第一話
ドアから光がさした
ずっとお腹がすいてて、耐えられなくて
でもいつか帰ってくるって信じてたから、待ち続けた
ずっとずっと待っていた、
ドアが完全に開いた瞬間飛びつきたい衝動を必死に抑えた
次の瞬間私は絶望した
ああ現実は残酷だ
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朝起きたらまず冷水で顔を洗う。
暗い表情がバレないように。
鞄に本を詰めて、それが私の心の支え。
「いってきます」
誰もいない玄関に向かって声を出した。
教室に入ると、いつもみんな挨拶してくれる。
「桜ちゃん、おはよー」
それに返事をするのは私は苦手。
「おはよう」
でも美月だけは、
「あっ、おはよー! 桜! もうぉ~たまにはそっちから言ってくれてもいいんだよ~!(笑)」
「あっ、ごめんって。この前借りた本、今日返さなくちゃいけなくて。」
「もう、桜って本当に本大好き星人よね~」
「え~そう?(笑)」
気が置けない仲。
美月だけは私の事情を知ってくれてるから、気軽に話せる。
多分高校に入学してから不愛想な私にもある程度話しかけてくれてるのは、美月のお陰だと思う。
「美月~!今日全校集会あるから一緒に行こー」
「オーケー! じゃあ今日は本読む日だよね?」
「うん。 先行ってて。」
気が使えて、話してて楽しい。
そんな子の親友が私なんかで多分みんな不思議だと思う。
「はぁ~ 今日もがんばろ」
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「ばいば~い」
「じゃね~」
みんなが帰っていく中、
「美月、私は今日図書室寄ってくから先帰ってて」
「りょうかーい。 じゃあね~」
「ありがとう。 ばいばい」
今日は学校の図書室で借りてた本を返す日。
「こんにちは」
「こんにちは。橘さん。今日はあの本返しに来ました。」
「おっ、あの本か。 どう? 面白かったでしょう?(笑)」
「はい。 流石橘さんがおすすめしてくれただけありますよ!」
クラスメイトより図書室のボランティアさんの方が仲いいって花の高校一年生としてどうなんだろう。
高校に入学したばっかりでみんな浮かれてる中、一人だけ図書室に入り浸ってるJKってねぇ~。
私は本を返してから、図書室の中をぶらぶらしていた。
静かな図書室の中で、ページをめくる音だけが響く空間。
――ここだけは、安心できる。
私は高い本棚を見上げ、つま先立ちになった。
あの作家の新刊。
発売日に本屋へ行けなかったから、今日こそは借りようと決めていた。
指先が、背表紙に触れたその瞬間。
同時に、別の手が伸びてきた。
「あっ」
「あっ」
男の子と手が当たってしまった。
多分ネクタイの色からして同じ学年だろう。
少し驚いた顔をしていた。
きっと今私もおんなじような顔になってるんだろうな。
「す、すみませn……」
「この本知ってるんですか?!」
「え……あ、はい」
突然、彼が身を乗り出してきて私に聞いた。
「本当ですか!? 周りに本好きが全然いないうえに、この本知ってる人が少なくて……」
そこまで言って、彼は旧に黙ってしまった。
どうしたんだろう?
「す、すみません!突然こんな話しかけちゃって、」
「え、ふふ。 いえいえ」
彼の必死さがちょっとおかしくて、少し笑ってしまった。
「ええ、私も……好きなんです。切ないけど、優しい終わり方をするから、」
彼の表情がパッと明るくなる。
「そうなんです!特にこの話、身分違いで結ばれない二人が、来世でまた会おうって、!」
私はキュッと胸が少し締め付けられた。
来世なんて、そんなもの本当にあるんだろうか……と。
「……夢で、前世の思い出の場所に行くんですよね。」
彼は驚いた表情をした。
「こんなに同じ趣味で話せる人いなかったから、嬉しいです。」
彼の、その眩しい笑顔を見て私は、胸が少し暖かくなった。
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夜の帰り道。
空を見上げると、一番星が輝いていた。
小さなころ父が教えてくれた。
あの星には、たくさんの願いが詰まっているのだと。
夢も、希望も、悔しさも。
全部抱えて、それでも前を向く星なのだと。
「私も、前を向けるかな……?」
誰もいない虚空に声が広がる。
あの日、泣きながら謝り続けていたあの人。
何も分からないままだった小さい私に向かって、何度も何度も。
そんなことを思い出した。
それでも。
今日初めて同じ趣味の人と出会った。
楽しかった。
何にも持ってない私なんかと少しでも話してくれて。
嬉しかった。
「また、会えるかなぁ?」
そんなことを呟きながら、帰り道を一人、歩いていく。
いつか、昔のことも忘れて好きなことをずっとやり続けられる日が来ますように。
あと、彼にもまた会いたいな。
そう、一番星に願いながら。
――この出会いが、
未来を大きく変えるなんて、この時の私はまだ知らない




