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「君は美しくない」と婚約破棄された醜い顔の聖女です〜国の結界を守っていたのに捨てられましたが、私の人柄を誰よりも愛してくれていた騎士公爵に求婚されて幸せになります〜

作者: 夜分長文
掲載日:2026/02/26

「アリアンナ・ベルシュタイン! 醜い貴様との婚約を、この場をもって破棄する!」


 各地の貴族が参加する、絢爛なパーティー会場にて。


 もっとも注目を集める壇上で、王国の第二王子であるジェラルド殿下が声高らかに宣言した。その隣には、彼に寄り添うようにしてくすくすと笑っている可愛らしい少女、伯爵令嬢のシャリーが立っている。


 会場中の嘲笑の視線が、私に集まっているのがすぐに分かった。


「ジェラルド殿下……本気で言っているのですか?」


 私の頭が真っ白になりかけるが、すぐに意識を戻す。ただ……彼の言っている「醜い」という言葉には、何一つとして否定のしようがなかった。


 彼の言っている通り……私の顔は醜い。


 鼻は低く、そばかすがあり、瞳は一重。どんなに取り繕おうとしても、到底第二王子と婚約を結んでいた女とは思えない形をしている。


 昔、ジェラルド殿下は「そんな君でも愛している」そう言ってくれた。私はずっとその言葉を信じ続け、私が得意な魔法で王都の結界を守り続けていた。


 だけど……その結末がこれだ。


 信じていたジェラルド殿下の隣には、愛らしい少女がいて、そこに私は立っていない。


 信じた私がバカだった。こんな人のためにずっと頑張ってきたのがバカみたいだ。


 そんな気持ちが、私の心の中で渦巻く。


「本当のことを言っているんだ。少しは自分の顔を鏡で見たらどうだ?」


 私はぎゅっと拳を握りしめる。


「……ですが、王都の結界は」


「それはシャリーに任せる。醜い君とは違って、可愛らしく、魔法も得意だ。そんな人間がいるのだから、お前の席などあるわけがないだろう?」


 醜い。念押しをするかのように、彼は言う。


「ですが、シャリー様には到底、私の結界を引き継げるとは——」


 言葉を紡ごうとした刹那、バンとジェラルド殿下が手に持っていたグラスを私に投げてくる。グラスが割れて、私の頬を破片が切った。


 つー、と生温かい血が流れるのが分かる。


「醜い顔の癖に……シャリーを愚弄するとは! 今すぐに出て行かないと、お前は国中に恥を晒すことになるぞ!」


 これ以上、私の発言は受け入れられない。そんな空気感だった。


 くすくすと笑い声が聞こえてくる。拍手をする者もいた。


 私はぎゅっと拳を握りしめ、パーティー会場を後にする。


 もう私の中で、何かが吹っ切れていた。


 王都の結界の維持? ジェラルド殿下の機嫌窺い?


 私は……もう知らない。バカに少しでも好意を持ってしまっていた私が愚かだったのだ。


 思い返してみれば、彼は私に一切の手を出さなかった。白い結婚のようなものだと思っていたが、ただそれは私が醜くて気持ちが悪いと思われていただけなんだ。


 あくまで、彼は私を利用しようとしていただけ。


 ほんと、ため息すら出ない。


 私は街の方まで行って、遠い場所まで逃げようと馬車に乗り込んだ。


 それもそうで、王都になんていたら何が起こるか分からないからだ。


 自分しかいない静かな馬車が動き始める。


「ところでお嬢さん、どこへ行くんだい」


 御者さんがそんなことを言う。


「クラウス公爵領へ、お願いします」


 ほぼ無意識であった。


 けれど、なんでそんな言葉を呟いたのかには心当たりがあった。


 私が学園に通っていた頃。


 醜い私に、唯一親しく声をかけてくれた人物がいたのだ。


 クラウス・ユリット。


 暗い学生時代を送るはずだった私の、ただ一人の友人。


 彼とはいつも、一緒に食事を取って、他愛のない話をしていた。


 その時間だけが、私の幸せだったのを覚えている。


 彼はこのパーティーには出席していない。そのような祭り事には興味がないといつも言っていた。


 だから……少し話をしてみたくなったのだ。


 少しばかり、昔の楽しい時代を思い出したかったのだ。


 ◆


 馬車が止まる。私はすぐに飛び出して、クラウスが待つ邸宅に走っていた。


 外は雨が降っており、ドレスは泥だらけ。頬には傷があって、もう人前には出られるような格好ではなかった。


 邸宅に着くと、門の警備をしていた兵士が私を拘束しようとする。それもそうだ。こんな身なりの人間は不審者でしかない。


 だが。


「待て。その手を離すんだ」


 聞き覚えのある声が響く。


 私は顔を上げる。


 銀色の髪に、凍てつくようなアイスブルーの瞳。そこには、以前と変わらないクラウスが立っていた。


 兵士がパッと退き、敬礼をする。


 私は息が上がりながらも、どうにか笑顔を浮かべた。


「久しぶり、クラウス。ごめんなさい……こんなに醜い身なりで来てしまって」


 咄嗟に謝罪の言葉を漏らした。今更、昔の学友が来たところで、こんな醜い姿で来たところで、相手にされるとは思っていなかったからだ。


 だけど、違った。


「そんなに汚れてしまって……怪我もしているじゃないか」


 クラウスは私の肩に触れて、自分の服で私の血を拭う。


「鋭利なもので切ったな。長いこと流れていたんだろう、服にも血が付いているぞ」


 彼は、優しかった。こんな私に、親身にしてくれた。


「手当てもして、着替えも用意しよう。歩けるかい?」


 私の手を握り、邸宅の中へと引いてくれた。


 ◆


 手当てもしてもらい、着替えもして。


 彼は二人きりの部屋で、温かい茶を入れてくれた。


 そして、じっと私の顔を見据える。


「何があった。今日は宮廷でパーティーのはずだっただろう?」


 優しい声音に安心してしまって、事の顛末を吐くように語った。


 ジェラルド殿下には新しい婚約者がいて、私は婚約破棄されて、ただ彼には利用されていたことが分かったと。


 醜い私が、醜いことをただ吐いた。


 呆れられるかと思った。けれど、クラウスは拳を握りしめて、怒りを露わにしていた。


「なんて……ことを! ジェラルド王太子め……こんなにも酷いことをアリアンナに……!」


 ここまでクラウスが怒っているのは、人生で初めて見た。思わず動揺してしまいそうになる。


 クラウスは私の手をもう一度握り、何度も言う。


「お前は醜くなんかない! こんなにも愛らしく、真摯であり、美しい心を持っているのに!」


 クラウスは唇を噛みながら、覚悟を決めた瞳を向けた。


「アリアンナ……一つ言いたいことがある」


 真剣な表情に、私は小首を傾げた。そこまでの表情をしているのは、初めて見たからだ。


「俺は……ずっとお前のことが好きだった。誰よりも美しいお前を愛していた。だが、お前はジェラルド殿下と婚約を結び……だけど、今なら言える」


 私の頬が熱くなるのが分かった。多分、生まれて初めて、こんなにも恥じらいの感情を抱いている。


「俺と結婚してくれ。そして……一緒にジェラルドに復讐をしよう」


 あわわと、すぐに焦る。こんな突然……これって求婚されているってことだよね?


 こんな……醜い私に。


「本当にいいんですか? 私……なんて」


 そう言った瞬間、クラウスが立ち上がり、私の頬に触れる。


「俺の前では、そんな言葉を漏らすな。何度でも言ってやる、お前は美しい。そして誰よりも俺が……お前を愛している」


 つん、と私に口に何かが触れる。


 私の脳内は完全にショートしていたが、どうにか理解できた。


 私はキスをされているんだ。誰からもされなかった、キスを。


 恥ずかしい……そう思ったが、同時にとても安心した。


 こんな自分を、彼が本当に愛してくれていると理解したからだ。


 私はしばらくクラウスに身を任せたあと、すぐに冷静になって言う。


「ですが……あなたは国家の騎士団をまとめている長。そんなことをしたら、クラウスの立場も」


 クラウスは柔らかい笑みを浮かべる。


「どうってことはない。お前が王都から去ったことによって、結界が瓦解して身を滅ぼすのも時間の問題だが……もう一つ俺からもくれてやらないとな」



 それから、一ヶ月ほどが経った。私が離れた結界は、到底シャリーには維持できず、王都は混乱状態に陥った。


 それだけでなく、クラウスが率いている騎士団の反乱も発生した。


 ジェラルド殿下が原因だと発覚して以降、立場は一気に失墜。


 第二王子という地位は剥奪され、王家からも追放されてしまったようだ。


 彼がどうなったのかは……誰も知らない。


 だけど、決して良い方向ではないだろう。


「どうだアリアンナ。公爵家での仕事は」


 クラウスとは正式に婚姻を結び、今は領地でギルドの管理や結界の維持を私はしている。


 以前よりもずっといい待遇で、私を美しいと言ってくれる殿方の隣で。


「うん、とってもいい。ほんと、今は幸せだなって思ってる。ありがとう、クラウス」


 私は幸せを噛みしめながら、感謝の言葉を伝える。


 クラウスはくすっと笑い、私の頬に触れる。


「とても美しい顔だ。俺も、君の笑顔が見られてよかった」


 そして、私の唇に口づけをする。


 これは、醜い私が幸せを掴むまでの物語だ。


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