しいけど、余りに気持ち良さそうに眠っているので、枕元に水差しを置いて、僕はソファで眠った。
**********
私は夜中に喉が渇いて目を覚ました。
ベッドが広い、、、?
いつもは隣りに誰かいるのに、、、。
ぼんやりする頭で部屋を見回す。
月明かりの当たらない、部屋の奥。ソファで寝ている彼を見つけた。
ホッとした、、、。
枕元の水差しに気付き、コップ一杯の水を飲む。
喉の渇きが癒やされない。
もう一杯、、、。
その後、私は静かにベッドを出る。
ソファに近付くと、リラックスして眠る彼。
「セシル、、、」
私はそっと彼の頬に触れた。
彼が目を覚ます。
「ジェフリー、、、」
私では無い男の名前を呼んで、再び眠りに落ちた。
**********
彼にも想い人がいた、、、ただ、それだけだ、、、。
しかし、私の胸はチクリと痛んだ。
もし、彼と「ジェフリー」が愛し合っていたのなら、二人の仲を切り裂いたのは私だろう、、、。
申し訳無かった。
それと同時に、彼に愛される「ジェフリー」がほんの少し羨ましいと思った。
私には妃と側妃がいると言うのに、、、。、
彼は男だったから、慣例通り毎晩彼の元に向かう必要は無かった。
しかし、彼の元は癒される。
**********
毎晩マッサージをした。最初は、顔だけ。その内、顔が柔らかくなって、余り時間が掛からなくなった。
「今日は掌に触れますね」
ゆっくりゆっくり解して行く。
王子の呼吸が深くなる。
力が抜けている。
左の手が終わり、僕は右側に回り続きをする。
気持ち良さそうに眠っている。
今日は両手をやって終わりにしよう。
**********
僕が三番目の側室になって、一月が経った。
毎日少しずつマッサージをしたお陰か、王子の顔色も良くなり、身体も楽になった様だった。
今までは慣例があったから来て下さっていたけれど、そろそろ王子妃と側妃達のお部屋にも行かれるだろう。
今日は久しぶりに一人でのんびり出来そうだな。
なんて呑気に考えていたら、扉をノックする音がした。
何で?
僕はそっと扉を開ける。
「どうされたんですか?」
「いや、、、その、、、」
「どうぞ、お入り下さい。お茶は飲みますか?」
「いつものを、、、」
僕はお茶を淹れながら
「マッサージ、されますか?」
と聞いた。
「頼む」
「どこか気になる場所はありますか?」
「目が、、、」
「承知致しました」
「、、、済まない」
丁寧にマッサージをする。
くるくる、くるくる、円を描く様に。
「どうですか?」
「気持ち良い、、、」
最近はマッサージをしながら眠り込む事も無くなった。最後にコップ一杯の水を飲む。
「王子妃様のお部屋とか、お訪ねしなくて宜しいのですか?」
「、、、君といるとリラックスするから、つい来てしまうんだ」
「一月こちらでしたから、皆様淋しい思いをされていると思いますよ」
「、、、」
「王子?」
「君には、好きな人がいたのか?」
「?」
「、、、ジェフリー、、、」
「どうして、、、?」
「一度だけ、君が寝惚けて名前を呼んだ、、、。もし、愛し合っていたのに、側室になった為に彼を諦めさせたのなら、申し訳無いと思った」
僕は、紅茶を淹れる。
「違います。ただの片思いです」
「片思い、、、」
「凄く好きだったんですけど、彼は貴方と同じ、女性を愛せる人です。、、、僕にはそれが出来なかった。彼に婚約者が出来て、父にお前は何故婚約しないんだと責められました、、、」
「私に子供が出来ないから、女性に興味が無いんじゃないかと言われた時期があったな、、、。それで、君が?」
「多分、そうです」
「、、、」
「だから、王子が気になさる事ではありません。妃様か側妃様が御懐妊されたら、僕は必要無くなり、此処から出て行く事になると思います。男の側室なんて、みんな嫌だと思いますし」
「君は、女性が嫌いなの?」
「そうです、、、。ただの友人なら大丈夫です。しかし、恋愛感情には繋がりません。身体を触れ合う事が出来ないのです」
「私は二人目の側室が来た頃から、夜の行為が出来なくなってしまった。重圧に負けたんだ」
「存知上げております。ですから、男の僕が側室になりました。僕と夜の生活をして、あわよくば、、、と言う所でしょう。でも、そんな事は無理です。そう言う事は、デリケートな問題ですから、女がダメなら男で、、、と言う訳にもいきません。それよりも、王子は大変疲れている様でしたから、貴方がリラックス出来る様に努めました」
「済まない」
「とんでもありません、ちゃんと僕の為の予算を付けて頂きました。僕ね、こっそり貯めているんです。いつか此処を追い出されても良い様に」
僕は、悪戯っぽく人差し指を立てて、唇に当てた。
「誰にも言わないで下さいね。だから、王子は心配しなくて良いのです」
彼は小さく笑った。
**********
彼といると、癒される。
それは、マッサージの効果や、お茶の効果ばかりでは無い。彼の性格が私には合うのだろう。彼との時間は、気を使わなくて良い。
毎晩でも此処に来たいと思う。
「そう思うのは、俺が君を欲しているからだろうか、、、」
素直に聞いてみた。
「そうですね、きっと僕のマッサージの技術が欲しいのでしょう」
と澄まして言う。
飾らない君が好きだ、、、。
、、、好き?、、、。
**********
何で?
何で?王子は毎日来るんだろう。
マッサージの効果もあるし、別に毎日来なくても良いと思う。
それより、王子妃や側妃達の部屋に行かないとダメじゃないかな?
毎晩、僕の所に来ても赤ちゃんは出来ないんだよ?
と、言う事で、王子に聞いてみる事にした。
「何故、来るんですか?」
「え?」
「毎日、毎日、どうして僕の部屋なんですか?」
「え?だって、来たいから、、、」
最近、王子も慣れて来て、この部屋ではリラックスして話す。
「そろそろ他のお部屋にも行かないと、、、」
「嫌だよ、、、」
我儘も言える様になっている、、、。
「王子、、、リラックスし過ぎです」
「良いじゃ無いか、、、此処でしか素に戻れないんだから」
「分かりました。言葉使いは良いです。僕も、そんなに上手じゃ無いし。でも、毎日此処に来てはいけません」
「えー、、、。今更あっちになんて行けないよ。行っても、彼女達の機嫌が悪くて怖いんだもん、、、」
言葉使いっ!
「それは王子妃だけですよね?」
「え?違うよ。みんなだよ。行くと「どうして来てくれないんだ」とか責めるし、「愛が足りない」とか、誰かに贈り物をすれば、もっと良い物を欲しがるし、喧嘩しない様に同じ物にすると、機嫌が悪くなるか、泣くかなんだよ。本当に行きたく無い、、、」
「、、、」
確かに、面倒臭いな、、、。
「じゃあ、どうするんですか?」
「だから、毎日此処に来るよ」
「いや、ダメですよ?!」
「何で?!」
「毎晩この部屋に泊まっていたら、本当に噂通りだと思われちゃいますよ?!」
「良いよ」
「良く無いです!」
「、、、どうして?」
「だって!」
「だって?」
ん?どうしてダメなんだろう、、、?
僕には答える事が出来なかった。
**********
「昨日、妃に子供は側妃に産んで貰いたいと言われてしまった、、、」
「え?」
一体何が、、、。
「君に言われて、妃の部屋に行ったんだ。彼女は、俺を拒んだよ。いずれ王妃になるのに、出産して公務を疎かにしたく無い。何の為に側妃を許したと思っているんだと怒られた、、、」
「、、、そんな」
「しかも、最後は授乳でドレスが着られなくなるのは嫌だと言われた、、、」
「、、、お強いお妃様ですね、、、」
「うん、本当に、、、。でも、素晴らしい人だよ。ただ、母親には向かないかな、、、」
「そ、、、その様ですね、、、」
王子は苦笑した。
「セシル、、、マッサージして貰っても良いかな」
「勿論です、王子」
僕は、出産したく無いと言った王子妃の気持ちが分からなかった。
*****
「ねぇ、マーサ、、、子供を産みたく無い女性っているんだね、、、」
「どうされたのですか?」
「王子妃は、公務が疎かになるから、子供が欲しく無いと言ったそうなんだ、、、」
「そうですか、、、」
「僕が女性だったら、やっぱり好きな人の子供が欲しいよ、、、」
「お産は命懸けですからね、、、。怖いのだと思います」
「そっか、、、」
「無事に出産されても、身体が元に戻るには時間が掛かりますし、情緒も乱れますからね。公務に何らかの支障を来たすのは事実です」
「そうなんだ、、、」
「王子妃様が、幼い頃から王妃になる為に教育を受けていたのなら、その様にお考えになる事もあるかも知れませんね」
*****
相変わらず、王子は毎晩やって来る。
でも、今日はいつもと違った。
「明日から、第一側妃の部屋に行くよ」
僕はマッサージを続けた
「一週間は彼女の元を通う事になる、その後は第二側妃の所へ、、、」
「それでは、今日は丁寧に仕上げましょう」
「頼むよ」
僕達は無言で過ごした。
彼もウトウトしていたけど、深い眠りに着く事は無い。
頭の中で、この人が毎晩女性を抱くのかと思うと、何だか凄く嫌な気分になった、、、。
1分でも1秒でも長くいたい、、、。そう考えながら、丁寧に丁寧に施術した。
マーサが教えてくれた事を思い出しながら、王子の身体全てを解す。
最後に水差しの水をコップに注ぎ
「どうぞ、、、」
と手渡す。
「有難う、、、身体が軽くなったよ」
と微笑んでくれた。
優しい笑顔、、、。
僕の馬鹿、、、この人を好きになっちゃダメなのに、、、。
そう思いながら、ニコリと笑った。
*****
此処に来てからもうすぐ一月半が経つ。
昨晩、一人の夜を過ごした。
淋しかったな、、、。
ベッドが恐ろしく広くて不安になった。
これから毎日一人なんだ、、、。
「あんな事言わなければ良かった、、、」
王子妃や側妃の元に行って欲しく無い、、、。
*****
マーサは静かにお茶を淹れてくれた。
「はぁ、、、」
僕の目の前に紅茶を置きながら
「恋煩いの様ですね」
と言う。
「恋煩い?」
「先程から、何度もため息を吐いています」
「そうかな、、、」
はぁ、、、
、、、あ、本当だ。ため息吐いてる。
**********
第一側妃の元に来た。彼女の身体が、妊娠しやすい期間に入ったからだ。
「2ヶ月振りですね」
「そうだな」
「三番目の側室はどんな方ですか?」
酒を注ぐ
「、、、」
当たり障りの無い言葉を探す。
こう言う時、セシルを褒めてはいけない。かと言って侮辱する発言もダメだ。
第一側妃も美しい。妃の美しさとは違う、可愛らしさがある。
ただ、少し自信過剰だ。
側妃に選ばれた事により、王子妃より愛されていると勘違いしている。
実際、愛などは無かった。
身分の高い、未婚の女性で、マナーや教養があり、健康な女性が選ばれただけだった。
彼女は我儘も言うし、妃を妃として認めない様な発言をする。
俺は酒を煽り、側妃の手を引く。
それだけで、彼女は自分が求められていると思い、俺の瞳をうっとりと見つめた。
、、、一週間の辛抱だ、、、
**********
今晩も王子が来ないと分かっているのに、もしかしたらと思ってしまう。
眠れないな、、、。
*****
毎晩眠れない。
今頃、王子は誰かと一緒に過ごしているんだ。
側室って辛いな、、、。
**********
七日間を第一側妃と過ごした。
明日からは、第二側妃の部屋に行く。
昼間の公務もあるのに、毎晩か、、、。
1日位間を開けても良いだろうか、、、。
いや、その1日が「もしかしたら」と思うと、避けられない。
セシルの部屋に行きたい、、、。
半分回らない頭で、彼の事を考えた。
「済まない、、、セシルを呼んでくれ。マッサージを頼みたい」
護衛騎士が、離れた彼の部屋に走る。
仕事を続けながら、彼が来るまでと頑張った。
あー、、、隣の部屋に移って来れば良いのに、、、。と、思いながら、一つでも仕事を終わらせる。
*****
「セシル様をお呼びしました」
「入れ」
「失礼します」
護衛騎士が扉を開けて、セシルに入る様に促した。 彼は深く頭を下げる。
「悪いな、、、少し、マッサージをして欲しい」
「承りました」
護衛騎士は、一礼して部屋の隅に立つ。
「此方にお願い致します」
応接セットに、持ち込んだマッサージの道具を置く。
俺はペンを置き、ソファに座った。
セシルは俺の顔を見るなり
「大丈夫ですか?」
と声を掛けてくれた。
「少し、疲れが溜まっている」
「上着を脱いで頂いても宜しいですか?」
いつもと違う、丁寧な言葉使いだった。
俺は上着を脱ぐ。
彼は私の袖口のシャツのボタンを外し、捲った。
「まだお仕事中ですよね。掌をマッサージします。リラックス効果もあるので、、、」
「済まない」
彼の口角が少し上がった。
「今日の夜は、、、」
と聞かれ
「第二側妃の部屋に」
と答えると
「今日から一週間ですね?」
視線を落としたまま聞いて来た。
掌に香油を塗り、マッサージをしてくれる。
*****
マッサージが終わり、彼は片付けをする。
「助かったよ」
「また、何かありましたら、お声掛け下さい」
深々と頭を下げた。
**********
僕は王子の顔を見て、ギョッとした。
明らかに寝不足の顔をしていた。
本当は全身のマッサージをして差し上げたかったけど、机の上の書類を見て諦めた。
今晩、僕の部屋に来てくれれば、時間を掛けて解して差し上げるのに、、、。
でも、今晩から第二側妃の部屋に行く様だった。
僕の部屋は、まだまだ順番が回って来ない。
*****
「マーサ、寝室にお酒を準備してくれない?」
「畏まりました」
「お願い」
「どんなお酒が宜しいですか?」
「1番度数が高い物を、、、」
一瞬、マーサの動きが止まり、深くお辞儀をした。
*****
僕は、窓辺にテーブルと椅子を置いて貰った。
一人用の丸いテーブル。
椅子は大きめで、僕がすっぽり入る物。
マーサにお酒を準備して貰う。
ジェフリーが婚約した時も、マーサにお酒を準備して貰った。
だって、他に、忘れる方法が分からなかったから、、、。
椅子に膝を抱えながら座り、お酒を飲んで、窓から見える月を眺めた。
王子が第一側妃の部屋に通って一週間。
今日から第二側妃の部屋で一週間。
毎晩彼女達を抱くのかな、、、。
ま、良いんだけど、、、。
お酒を飲んで、ふわふわして、色んな事、忘れちゃえばいいのにな、、、。
**********
う、気持ち悪い、、、。
「自業自得です」
もう、分かってるよ、、、。
「うー、、、」
「どうしてそんなに飲まれたのですか?」
「最近あんまり眠れなくて」
「何かお悩み事が?」
「うーん、王子が側妃を抱いてると思うと、何とも言えない気持ちになるんだ」
「恋、ですか?」
「それは違うと思う」
「あら」
「毎日一緒にいてさ、妃や側妃の所に行きたく無い、行きたく無いって言ってたのに、今は毎晩「致して」らっしゃると思うと、何だかなぁって、、、。うー、、、気持ち悪い」
「ふふ、、、たくさんお水を飲んで下さい」
と水差しとコップを目の前に置いた。
今日も眠れないのかな、、、。
僕はコップに水を注いで、ゴクゴク飲んだ。
*****
ベッドの中で何度も寝返りを打つ。
たった一月しか一緒にいなかったのに、こんなにモヤモヤするなんて思わなかったな、、、。
はぁ、、、
「だめだ、、、眠れない」
そして、昨日の残りのお酒を飲む。
窓辺の椅子に座り、月を眺めながら。
*****
僕は王子妃や他の側妃に会いたく無かったから、いつも部屋から出なかった。
でも、昼間外を眺めていると、側妃が散歩をしたり、お茶会をしている。
僕の部屋の近くに来る訳では無い。
日傘を差しながら、長いドレスで歩く姿は、遠くから見ても美しい。
空の青、草木の緑、白いドレス。
少し離れた場所に、侍女と護衛騎士が立つ。
彼女のお腹には、もう新しい命があるんだろうか、、、。
遠くて表情なんて見えないのに、彼女が幸せそうに笑った気がする。
**********
第二側室の部屋に通って、一週間が経った。
朝を迎えてから、漸く解放される。
解放、、、。嫌な言葉を使ってしまった。
別に愛が無い訳ではない。
と、思う。
それなのに、疲労感ばかりで早くセシルに会いたかった。
今晩は彼の部屋に行こう。
**********
ノックをして、扉が開くのを待つ。
赤い顔のセシル。
部屋に視線を投げると、窓際に酒。
「お前、飲んでるの?」
「王子も飲みますか?」
ヘラっと笑う。
「どうぞ、どうぞ」
と招き入れ、扉を閉める。
「あ、椅子が、、、」
「いい、俺が運ぶ」
と言うと、壁際の椅子をヒョイと持ち上げ、窓辺にまで運ぶ。
「どれ位飲んだんだ?」
「今日は、グラス半分かな?」
「今日は?毎晩飲んでるのか?」
「最近眠れなくて、、、」
「昼間寝てばかりいるんだろう」
俺が揶揄うと、ムッとした。
「だって、夜眠れ無いんだもん。仕方が無いじゃないか、、、」
セシルはグラスに残っていた酒を煽り
「王子のグラスがありませんね」
と立ち上がった。
フラフラしながら部屋の中を歩く。色々な茶器やグラスの並んだ棚の中から、丁寧に選ぶ。
「今日はマッサージは無理だな」
と言うと、俺を見ながら
「この部屋では、マッサージしかしませんもんね」
グラスを渡す。
「どうした?」
「、、、」
彼は何も言わなかった。
**********
毎晩側妃の部屋に行き、手答えは有りましたか?とか聞けないし、聞き方も分からない。聞いて、またプレッシャーを与えるんじゃ無いかと考えると、笑って誤魔化すしか無かった。
「飲みましょう」
と言って、王子のグラスに酒を注ぎ、自分のグラスにも注ぐ。
グラスを持つ彼の手を見て
その手で、彼女達を抱いたのですか、、、?
と、心の中で呟いた。
**********
随分酒を煽るな、、、。
そう思いながら、彼を見た。
酒が強い様には見えなかった。
彼の瞼が重くなって来て
「僕、寝ます」
と布団に向かう。
こんなセシルは初めて見た。
彼の好きな「ジェフリー」から連絡でもあったんだろうか、、、。
そう思いながら、俺もベッドに横になる。
セシルは背中を向けて眠る。
何だか小さくて、淋しそうに見えた。
**********
「あ、、、の、、、」
「お早よう」
「お早よう御座います、、、」
僕は戸惑っていた。
「何故、王子が此処に?」
「セシル、今晩はマッサージをお願いしたいから、酒は控えてくれないか?」
「はい、、、」
あれ?僕、1日勘違いしていたのかな?
昨日まで第二側妃の部屋じゃ無かったの?
どちらにしても、今晩はお酒を飲む訳にいかないな、、、。
*****
王子は早い時間に部屋に来た。
「お仕事、終わったんですか?」
「今日は全身マッサージをして貰いたいから、仕事は切り上げて来た。明日、頑張るよ」
「分かりました。全身ですね、準備をします」
お茶を淹れて、王子が飲んでいる間にベッドの準備をする。
準備が整うと、腰に布を巻いただけの姿になって頂く。
彼も慣れたもので、ベッドにうつ伏せになる。
広い背中を、香油を塗った両手でマッサージをする。
王子は二週間毎日彼女達を抱いた、、、。
彼女達はこの背中に腕を回して、、、。
気分が悪くなりそうだった。
*****
「以上で終わりです」
と声を掛けると、やはりウトウトと眠っていたみたいだ。
「有難う。とても楽になったよ」
僕の手を取り、お礼を言った。
彼に触れて欲しく無い、、、。僕はそっと手を引いた。
「今、お水をお持ちしますね」
ニコリと笑う。
サイドテーブルに、水の入ったグラスを置いた。
**********
暫く会わなかった所為か、セシルが他人行儀になっていた。
言葉遣いも丁寧になって、俺は面白く無かった。
「セシル、言葉遣いが変わった」
「?」
首を傾げている。
自覚が無いのか、、、。
「仕事が終わったから、飲んでも良いぞ」
「飲む?」
「酒、毎晩飲んでいたんだろ?」
「それは、、、眠れなかったからです。今日は施術をしたので必要無いと思います」
「そうか」
シーツに香油がつかない様に敷いていた布を剥がし、セシルはベッドを整える。
「どうぞ、お休み下さい」
俺に笑う。
「お前は?」
「僕はもう少し片付けがありますから」
また敬語、、、
「マッサージをしたからと言って、寝なくても平気と言う訳ではありません。明日の仕事の為に、しっかり睡眠を取って下さい」
業務的な言い方だな、、、。
*****
朝、目が覚めるとセシルは、ソファで寝ていた。
俺は、朝まで一度も目覚める事なく眠れたが、彼がソファで寝ている事に腹が立った。
**********
片付けが終わり、ぐっすり眠る王子を起こしたくない。
と、言うのは建前。
本当は、側妃達を抱いた彼と、同じベッドに入りたく無かった。
僕は、たった一月、夜眠るまでの数時間を過ごしただけで、彼を好きになっていた。
我ながら呆れちゃう、、、。
また、叶わない恋なんだな、、、。
淋しい気持ちでソファに横になる。
もし、今回、側妃に子供が出来たら、僕はどうなるんだろうか。
すぐに出て行かなければならないのか。それとも、無事出産を終えて、次の子が生まれるまでこのままか、、、
**********
僕の部屋に来るのは王子だけだ。
そして、僕は彼が好きだ。
毎晩、来るか分からない彼を待つのは辛い。
他の側妃達もこんな気持ちなんだろうな、、、。
扉を叩く音が聞こえると安心する。
と、同時に来なければ良いのに、、、とも思う。
僕が扉を開くと、彼は小さなケーキを持って来た。
「どうしたんですか?」
「一緒に食べようと思って」
と笑う。
ああ、彼が好きだな、、、。
「今日はお身体の調子はいかがですか?」
「大丈夫、マッサージは必要無いよ」
「良かったです。今、お茶を淹れますね」
僕はリラックス効果のあるお茶を選ぶ。
「どうぞ」
「ありがとう、、、」
王子はお茶を一口飲んで
「第一側妃が妊娠した様だ、、、。月の物が遅れている」
「、、、そうですか」
「まだ、はっきりは分からないが、ほぼ確定だろう」
「おめでとう御座います」
「うん」
僕達は静かにお茶を飲んだ。
*****
それから暫くして、第二側妃にも妊娠の兆候が見られた。
まだ、二人とも妊娠初期になる為、公表はされない。
僕はこれからどうなるのかな、、、。
いつまで此処にいても良いのか、王子に聞きたかった。
「第一側妃の悪阻が酷いらしい、、、」
「、、、大変そうですね」
「第二側妃も、未だ月の物が来ていない」
僕は返事が出来なかった。
「セシル?」
「あの、、、僕は、もう用済みですか?」
「用済み?、、、そんな事は無い」
「でも、お二人が妊娠されたのなら」
「まだ、産まれるまでは何があるか分からない。お前が用済みと言う事は無い」
本当にそうかな、、、?
*****
今日は王子が来ない。
きっとこうして、少しずつ王子は僕から離れていくんだ。そしていつか、僕の存在自体忘れてしまうんだ。
部屋の明かりを消して、月明かりだけでお酒を飲む。
この時間なら外に出ても、誰かに会う事は無いかも、、、。
ふわふわした頭で、僕はこっそり外に出てみた。
男の側室だったし、みんなとは違って離れた場所に住んでいた。
部屋から出ないから、護衛騎士も必要なかった。
だから、外に出ても誰にも怒られなかった。
扉をそっと開けて外に出る。
目の前の広い庭が、今だけは僕一人の物だった。
いつもは遠くから眺めていた花も、近くに寄ると良い香りがした。
広い広い空に、月明かりが煌々としている。
王子と一緒に見たかったな、、、。残念。
僕は暫く散歩をした。
建物の扉の前に王子がいた。
今日はもう来ないと思ったのに。
「今晩は」と言おうと近寄ると、いきなり抱き締められた、、、。
ぎゃー!
「あのっ!、、、王子?」
「セシルがいないから、心配した、、、」
ギュッと力を込めて来た。
「ジェフリーの所に行ってしまったのかと思った」
「そんな事、出来ませんよ?」
**********
俺がいつもより遅くセシルの部屋に来た時、扉が少し開いていた。
「セシル?」
部屋に入ると、飲み掛けの酒のグラスがあるだけだった。
何故かセシルが「ジェフリー」と、男の名前を呼んだ事を思い出す。
自分を用済みと言っていた、、、。
まさか、ジェフリーの元に行ってしまったのか?
俺は急いで窓の外を見る。
セシルは、夜着のまま庭にいた。何をしている?
散歩をしているみたいだ。俺は安心して、ため息を吐いた。
彼を迎えに行こう。
外へ出て、扉の前で彼を見ていると、彼は花の香りを嗅いだり、夜空を見上げたり、自由だった。
そう言えば、部屋から出た彼を見るのは初めてだ。
暫く好きにさせていると、こちらに戻って来る。
俺の前に来て、俺を見てくれる。
思わず抱き締めてしまった。
「あのっ!、、、王子?」
セシルは、俺がどれだけ不安だったか分からないんだろう、、、。
お前がいない部屋を見た時、俺がどんな気持ちになったか。
窓の外にお前を見つけて、どれだけ安心したか。
きっとセシルには分からない。
**********
部屋に戻る。
「、、、今もジェフリーの事が好きなのか?」
「、、、王子は、、、誰かを好きになった事がありますか?」
「、、、」
「僕は、ずっとジェフリーの事が好きでした。でも、好きと言う気持ちを伝えようとは思いませんでした。だから彼はいつも、普段と変わらず僕と接してくれたし、彼に婚約者が出来たからと言って、嫌いになる事はありませんでした。、、、彼を嫌いになる切っ掛けが無いんです。きっと、この先もずっとずっと好きだと思います。でも、、、ただそれだけ、、、。ジェフリーに対する好きは、花が好きとか白が好き、とか、、、そう言う好きだと思います。、、、だから、好きかと言われれば好きだけど、、、ちょっと違うかな?」
「、、、」
「喧嘩をしたとか、裏切られた、騙された、傷付けられた、、、そんな事があれば、嫌いになれたんですけどね」
小さく笑った。
「俺の事は?」
「はい?」
「俺の事はどう思う、、、?」
「王子の事ですか?」
「アラステアと」
僕は微笑んだ。名前でなんて呼べないよ。
「、、、僕は、、、いつか此処を去ります。貴方に特別な感情を持たない方が良いと思ってます」
「好きか嫌いか」
「好きです、、、」
ふふ、、、
「どうした?」
「貴方に、好きか嫌いか聞かれて、嫌いと答えられる人ってどんな人かなって、、、」
「本当は嫌いなのか?」
「好きです。初めて会った時より、ずっと好きになっています」
ニコリと笑った。
「嘘っぽいな」
「本当ですよ」
「、、、」
「本気です。でも、秘密です」
内緒ですよ、と言う様に指先を唇に寄せる。
「本人を前にして?」
「そうです」
笑う。
「僕の気持ちは僕にしか分かりません。だから、僕の本気度は秘密です」
「その言葉、信じよう」
「え?」
「部屋にセシルがいなかった時、俺は自分の気持ちに気が付いた。ジェフリーに嫉妬したし、もう二度と会えないと考えたら、不安だった」
「、、、」
「本当は毎日セシルの部屋に行きたかった」
王子は僕を抱き上げた。
「王子?」
「アラステアだ」
「いつもいつも、お前の事ばかり考えていた」
「僕のマッサージの事でしょ?」
「、、、セシル、、、誤魔化すな」
「、、、」
だって、、、。
だって、そんな事、、、。
「お前に会いたくて、マッサージをして欲しいと呼んだ。その時は、お前を呼ぶ口実があって良かったと思った」
彼は僕をベッドの上にそっと降ろす。
そして、僕の手を取る。
「セシルの手は、魔法の手だ。お前に触れられると、安心する。本当だ。だから、いつもセシルに会いたくなる」
僕の手にそっとキスをした。
僕は手を引いた。
彼はグッと力を入れて離さない。
「好きと言ったね?」
「はい」
「では、、、」
と言って、王子もベッドに乗る。
僕の瞳を見ながら、彼の顔が近付いて来た。
え?、、、ええええ?
「待って!」
彼は背中に手を回す。
「待って下さい!僕!男ですよ?!」
これ以上近付けない様に、彼の胸を押す。
「知っている」
「なら、どーしてキスするんですかっ!」
「え?、、。好きだから」
「は?でも、王子は女性の方が、、、」
「今は、セシルが好きだ」
「冷静になって!おかしいよね?僕達お
唇を塞がれた。そのまま後ろに押し倒される。
一度離れた唇が再び重なる。
ちょっと!僕、初めてなんだけどっ!
覆い被さる王子を押し返そうとしても、彼の方が力が強い。無理だ、、、。
僕は彼を叩いた。何度も何度も止めてと叩いた。
顔を背ける様に、横を向くと彼の手が正面に向かせる。
再度彼の唇が離れて、僕を見下ろした。
「セシル、俺の事、好きなんだろ?」
彼の声、、、。僕は見つめる事しか出来なかった。
「好きだよな」
優しく頬を撫でる。
親指でそっと唇に触れると、静かに僕の口を開き、口付けをした。
近寄って来る彼の顔が綺麗で、甘い甘いキスを受け入れてしまった。
こんなに気持ちの良いキスを、彼は側妃の二人とも交わしたのか。そう思うと涙が出た。
嫌だった、、、
彼はキスに夢中で、僕の涙に気付かない。
逃げ場も無いのに、少しでも彼から離れようと、身体を出来るだけベッドに押し付ける。
彼は僕が泣いている事に気が付いた。きっと、頬に触れる指先に涙が触れたんだ。
瞼にキスをする。
涙を掬う様に、舌先で撫でる。
「セシル、、、愛してる」
「でも、、、僕は、男だし、三番目だし、、、」
「いつも側にいて欲しい」
「そんな事、出来る訳ない、、、」
貴方は王子で、僕は側室だもの、、、。
女の子に生まれたかったな。
でも、女の子だったら、此処に呼ばれる事は無かっただろうし、、、。
自分の気持ちがあっちへ行ったり、こっちへ行ったり、フラフラしている。自分でもどうしたら良いか分からなくて、情緒不安定になっていた。
「俺の事、好きか嫌いかだけ考えて、、、」
優しい声だった。
その声がもっと聞きたくて、王子を見上げる。
「好き?」
うん、と頷く。
「嫌い?」
ううん、と首を振る。
「触っても良い?」
どうして?って首を傾げる。
「触りたい」
「、、、」
「セシルに触れられると、俺は心地良くなるんだ、、、。だから、セシルに触れてみたい」
「どうぞ」
彼は僕の頬を包む様に触る。
気持ち良い、、、。頬全体を包む手が、大きくて温かくて安心する。
僕がスリスリと頬を動かすと、彼の掌の匂いがした。人の匂いだ、、、。温かくて、じんわりする。
僕も手を添えて、もっと彼の手を感じる。
「セシル、、、」
と名前を呼ばれ、キスをされた。
さっきとは違い、ほわほわとした優しいキス。
「僕、貴方が彼女達を抱いたと思ったら、嫌で嫌で仕方がありませんでした。、、、ごめんなさい」
「、、、」
「困らせたい訳じゃ無いんです。ただ、、、僕だけのモノになれば良いのにって、、、」
「済まない」
僕は頭を振った。
「大丈夫です。、、、大丈夫じゃ無いけど、王子の立場も分かるし、、、。ただ、それ位好きだって、知っていて欲しいんです」
王子は僕を抱き締めてくれた。
「分かった、、、。今宵、誰よりも一番に、誰よりも深く、誰よりも長く、濃厚に俺の愛を注ごう、、、」
そう言いながら、僕にキスをして、優しく触れる。
「愛してる、、、」
僕の貧相な身体を触りながら、愛おしそうに何度何度も囁かれ、僕は心も身体もすごく幸せな気持ちになった。
*****
アラステアは毎晩僕の部屋に来る。
マッサージはたまに。
お喋りをしながら紅茶を飲み、二人でベッドに入るのが習慣になった。
*****
アラステアが珍しく、僕の部屋にランチを食べに来た。
「最近、側妃達の仲が良すぎて、俺は話しにも入れて貰えない」
と嘆いた。
「どうしたんですか?」
「二人は、妊娠した時期も近いから、お互いお茶会を開き、アレコレ相談してるらしい」
「お腹の子は順調ですか?」
「うん、安定期にも入ったし、二人で庭を散歩したりしているよ。仲の良い事は嬉しいけど、俺は邪魔みたい」
苦笑している。
「「悪阻って、自分の身体に良く無い物を排除しているみたいよね」って話しをしながらさ、俺の事を見る訳。何だか俺が悪い物みたいで居た堪れないよ」
「惹かれ合う男女は、遺伝子的に一番遠い相手を選ぶと言いますから、今、王子は彼女達から一番排除したい存在かも知れませんね」
マーサ?!
「私も妊娠した時はそうでしたから、暫くは側妃様達の好きにさせたらいいのですよ」
「え?それって、出産するまで?」
「私は、子供の手が掛からなくなるまでダメでした。人それぞれでしょうけど、子供を守らないといけませんからね。本人達の気付かない所で、自己防衛しているのです」
「俺、父親なのに?」
「遺伝子が一番遠いと言う事は、色々な事が真逆、、、ですからねぇ」
マーサ!!
「でも、それだけ彼女達は子供を大切にしているって事だよね!」
「そうですよ。それに、子供の父親が嫌いと言う訳では無いんです」
王子はため息を吐いた。
「ま、側妃同士仲良くしてくれるなら良いけどね」
と、少し淋しそうに言い、僕の手を繋いでくれた。
「セシルは、いつまでも俺を愛してね」
上目遣いで僕を見る彼は、悪戯っぽい、少年の顔をして、僕の手の甲に
ちゅっ
と、キスをした。
まだまだ、悩みは尽きない様ですが、みんなが幸せになりますように、、、。




