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本の紹介36『まちがったっていいじゃないか』 森毅/著

作者: ムクダム

偉大な数学者からのやさしい贈り物。自分なりの歩幅で進むための人生論。

 効率よく、正しい道を歩みたいという欲求は多くの人が抱えているものだと思います。正しく進むための情報が共有されることで色々と便利になるという利点はありますが、溢れかえる情報に押さえつけられ、人間は間違う自由が奪われているとも言えないでしょうか。

 情報が限られている場合、分からないままにチャレンジして、間違ったらやり直すというトライアンドエラーが自然な行為となりますが、あらかじめ正しい道順を示した情報があるとわかっている場合、ついついその決められた道に選びがちです。それが一概に悪いこととは言いませんが、そのような正しい道というのは往々にして退屈であったり、周りと歩調を合わせる窮屈さを伴うものになります。それが苦にならない人もいるのでしょうが、耐え難いと感じる人もいるのではないでしょうか。

 前置きが長くなりましたが、本書はそのように周りと歩調を合わせて生きることが不得意な人に向けた人生論のような内容となっています。人生論と言っても上から目線の説教くさいものではなく、ユーモア溢れる文章でふっと肩の力を抜くのに最適です。

 本書は数学者である森毅先生が、人生は間違えてしまってもやり直せば良いということを自らの経験を交えながら語るエッセイとなっています。平易な文章ですすっと頭に入ってくる文章、そして、挿話として挟まっている短い自伝がエッセイで語られることを補完する構成が魅力的です。

 タイトルを見て、呑気なことを言っているなと感じるかもしれませんが、ただ楽観的なことを言っているだけのエッセイではありません。戦争の時代を生きた著者が実感した世の中の厳しさ、不条理についても言及した上で、そもそも世の中には正しいとか誤っているといった結論が出ないことが多いのだから、失敗したとか間違ったとかいう評価も、根拠のない思い込みなのではないかという思いが根底にあるように感じました。

 特に印象深かったのが、何か問題に直面した時に、正面から立ち向かうだけが選択肢ではなく、逃げ出すことや、下を向いて従うふりを相手を馬鹿にするといった対応も大切だという、多様な心のあり方について述べている部分ですね。社会という仕組みは自らの発展のために、人間にこうあるべしという圧力をかけることがしばしばあります。そのような局面でいかに自分らしさを守ることが出来るかが、より良い生き方をするコツのよう思えます。そのためのヒントが本書には散りばめられています。

 主に中学生くらいの若い人に向けた内容となっていますが、大人が読んでもはっとさせられるような多い文章もありますので、年齢に関わらずオススメできるエッセイとなっています。終わり

 

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